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一行



スラヴ国 周辺



スラヴの街を出た彼らの前には二つの人影が見える。


「もう行くのか?」


現れたのは特攻服に身を包んだアラン。

大層に腫れ上がっていた顔面もすっかり落ち着いていた。

そして隣にはエレナの姿も見える。


「あぁ」


「最後に挨拶だけでもと思ってな」


「律儀だな」


数ラリー程の会話の中、エレナが割って入る様に言葉を吐く。


「おい勇者、次あった時は覚悟しろよ!

 もっと強くなって認めさせてやるからな!

 そしたらその……け、結婚しろよな!!」


「あぁ」


何処か恥ずかしげに言った彼女の言葉を適当に流す。


「何仰っているのですか突然⁉︎

 結婚なんて、私が許しません!」


「あんたにゃ関係ねぇだろ!」


それまで関与せずに距離を置いていたリースが血相変えて反論すれば、エレナも負けじとメンチを切った。


「ウリュウもなんとか言って下さい!」


「ん?言わせておけばいいだろ。正直どうでもいい」


「なっ……⁉︎」


「へへ〜ん、勇者だってそう言ってるぜ!」


「まぁいいでしょう。あなたみたいなちんちくりんは

 どうせ相手にされないでしょうし……」


一つ達観した様子のリースは両の掌を天に向け、何処は馬鹿にした様にそう言った。


「なんだとババァ」


「ば、ババァですって……

 もう許せません。このチビ!」


聞き捨てならない言葉に返す刀でそう言い放つ。


「うるさいバカ!」

「むぅ、アホ!」


「デブ!」

「ぺちゃんこ!」


「犯罪者!」

「一般市民!」


「赤の他人!」

「白い恋人!」


「3分の一の純情な愛情!」

「百%の不純な暴力!」


途中から違うゲームみたいになった罵り合いは一向に終わる気配が見えない。


呆れたウリュウはそれに構わず踵を返す。


「待ってくれウリュウ、それからリース様。

 必ずやあなた達をお迎えできる様国を変えてみせます。

 ですから……」


「皆まで言わないでいい。

 厄災が動けば駆け付ける」


俯いたアランを見かねウリュウがそう言い放つ。


「アラン。私達が受けた屈辱は忘れません。

 ですが、それとこれとはでは話が別です。

 世界が危機に瀕している時に助けない理由は何処にもないのです」


「リース様……」


感極まるお言葉に目頭を溜まるものを抑えると、胸元から何かを取り出した。


「これを受け取って頂けますか?」


それは黄金に発光する宝石。


「これは……?」


「王の魔素とリンクした魔石です。

 危機を知らせると赤く光ります。

 もし万が一これが割れた時……」


「分かりました」そう言うとリースはその魔石を胸にしまった。


「じゃあ俺達は行く」


そう言うと持っていた袋を担ぎ直し歩き始めた。


彼らの背中を見送ったアランは独り悩む。


「王になんと言ったら良いか……」


本来の目標は達成出来ていない。

しかしながら協力を得る事は出来た。


プラスもあればマイナスもある。

此処は素直に全て話そう。


そんな思考を整理している最中──


「シュッ!シュシュッ!」


隣ではシャドーボクシングに明け暮れる娘が目に留まる。


「待ってろよぉ勇者ぁぁあああ!!」


その叫び声は山々に木霊した。



ーーーーーーー



アラン達と別れて直ぐ、新雪の積もる道をしゃりしゃりと踏みならしていると──


「兄貴ぃーーー!!」


聞き覚えのある声が耳に届く。


「ん?」


「あれは…ヒョードル?どうしてこんな所に?」


後を追う様に駆けて来たのはヒョードルだった。


「はぁ…はぁ……やっと追いついた…」


「どうした?」


荒い呼吸を整える彼にウリュウが問う。


「家出して来た……」


「は?」


予想外な回答に疑問が多い。

案の定ウリュウの表情がそれを物語る。


「兄貴みたいにもっと強くなりたいんだ。

 だから俺を連れて行ってくれ!」


一拍。


一瞬の静寂が辺りを統べるとそれを打ち破る様にウリュウが口を開く。


「丁度良い。荷物持ちが欲しかったんだ」


そう言うと背に担いだ袋を投げ渡す。


「ウリュウ。良いのですか?

 命の危険は保証できませんよ」


「あぁ。こいつも半端な覚悟で国を出た訳じゃないだろ」


その言葉を聞いたヒョードルの表情はパッと明るく弾け、無邪気な少年の様だった。


「いくぞ」その掛け声と共に歩を進める。


こうして新たな仲間も加えた一行は、次なる目的地を目指したのだった。


これにて二章完結になります。


次の舞台はジパング。


ウリュウ一行となった彼らの冒険はまだまだまだ続きます。

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