決戦
「エレナぁぁあああ!!愛しのエレナよぅぅ!」
アランが血相変えて歩み寄れば少女の身体を抱き抱えた。
「おい、エレナ。エレナ……。
助けてください……助けてください!!」
今にも平井堅が歌い出しそうなカット割りでアランが叫び出す。
「…………。何してるんですか?」
いつの間にか横に立つ女性は蔑んだような目で視線を落とした。
「世界の中心で愛を叫ぶごっこしてた」
「は?」
「あ、ごめん、何でもない」
そんな下らない会話を繰り広げる最中──
遂に奴が動く。
その砕け散った背甲は修復されるどころか腹の方へと収縮されて行く。
地鳴りと共に徐々に狭まっていく足場。
ペルーン王は総隊を磁界に包むと皆を連れて
落下して行く。
それに対しウリュウ、リース、アラン、エレナの四人はリースの風魔法の恩恵を受け、ゆっくりと降下して行った。
やがて地に着いた彼らが空を見上げれば、徐々に纏まりを付ける黒い塊が浮かぶ。
間も無くして現れたそれは真っ黒な異形。
悪魔の様な翼と尾に鋭い爪。
十メートル程の巨躯には筋骨隆々とした鎧を纏う。
その相貌はのっぺりとした凹凸のない不気味なもの。
極大な化け亀だった外容からは小さく纏まり、その途轍もない密度になったエネルギーは全てを拒む。
それは今まで取り込んできた選りすぐりの力を集約し、彼らを抹殺する為だけに解放した力。
故に取り込む事を諦めた彼らは用済み。
腹にいる煩わしい虫を排除し本格的に消しに掛かる。
その禍々しいオーラは佇むだけでヒヤリと肌を凍えさせる。
常人には前に立つ事も儘ならない絶対的な強者を前に、口を開く男。
「ラッキー、戦い易くなったじゃん」
阿保が一人。
皆の頭に?マークが浮かぶと共に、黒の異形は徐に腕を掲げた。
天に据えた腕の先には暗黒に渦巻く魔素の呪い。
無数に蠢くそれは人面で象っていた。
それは先に彼らを呑み込んだものとは全くの別物。
その性質は触れた全ての魂を蝕み続ける。
即ち、取り込んだ者達の怨念そのものだった。
皆が膨大な量のそれを捉えた時。
「あ、まじもんの馬鹿だ、自分から隙作ってやんの」
アランの横でそう言い放つ男に視線を向ければ、彼の姿はもうそこには無かった。
──瞬間。
「【呉爾羅】」
突如として現れた男は、盛大に振り被った拳を
振り下ろすと全てを吹き飛ばす。
それは眼前に佇む黒の異形とて同じ。
ゼロ距離で放たれたそれは都市を壊滅させる程のそれ。
果たして吹き飛ばされた死の影は地表に直撃すると盛大に砂埃が舞う。
そしてその姿を視認する前に一つの人影──
否、眩い閃光が迫る。
「【雷槌】」
放たれた霆撃はペルーン王によるもの。
それはボロボロと崩れ落ちる死の影の総身に容赦のない一撃。
その必殺になろう拳が放たれれば、轟音と共に対する者の総身を吹き飛ばす。
画して後方へと流れる死の影。
そこには三つの人影が待ち受ける。
「【擬似雷槌】」
「【炎龍の鋭爪】」
「【巨人殺し】」
一つは電撃を纏った打撃。
一つは大爪を象った豪炎。
一つは持った得物に雷を纏わせた一振り。
交差する大技が対象を襲えば、盛大に爆裂する。
──かに見えた。しかし、
ギィィィィン!!
高密度の金属を叩いた様な低音が響けば、三者の顔を歪ませる。
「硬っ!!」
ダージュはその拳に伝わる衝撃を確認すると
二つの痛みが襲った。
一つは打ち込んだ対象の尋常ではない硬度の反発によるジンジンとした衝撃。
もう一つは不気味に纏わり付く黒い魔素。
それはじくじくとダージュの腕と纏わり蝕んだ。
「バケモンかよ……」
思わず漏れた言葉は誰に向けたのか……。
先に一撃を与えていた二人の武神の次元を再確認すると汽笛の様な大声が響く。
「離れろ!!」
ウリュウより発せられたそれは警戒促すもの。
からにして眼前に立つ脅威からは真っ黒に渦巻くエネルギーが急速に膨張して行く。
咄嗟に後方へ引いた彼らだったが途轍もない速度で迫る黒はそれを逃さない。
画して捕らえられた総身はやがて──
その意識をも呑み込んだ。
みんな『セカチュー』なんて知らないよね……。
昔流行ったんだ。
気になったら調べてみてね。




