トラウマ
──ペルーン王。
「騒がしい」
靡く風が鬱陶しい。
更に謎の地震が膝を揺する。
間も無くして彼の前に一人の男が降って来た。
「なんだこれ、魔人ブウの体内みたいだな」
理解不能な発言をする男。
「貴様。邪魔立てすれば容赦はせんぞ」
「うわ、まぶっ!」
しばしばと瞬きを繰り返す。
来るとは踏んでいたがこの魔女だけは絶対に譲る事が出来ない。
隙のない男を制止すると、不気味な老婆を見据える。
だが明らかに様子がおかしい。
「……ひっ、ひゃぁぁあああ!!
何故じゃ!何故貴様がおる!」
錯乱する魔女は降って来た男を視認すると狂気に蝕まれる。
「む、どう言う事だ?」
「いや、知らん」
魔女の様子からしてこの男に畏怖しているのは明白。
しかしその当事者はあまりにあっけらかんと否定した。
「来るな!来るでない!!」
発狂する魔女は乱雑に魔法を放ち続ける。
その黒い魔素の塊の全ては男に向け放たれた。
無数に放たれたそれが男の眼前迫れば、まるで羽虫を叩く様にして弾き返す。
一瞬ではあるがその腕には黒いオーラを纏った様にも見えた。
「何すんだババァ」
多少の苛立ちがその相貌から垣間見える。
「抑えよ」
「あぁ」
「早急にケリを付ける」
「頼む」
短く終えた会話を後に地を蹴った。
「【雷槌・金剛杵】」
錯乱する魔女は不注意極まりない。
双槌の棍を創り出せば盛大に振るった。
それは魂にまで干渉しうる超高密度のエネルギー。
「永劫に滅せよ」
触れずとも溶け始める肉体共に魔女の絶叫が響いた。
ーーーーーーーー
魔女の生態反応が消えた。
完全な消滅を確認するとペルーン王は武装を解いた。
それと共にウリュウが口を開く。
「厄介な魔物が見えた。
そこにリースを向かわせている。
あんたの同胞も居た様だが……
まぁ深くは干渉しないだろう」
「余計なお世話だ」
「詫びはしない。勝手にやらせてもらう」
不器用な会話。
だが、その実力を認め合っていると言う事は不思議と感じ取れる。
その裏で無数に犇く魔物が迫っていた。
「同胞と合流する」
「奇遇だな、俺もリースと合流する」
「ふん下がっとれ、道を開ける」
「勝手にやらせて貰うと言った筈だ」
そんな状況で微動だにしない二人の男は、共に魔素を練り上げた。
盛大に吹き荒れる魔素が辺りを舞う。
やがてピタリと収まると──
「【金剛波】」
「【皇打】」
放たれた電撃の波動と圧倒的な拳圧は、一面に犇く魔物を一掃するのは疎か、
後方で不気味に脈動する分厚い壁をも打ち破った。
「む……?」
爆ぜた壁の修復が遅い…やはりこの男……。
ペルーン王は密かに心に留めると歩を進める。
「あ、俺もそっちに用事あるんだった」
そして素知らぬ顔を決め込む男は後を追うのだった。




