本能
眼前には吹き荒れる嵐と渦巻く海流。
そして時折鳴り響く雷鳴は、不穏を刺激する所かどこか心を落ち着かせる。
「あそこが鬼の居城か……」
三匹の従者を連れ、遠くに見据える孤島へ向かう。
しかしその進行を拒む様して天災は襲う。
「覚悟はよいな」
三匹の従者の瞳を一瞥すると、意を決した様に海をへと足を踏み入れた。
すれば海面に張り巡る氷の足場が出現する。
そして球体の様に周囲を囲う氷の檻が現れれば、吹き荒れる暴風を防いだ。
「ぬぅぅ……流石にきつい。
皆の者、俺から離れるでないぞ」
ゆっくりと着実に進んでいく一行。
彼らの目に島の全容が映ろうとしたその時──
巨大な黒い影と共に、大津波が起こった。
「まずい!」
それは数十メートル程の抗う事の出来ない絶壁。
瞬間に命の危機を悟った彼は、自身の周囲を従者諸共、氷で囲い、完全な密室を作った。
そしてその大津波が彼らを襲えば、忽ち渦に呑み込んだのであった。
ーーーーーーー
──トウシロー。
気づくと地面へと倒れ伏していた。
砂混じりの口内にぺっと唾を吐き捨てる。
そして顔を上げれば信じられない光景が広がった。
見れば息絶え絶えとなった従者。
そして四肢が膨れ上がった人型の化け物。
瞬時に理解した。
この者が鬼の長であり、悪の根源なのだと。
イカリン、ハチエナ、ケンシロー。
俺が倒れていた間に良くぞ耐えてくれた。
今に仇を取ろう。
ばあさん、じいさん。
あなた達の平安を取り戻す。
溢れ出る怒りを抑えると、全力で地を蹴った。
拳を氷で覆い振りかぶるが、僅かに掠めた程度で終わった。
「我が名はトウシロー。貴様を打ち滅ぼす者なり」
高らかに宣言し、標的を見据える。
これは絶対に負けられない戦い。
どんな手を使ってでも勝利を勝ち取って見せよう。
「おい、俺だ!分からないのか⁉︎」
「御託は良い。貴様の戯言など耳を通さぬ」
なにやら翻弄しようと人語を操る様だが容赦はしない。
「ヒョードル…あなた記憶が……⁉︎」
「ん……?」
人型の化け物の横に並び立つ女子が言葉を掛けた。
「貴様……」
抑えきれぬ憤怒の感情が湧き上がる。
攫われた女子は彼女の他に居るのだろうか……?
それもこれもこいつを倒せば解決するだろう。
一呼吸。
ぎちりと拳を握りしめ、そして迫った。
大きく振りかぶり氷の拳を見舞う。
掌で受けた止めれらた氷塊は──
ピキリと音を立てて崩れた。
「硬っ──⁉︎」
硬さには自信があった。
自らの不思議な力をつぎ込んで、最大級の硬度にした筈。
それがこの様。
「──っ⁉︎」
気づけば眩い火花が脳天を迸り、雷の打ち付けられたかの様な衝撃が全身に巡ると共に後方へ吹き飛んだ。
一瞬の内に暗転した視界。
遅れてこめかみ辺りから強烈な鈍痛が響いた。
しかしこの感覚……。
身体に巡る電撃の様な衝撃が神経を刺激する。
そして──
「【武装】」
無意識の内に言葉を紡いでいた。




