解放
──ウリュウ。
謎の珍獣を毛散らかし、ヒョードルと思わしき少年を助けようとした矢先。
その少年は襲い掛かった。
迫る拳を掌で受けると、手の甲による鞭打をこめかみに叩きこむ。
どうやら以前の記憶が欠如しているのか、将又誰かに操られているのか……。
当人の意識がはっきりしている所をみると、前者の方が正しいだろう。
そしてもう一つ。
氷のグローブ。
それは恐らく特殊属性に値する氷の魔素。
どういう経緯で身に付けたかは定かではないが、仲間の成長が喜ばしい反面、対面するとなると少々厄介だ。
思考を整理する最中、前に立つ少年は──
武装を解放した。
来る……。
電撃を纏い文字通り氷の拳と化した凶器を物にして。
──寸毫。
氷のハンマーが右半身を襲った。
「──っ⁉︎」
途轍もない速度で放たれた打撃を、硬化した左腕で受ける。
以前とは比べものにならない程の初速、それでいて重かった。
更には連続して繰り出される打撃。
しかしながら殺気の漏れ出た、軌道は容易に受け切れる。
そんな矢先。
特大の殺気と共に全力の右ストレートが放たれた。
だがこれでは頭一つで避け切れる。
しかし──。
──ピキピキピキ。
小気味良い音と共に下半身が固まった。
「なるほど……」
先程の大振りなストレートは下への注意を引く為の布石。
本命は陽動で目線を上げさせ、俺の動きを封じる為に氷で足元を固めたのか。
だが──
頭一つで攻撃を躱し、クロスカウンターを放つ。
このままでは逆に打撃を打ち込める。
「なっ──⁉︎」
確実に入ると確信した矢先。
少年の姿が消えた。
「しまっ──⁉︎」
本当の狙いはリースか……!
まずい……足が──。
「捕まっちゃった……」
気づいた時にはもう遅かった。
少年の小脇には軽々と抱えられたリースの姿が映った。
正直甘く見ていた。
以前とは比べ物にならない程の成長を見せている。
相当な覚悟と決意を持って挑んだのだろう。
これは模擬戦で無ければ稽古でもない。
俺も相応の意を持って応えよう。
「【武装】」
全身武装を解放した。




