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桃ノ果実散る。無敵の鉄壁モンスター①



──ウリュウ。



正面に見据えるのはちょんまげの男。


辺りには殺風景な更地が広がる。


ここは彼ら桃ノ果実一派が稽古に励む演習場との事だ。


そしてひょんな事から決闘を申し込まれ対峙する事となった。


うーん、どうやらこの世界の人間はこぞって決闘好きなのかも知れない。


しばし相手を観察する。


手に持っているのは刃を落とされた模擬刀らしき一振り。


どうやら刀を駆使して戦う様だ。


刀を握る手から見える強靭な手首。

一般男性の比にならない程の丸太の様なそれは圧倒的な鍛錬の証。


そして腰に挿したそれは恐らくは真剣。

何かしらの強い力を感じるのは気のせいだろうか……。


まぁ決闘と言っても命を掛ける訳ではない。

故に模擬刀らしきものを構えているのだろう。


しかしながらその身体付きを見るに油断ならない相手であると言う事は察するに余り有る。


「ウリュウ殿、準備は宜しいか?」


「あぁ」


「ではいざ尋常に……」


気配が変わった。


押し殺した様な殺気を感じる。


「参る」


瞬間だった。


鬼気迫る殺気は彼の挙動より前に警戒を促す。


咄嗟に構えた腕は肉薄する桃ノ果実の振り下ろされた刀を受け流す。


流れた身体を咎める様に蹴り技を見舞うがそれも空を舞った。


しかしそれはシミュレーション。


一挙一動を観察する彼らの高次元の掛け合い探り合い。


徐々に間合いを詰める。


じりじりと詰め寄る両者のは間をなぞる様にそよ風が吹いた。


──その時。


タンッと地を蹴り先に動きを見せたのは桃ノ果実であった。


純粋な膂力のみ初速。


だが有ろう事かその初動は多くの者には霞んで見えた。


寸毫。


腰の辺りから引き抜いた模擬刀を水平に振るう。


チンッ!


響く金属音と共に僅かにウリュウの腹筋を掠めると一線、赤く腫れあがる。


ミミズ腫れの様な痛々しい痕に目線を落とした。


これが真剣であったのならば……。


一層の警戒と共にウリュウの足は前に向いた。


この驚異を前に前進する事を選択したのは己の射程、即ち拳を見舞う為。


振り払われた刀の反りを背に大胆に踏み込み放つ渾身の右ストレート。


だが──。


「ふん!」


強引に引き返された刀の勢いはしっかりと刃先を向けられ、正確に頸元に返ってくる。

更にはその勢いは衰えるどころか、増すばかり。


咄嗟に構える左腕は頸元を隠す様に堅める。


相打ち覚悟で放たれた両者の攻勢。



──瞬間。



「【冠履転桃(かんりてんとう) 影抜き】」



「ん゛っ⁉︎」


予想だにしない一撃。


その刀身はウリュウの左腕をすり抜けると右肩へと深々と振り下ろされた。


あまりの勢いに引き返されるウリュウの右腕。


それは遂に桃ノ果実を捉える何処ろか一方をとられる形になるかと思われた。


「ぬん!」


しかしウリュウもまた強引に力むと桃ノ果実の顔面に向け力任せに振り抜いた。


「──ッ⁉︎」


これまた予想だにしない一撃。


渾身の手応えに反撃を返された桃ノ果実は頬に受けた衝撃により踏鞴を踏む。


結果として痛み分けとなった攻防は、桃ノ果実が距離を置くことによって仕切り直される。


「確かによく鍛えた肉体であった。

 しかしそんなものは鬼道ではないであろう。

 なぜ使わない?」


「フェアじゃないだろ?」


ウリュウはそう言うと腰に挿した一振りに目線を落とした。


「ほう、これを抜くと言う事は命の保証はし兼ねる。

 それでも宜しいという事か?」


「あぁ」


「面白い。受けて立とう」


そう言うと徐に腰に挿したそれを引き抜いた。


露わになる刀身。


その波紋は太陽の光を浴びると桃色に煌めき、鏡の如く磨かれた刃先は、吸い込まれそうな魅力を感じる。


「推して参る」


そして微塵の砂埃と共に彼の総身がぶれた。


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