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舞い降りた天使


全身に吹き付ける衝撃波と共に激しく揺さぶる地鳴りが響く。


常人では立つ事も儘ならない振動にスヴァログの体幹を挫く。


「何が起きてやがる……?」


突如起きた事象に理解が及ばない。


そして事態の収束を待つ中──


在らぬ殺気を感じ取った。



──瞬間。



スヴァログの土手っ腹を何かが貫いた。


「カハッ!」


背後から貫いたのは漆黒に(しな)う鋭利な尾。


それは先に消し炭に筈に悪魔のものだった。


「何故だ……⁉︎」


即座に臨戦体勢をとり、武装を纏う。


溢れ出る炎が悪魔を焦がしその尾っぽを焼き切った。


更に(ほとばし)る闘気がその総身を吹き飛ばす。


炭化した尾を抜き去ると傷む腹部を抑えた。


「しくじった……」


武装を内部に流すと細胞を活性化させ、自然治癒を高める。


流れる鮮血は徐々に収まるが、無くなった血までは戻らない。


霞む視界は焦燥を禁じ得ない。


それに反し相対す悪魔は当初と相も変わらず佇む。


更に非情な冷気が口内に集まった。


何度目か知れぬ絶対零度のビームがスヴァログを襲う。


恐らくは今の彼には受け切れない。


そしてその冷酷なエネルギーが迫った時──



「【聖なる盾(ホーリーバリア)】」



光の盾が眼前を覆うとその冷気を弾いた。


「【癒しの光(ライトヒール)】」


更に淡い光が腹部を包むとその傷みが忽ち引いて行く。

間も無くしてあっと言う間に傷が塞がった。


「遅くなりましたが、助太刀に参りました」


その声が響くと一人の女性が降り立つ。


「お前は……」


「リースで御座いま──」



──ガンッ!



当たり前の様に会話を許される事は無い。


しかし迫り来る悪魔は光の壁に阻まれると鈍い音を奏でる。


だがその勢いは止む事はない。


飛翔しながら縦横無尽に暴れまわる悪魔はスヴァログに向け猛攻を計る。


幾多と接近を試みるがその全てが無駄に終わった。


「ちょっと五月蝿いですね」


多少の苛立ちを覚えるとリースは魔言を紡ぐ。


「【光の牢獄(ライトプリズン)】」


現れたのは正方形の光の檻。


それが悪魔を囲う様に出現するといとも簡単に閉じ込めた。


「これでゆっくり話せますね」


一息吐いたリースは呆然とする男に問う。


「ではスヴァログさん。あなたに問います。

 私の助太刀を良しとして頂けますか?」


一瞬停止した思考を巡らせる。


「あ、あぁ……構わない」


「そうですか。感謝いたします。

 では参りましょう」


そう言うと檻の中の悪魔を見据えた。


「ま、待て!あいつの再生能力は異常だ!

 消し炭にしても何処からか蘇る!

 正直倒す方法が分からない……

 そんな状態で戦うのは危険だ!」


その言葉は真意だった。


リースもその脅威をしっかりと理解している。


しかし──


「なるほど。であればこれを生成している本体、即ち死の影を討伐するか、この物の存在自体を抹消するしか無いみたいですね」


断じて崩れる事のない戦意はスヴァログの心を射抜いた。


「早急に終わらせます」


そう言い放ったリースの背後に巨大な魔法陣が展開される。


「【鎖式結界・審判の(ジャッジメント)(チェーン)】」


詠唱もなく展開された魔法陣からは、巨大な六つの鎖が出現する。


「これは…封印術式……あなたはもしや……?」


その神々しい光を放つ鎖は霊魂まで干渉しうる。


そしてそれを扱う人物は自ずと限られる。


何か勘付いた様子のスヴァログを置いて、その鎖は途轍もない速度で悪魔へ迫った。


光の牢獄を擦り抜けると肉薄した鎖は即座に悪魔の総身を縛り上げた。


「滅殺」


更に魔素を込めると耳鳴り思わせる様な金属音と共に一瞬の均衡を許さず四散した。


「この件はくれぐれも内密にお願いします」


後光の様な光を放つ鎖を背に振り向き様にそう言い放った彼女の姿。


スヴァログの眼に映るそれは正に──



天使の様だった。



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