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実践②


嘗てない恐怖に身体を支配され、思う様に動かせない。


それは目に前に立つ一人の男から発する尋常ではない殺気の為。


それがのそりと此方を向けば一層の危機が身体を震わす。


「ひっ!」


高める警戒を余所に思う様に動いてくれない四肢。


静まる軽快な口調はその絶望を十二分、いや十六分に表した。


殺される……。


ゆっくりと振り下ろされる拳に自らの死を受け入れた時──



「【伝家宝桃 抜桃凪】」



いつの間か。


尊敬して止まない棟梁の後ろ姿が目に映った。


円を描く様に駆けた桃ノ果実は振り下ろされた凶器に合わせる様にすかさず刀を抜いたのだ。


そして桃色の炎を帯びた刀身はその拳とかち合えば、凄まじい衝撃波を生み、大きくその衣服を靡かせてみせた。


「うちの若いのを虐め過ぎやしないか?」


桃ノ果実にその一撃を受けられたウリュウが口を開く。


「お前強くなりすぎだろ?」


驚くべきはその速度。


先の戦闘において、一切関与せず傍観を決めていた彼は、若い衆の危機に一瞬の間で割って入ったのだ。


そしてあろう事か全身武装をするウリュウの一撃を、全力では無いにしても受け止めたのだ。


「【疾風怒桃 乱舞】」


そして桃ノ果実の猛攻が始まる。


撃ち放った技は攻勢のみに特化した無数の斬撃。


故に相手の反撃すら恐れぬ【影抜き】の連撃は自ずと圧倒的な激攻且つ手出し無用の防御ともなる。


画して迸る火花と共に徐々にウリュウの総身を退がられる。


「続け!」


その猛攻の最中、桃ノ果実に怒号が響けば、立ち所に呆けていた若い衆が我に返る。


桃ノ果実の剣技に手一杯となったウリュウに対し、両サイドから攻め寄るのは猿ノ矢真と犬ノ火粉。


しかしながらそれは結果として悪手となる。


サイドから迫る両者の顔面は素早く迫る大きな掌に覆われいとも簡単に捕らわれてしまう。


そしてあろう事か手に持ってそれは肉壁として前に突き出したのだ。


「卑劣な!」


くっと歯を食い縛るが刀の勢いは殺しきれない。


迫る肉壁に止まる事なく振るわれる刀。


寸毫。


「ん゛……⁉︎」


被弾したのはウリュウだった。


またしても肉壁をすり抜ける様に胴へと斬撃が見舞われれば、ウリュウの総身を僅かに退かせる。


「準備体操はこれくらいにしますか……」


しかしながら彼の表情には未だ余裕の笑みが張り付いていた。


九九の四×四のししと掛けて十二じゃなくて十六だという言葉遊びを入れてみました。

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