お尻
むか〜しむかし、あるところのお爺さんとお婆さんがおりました。
お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。
「あぁちべたい、ちべたい。冬のこの時期は手に堪えるのぉ」
お婆さんが川で洗濯をしていると──
どんぶらこ、どんぶらこと、大きな桃が流れてきました。
「ありゃりゃ!こりゃいい手見上げになるわ。
おじいちゃん喜ぶどぉ」
お婆さんは近くに流れ着いた桃をよっこらせと拾いあげました。
「あんれまぁ!こりゃ驚いた!」
拾い上げようとした桃はなんと、年増の行かない少年の臀部でした。
お婆さんは急いでお家に持ち帰ると冷えた体を温めてやりました。
するとどうでしょう?
うっすらと目を開けて起き上がるではありませんか!
これはきっと神様がくださったに違いない。
子供のいなかったお爺さんとお婆さんは大いに喜びました。
その少年はビー玉の様な綺麗な青い目に絹の様な白い肌をしていました。
そして寒さには滅法強いのか起き上がってからというもの、極寒の川で溺れていたとは思えない程ピンピンしていました。
その少年は白桃の様なその肌に因んでトウシローと名付けられました。
そしてそんな彼には不思議な力を備わっていました。
お爺さんとお婆さんはびっくり仰天しました。
その力とは無から氷を創り出すのです。
やはり神様のお力を感じました。
この子にはなにか使命があるのではないか?
ふと浮かんだ思想には思い当たる節がありました。
それは最近増えている妖の存在です。
周囲の村と離れ、山奥にひっそりと暮らす彼らの周りには以前は見かける事のなかった妖が出現する事が増えました。
お爺さんは意を持ってトウシローに事を話しました。
すると正義感溢れる少年は心意気真っ直ぐに鬼の討伐に行く事にしました。
「僕は悪い鬼を退治します!」
トウシローは高らかと宣言ました。
「ほれこれを持ってゆけ」
お婆さんから渡されたのは数個のきびだんごでありました。
「では行って参ります!」
それを腰に下げると意気揚々と出掛けて行きました。
──桃源伝説序章(諸説あり)
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目を覚ますとぼやんりとした視界が徐々に晴れて行く。
気だるい顔を上げるとひょいと見知らぬ老婆が顔を覗かせた。
労いの言葉を受けると老婆は色々と話し掛けてきた。
しかしどう言う訳か以前の記憶が曖昧だ。
覚えているのは何か大きな衝撃を受け、堪え難い冷気に抗う悪夢。
初めは火花の様な暖かくも儚い力で抵抗していた。
しかしその冷気は容赦なく襲った。
当然の様にそんな小さな力では抵抗間も無く、徐々に力を失っていった。
全てを諦め掛けた。
このまま終わるのだろうか。
だか今の自分では抗う術はない。
であればいっそのことこの苦痛を放棄し、一体となろう。
すっと力が抜けてゆく。そして意識を手放した。
話し掛けて来た老婆は恩人だと言う事は理解出来た。
今は自分が何者かは分からない。
だが受けた恩は返さなければならない。
であればやる事は限られる。
この方々に出来る限りの恩義を報いよう。
そう思い立ち彼の冒険に繋がるのだった。




