喚き
しばし歩き辺りを見渡すと、沿道を囲う様に健やかに伸びた竹林が日差しを受ける。
その涼しげな小風が吹けば、何処か懐かしき香りが彼の鼻を擽る。
「ウリュウ、どうかしましたか?」
少し緩んだ様に見えた顔つきにリースは思わず口にした。
「いや、少し祖国を思い出してな……
偶然だろうが、この国の名も聞き覚えがある……」
「そうですか……何か縁がありそうですね」
「良い縁だといいがな」
そんな他愛もない会話をしながら何処か街を探す彼らの前に二つの人影がみえた。
「人の気配がありますね、行ってみましょう」
リースはそう言うと気配のする方へ向かった。
「おんおんおん、おーんおんおんおん」
悲しげな泣き声が響く。
ふとその音源を辿れば二人の老父婦の姿があった。
「どうされました?」
リースは優しく諭す様に尋ねると驚いた様子を見せる老人。
「旅のお方でしょうか?
話せば長くなりますが宜しいでしょうか?」
「ええ、構いません」
すると老人はその涙を拭い徐に語り出した。
「私の名は手名椎と申します。
ここおりますのは妻の足名椎で御座います。
実は此処最近、妖の生態が活発化しておりまして、満月の夜に女子を攫いにやって来るのです。
この村に居りました数少ない女子は今や私供の娘である櫛名田を残すのみとなりました。
それはそれは愛しい娘であるばかり、時間の問題かと思っておりましたが、いざ現実となると……
それ故嘆き悲しんでいた次第で御座います」
語り終えた老人は腫れぼったい瞳を隠すように俯いた。
「なるほど、話は聞いた。
要はその妖って奴を倒せば良いのだな?」
その様子を見ていたウリュウは僅かに思案するとそう言い放つ。
「はい。ですが妖は非常に危険です。
我々の様な平民には手が付けられません。
率先して村を守っておられた桃ノ果実様の一派も負傷する者が増え、次の戦は大変難儀なものとなると仰っておりました。
あぁ、日巫女様がおられればこんな事には……」
「ちょっとあんた何言っているんだい!
縁起でもない事言うじゃないよ!」
漏れ出たそれを咎める様に横の老婆が言い放つ。
「こ、これは失礼しました。旅の御方、どうかこの事は……」
縋る様に頭を下げた老父婦は怯えた様に声を震わせた。
「ん?別に構わんがその、日巫女って誰だ?」
そう問えばハッと顔を見合わせ驚いた様子をみせる。
「日巫女様は鬼道を操り我らを救って下さる御方です」
「そいつは助けてくれないのか?」
「はい、これは数ヶ月前の事です……」
そう言うと老人は徐に語り出した。




