好敵手
──ヒョードル。
絶望の淵で手を差し伸べられた。
現れたのは黄金色の髪を後ろに纏めた少女。
「おいチンチクリン、いつまで寝てんだよ」
そして口が悪かった。
「なっ⁉︎」
思っても無い罵声を浴びるヒョードルだがどうにも出来ない歯痒さが残る。
「あ、魔素枯渇してんのか。ほら、これでも飲め」
徐に取り出したのは魔素の雫。
放り出されたそれを飲み干せば、先まで感じて居た気だるさが抜けていく。
「恩に着る」
礼を言うと共に眼前に立つ手負いの人狼を見据える。
「んだよ〜。死にそうじゃん!
あっち行けばよかった〜」
何を不満に思ったのか悪態をつく少女は頭の後ろで手を組んでは駄駄を捏ねる。
「おい、集中しろ。あいつは正真正銘の化け物だぞ」
「うるせぇ!
今にも死にそうなのに化け物のクソもあるか!
まぁいっか、ちゃっちゃと終わらせて父ちゃんとこ行こ」
一人納得すると武装の魔法を纏った。
「これは……」
少女の武装は雷。
それはヒョードルやダージュと酷似していた。
「あん、何見てんだよ!言っとくけど私はあんたより強いからね!」
言い放つや否や即座に駆けた。
ヒュードルも度肝を抜くその速度で人狼へと迫ると幾多の殴打を放った。
「あたたたたたたたたたた!!」
負けたくない──
無性に駆り立てられたプライドは無意識にヒョードルを動かした。
そして少女と同じくして迫るとこれまた同じくして殴打を放つ。
「あたたたたたたたたたた!!」
ただしその回転率を少女を少し上回った。
「むぅ!」
少女は頬を膨らませると躍起になって殴る。
「なにっ!」
ヒョードルも負けじと応戦する。
「あたたたたたたたたたたた!!」
「あたたたたたたたたたたた!!」
「「あたたたたたたたたたたたたぁ!!!!」」
その殴打が数千を超えると人狼の総身は何重ものコブを作っていた。
「はぁはぁ、あんたなかなかやるわね」
「はぁはぁ、お前もな」
「あんた名前は」
「ヒョードルだ」
「そうヒョードルって言うのね。
私はエレナ。よろしく」
息を切らし奮闘を称え合った両者は互いに手を差し伸べる。
そしてその手を固く結んだ時──
バガァァァァァン!!!!
轟音と共にサンサンと輝く太陽が顔を見せた。




