絶叫マシンに乗った時、前に乗っていた女性にギャーギャー言いながら涙なのか涎なのか良く分からん液体をぶちまけられてふざけんなって思ったの思い出した。要するに何が言いたいかと言うと、聖水あざまぁああす!!
スラヴ大陸 最極地
スラヴ国を東に歩く事数日。
そこは降り積もる積雪と猛々しく聳え立つ山々を超え、滅多に立ち入る事のない未開領域。
その最極地に値する海岸。
荒々しい波が打ち付け、その岩壁を削ればゴツゴツとした岩肌が顔を出す。
極寒の地に吹く風が肌に触れれば芯が震え、末端の感覚を鈍くする。
そんな環境で身を寄せる事もなく佇む三人の人影。
「この海を渡ったとこにあるんだな」
「ペルーン王は確かにそう仰っておりました」
「なんだよ、海しかないじゃん。
ほんとにこの先にあんのかよ〜」
そう愚痴るのは黄金色の坊主頭の少年。
「だいだいどうやって渡んだよ。
船ねぇじゃん──⁉︎」
そう続けた少年の総身がふわりと浮かぶ。
「それに関しては問題ありません」
その魔法は何処か気品を感じる凛とした女性から放たれたもの。
翡翠色の髪を靡かせて気流を操ると三人の身体は簡単に持ち上がる。
「待て、どれだけの距離になるか分からん。
魔素は温存しておけ」
突如制止した男は気だるげな目が特徴的だ。
その頭部は艶やかに煌めき、まるで鉱石の様な不思議な魅力があった。
それでいて尊大に見えない何処か奥ゆかしい風情が感じられる。
「おい」
更にはそれに反射する日差しは後光の如く、一度浴びれば徳を得た様に感じる。
「おい、一旦やめろって」
『な、なんでしょう』
「いや少し気になってな、お前俺の容姿を描写するのはいいが、褒め倒して置いて逆にバカにしてないか?」
『いえ、滅相も御座いません』
「そうか」
『左様で御座います。
ですからその握った拳をどうか解いて下さい』
「それは済まなかった。続けてくれ」
では改めまして。
おまけにコストパフォーマンスは最高。
その頭髪故シャンプーは疎かリンスすら必要としない。
付け加えるならその感触は新鮮な茄子。
湿った茄子そのもの──
「【皇打】」
『げぶらぁぁぁあああ!!』
少々お待ちください──
ーーーーーーーー
『や、やべてくだざい。髪を引っ張らないでぇ』
「次は分かってるな」
『分かりまじた。ちゃんと実況じます』
「よし」
『では気だるげな目の語りからリース様のセリフに続く所から始めさせて頂きます』
「うむ」
で、では改めまして。
突如制止した彼は気だるげ目が特徴的だ。
「ではどうやって渡るのですか……?」
恐る恐る聞くリース。
「跳ぶ」
それに反してきっぱり言うのはウリュウ。
「跳ぶって兄貴……まさか……」
信じられない様子でウリュウの顔を伺うのはヒョードル。
「そのまさかのようですよヒョードル」
ニコッと微笑む彼女の横で、ストレッチを始めるハゲ。
「よし行くか」
そう言うと少年を小脇に抱えた。
「わ、私は自分で飛べます。
一人なら魔素もそんなに必要としませんし!」
「そうか」
必死に諭した彼女は自分の身体を風を纏わせるとその総身を浮かす。
「念の為武装を掛けろ」
「えっ?なんで?」
当然の様に出た疑問を直後に、ウリュウが動く。
「ふんっ!」
踏み抜いた大地が爆ぜると共にシャトルが如く天を貫く。
絶叫マシンの比にならない程の初速は強烈な重力加速度、即ちGを生み、彼の総身を否応なしに襲う。
からにして──
「あばらぶらぎぶらぁぁあああ!!」
ヒョードルが奇声を上げると顔面の穴という穴から体液が漏れ出し、更にはその形を酷く歪ませた。
「助かった〜、あんなのただの拷問ですからね」
遅れて後を追うリースは独りごちる。
こうしてまた新たな物語が始まったのだった




