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覚醒



──トウシロー。



「ここに居れば安全であろう。

 少々冷えるだろうが我慢してくれ。

 こいつを倒し次第直ぐに解放しよう」


化け物の隙を突き、女子の救出に成功した。


氷球の檻の中であれば簡単に手出しは出来ないだろう。


そうして彼女の安全を確保し、再び奴に意識を向けた時──



ぞくり。



言い知れぬ悪寒が背筋を這った。


それは巨象の前のアリの如く。


それは本能に訴えかける恐怖の如く。


それは最も死に近しい感覚。


そしてそれは眼前に佇む人型の化け物を見据えた事に起因するものだった。


ふた回り程膨れ上がった総身は圧倒的な圧力で佇み、一息にこの空間を支配する。


そんな重々しい重圧の中──


「お前、少し寝てろ」


その言葉を残して視界から消えた。


──直後。


「ぐはぁぁあああ!!」


何が……なにが起きたんだ……?


気づけば壁に血反吐を吐きながら壁にめり込んでいた。


意識が朦朧とし、瞼が重い。


そして突如受けた衝撃か、将又恐怖に支配された故か、思う様に身体が動かない。


だめだ……。


このままでは……。


恐怖に打ち勝つ唯一の武器。


それは。


勇気。


思い出せ。


俺の使命を。


助けられた恩を返すのだ。


あの、じいさんとばあさんに……恩を……



返す?



確かに俺は助けられらた。


しかしそれは、こんな化け物を倒す程の対価になるのだろうか……。


そもそも何故俺はここにいるのだ?


考えれば考えるほど自分が分からなくなる。


ここで命を灯す価値は……。


「──っ⁉︎」


そこに映ったのは、ぼろぼろの身で懸命に立ち塞がる三匹の従者達だった。


「やめろ!お前等の敵う相手ではない!」


しかしその静止と裏腹に彼らは迫った。


その生死を顧みず、肉薄する三体の影。


そして化け物の右椀が一瞬の間でブレると彼らの姿は見えなくなった。


「あぁ……」


頭が真っ白になった。


入り乱れる様々な感情。


肚の底から湧き出るそれと共に──



「うあ゛ぁぁぁぁああああ!!!!」



叫んだ。


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