討ち入り
──修行7日目。
各者武装の魔法を取得する。
猿ノ矢真は風を纏い、犬ノ火粉は火の粉を纏う。
雉ノ詩舞は音を纏い、桃ノ果実は桃色の炎を纏う。
恐ろしい程の速さで武装を習得した彼らであったが、積み重ねた鍛錬を鑑みれば当然の結果だっただろう。
しかしながらこれ程まで早く習得する事は稀であり、これは彼らの確かな才能に起因するものであった。
そしてウリュウも欠かさず日課の鍛錬を続ける。
そんな彼には一つ悩みがあった。
それは一日の疲れを大浴場で癒し、濡れた身体を拭きを終えた時に気付いた。
「パンツがねぇ」
仕方なく素肌からズボンを履き、ノーパンにて出向いた先はリース。
「リース、パンツ出しくれ」
「は、はい?」
少し頰を赤らめて慌てふためくリースが返す。
「いやだからパンツをくれ。盗まれた」
「い、意味が分かりません。
パンツくらい自分買って下さい」
「どっかの青ダヌキみたいに魔法でちゃちゃっと出せたりしないのか?」
「出せません!出せたとしてもそんな事には使いません!
後青ダヌキなんて知りません!」
「なんだよ。魔法なんかより俺のばぁちゃんの方が全然優秀だな」
「はいはい、そうですか……」
そしてウリュウは暫くノーパンで過ごす事となった。
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──修行10日目。
鬼ヶ島への討ち入りを目前にして、各者得意属性を介した技を身につける。
猿ノ矢真は己の刀を触れずとも操り、縦横無尽に斬りかかる。
犬ノ火粉はチリチリと纏う火の粉を自在に操り、時に爆発の様な衝撃を生み出す。
雉ノ詩舞は見えざる音波を駆使し、音も無く斬りかかる。
桃ノ果実は練合武装を用いて桃色に炎色する炎を纏う。その一振りは山を割り、天を裂く。
宇利島こうすけ基ウリュウは光沢する程にハゲ散らかし、今日もまた「ぶるぁぁあああ」と叫ぶ。
櫛名田は徐々に見慣れてきた部屋を勘ぐる様に見渡すと、誰も居ない事を確認し、寝床へ跳び移る。
そして枕元に隠したそれを鼻先に持っていけば「クンカクンカ」と匂う。
今宵も皆、揃って自分磨きに勤しむ。
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──討ち入り当日。
夜空に妖しく煌めく満ちた月。
その月光を背にこの厄災を打倒すべき集まった有志は三名。
月明かりが照らす砂浜に集った彼らの名は、
ウリュウ。
リース。
桃ノ果実。
危険極まりない戦故、少数精鋭且つ最強の布陣にて鬼を討つ。
それに対し、迫り来るであろう妖の軍勢を抑える迎撃隊は、犬ノ火粉率いる桃ノ果実一派。
彼らは金閣城を根城にたったひとりの女子を守るべくして迎え討つ。
その一人娘を想い、未だ争いの爪痕が残る村にて水神に祈願する老夫婦は手名椎と足名椎。
「今宵は満月の刻。どうか、どうか櫛名田の無事とこの村の平安と、大きないちもつを……」
「ん、あんた最後なんて言ったんだい?」
「いやいや、大きな作物をな……
ほれ、最近不作だろう?
雨が続いて稲は稲熱病になるし……それ故祈願したんだ」
「そ、そうかい……」
しどろもどろの手名椎を引き目に足名椎がそう言った。
所変わって荒れ狂う波と吹き荒れる竜巻を前に、今まさにその危険地帯を攻略するべく挑む彼らに視点は戻る。
「ウリュウ。この小舟では少々危険ではないですか?」
「リース、この嵐を止めるのにどれ位の魔素を使う?」
「そうですねぇ。これ程までの天災となると殆どの魔素を要してしまいます」
「そうか、なら頼む。
後の戦闘は俺に任せてくれ」
「分かりました」
数ラリー程の会話の後、リースは深く息を整えた。
そして荒れ狂う波に腰まで浸かると魔言を紡ぐ。
「象るは選別の大洪水。全てを呑み永遠の救済を。
もがけ──【選別の大津波】」
莫大な魔素をつぎ込み膨大な大波を作り出す。
それはまるで海龍の争いの如く、激しく荒狂う波に逆行する。
そんな最中。
「象るは選別の大嵐。全てを巻き込み絶対の暴嵐を。
もて遊べ──【神の大嵐】」
最大級の大技の最大出力の連発。
吹き荒れる大渦は立ち上る竜巻を次々と呑み込み、極大に成長していく。
そして辺りの気流の全て呑み込み、膨大に膨れ上がったそれは──
乾いた音と共に消滅した。
後に残るは夜空に煌めく星々と、心地よいさざ波の音色。
目を丸くする桃ノ果実は我に返ると徐に小舟を出した。
砂浜を引きずり、海へ浮かべる。
「行こう」
こうして鬼ヶ島へと向かうウリュウ一向であった。




