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人狼



──ヒョードル。



父の付与術式を身体に纏い、眼前に迫る脅威を見据える。


彼が相対すは人狼。


そして現在、その見た目は始めと違い明らかな変貌を遂げていた。


狼の様な頭部に大きく裂けた口にはびっしりと鋭い牙が生え揃い、毛深い体毛に覆われた内には引き締まった筋肉が顔を覗かせる。


更に硬く鋭く尖った爪は人間の身体を簡単に引き裂いてみせる。


その高い身体能力に任せた暴力は洗練された武術を嘲笑うかの様に覆す。


「ぐぅ!」


今もまた不粋に振り被った殴打がヒョードルを襲えば数メートル吹き飛ばす。


往なした筈の衝撃は芯に残り、着実に疲労を募らせる。


「くっ、フィジカルか強過ぎる……」


幾度か交わした拳は人狼に軍配が上がり、劣勢は未だ覆る事はない。


だが、ヒョードルとて奥の手がない訳ではない。


ただ躊躇するにも意味がある。


それはまだ未熟である彼では制御が効かないのだ。


しかしながらこのまま戦闘を続けても敗北は濃厚。


「やるか……」


深く人狼を見据えると、己の魔素を解放し、武装の出力を最大にした。


彼の纏う青白い閃きは太く轟々と鳴り響く。



「【電光石火】」



一直線に眩い閃光が走り光速で駆け抜けたそれは──



雷の体現者となった。



バジィィィィン。


一層の閃きが溢れればそれを辿るとこには焼き焦げた一筋の路が出来た。


「やったか……」


徐に背後の確認するヒョードルの目に映るのは右半身が焼き爛れた人狼の姿。


「ぐぉぉぉぉおおおお!!」


響く雄叫びが奴の生存を示唆する。


「クッソ……まじかよ」


ヒョードルの魔素も限界に近い。更にはダージュの掛けた付与術式は今にも切れ掛けている。


この大技は放てても後一発。


それもダージュの付与術式なしでは成功するかも分からない。


やるしかない……。


ヒョードルは覚悟を決めた。


再び魔素を練り上げる。


この一撃掛けて。



「電光……──⁉︎」



ヒョードル眼前には無数の大蛇が壁を作る。


「チッ!」


大きく舌を鳴らした直後──


「【大槌】」

「【刃糸】」


上空から出現した巨大な槌は多くの魔物を摺りつぶし、目を凝らさねば視認出来ない程の糸の束は触れた箇所から裂けていく。


「ヒョードル様、今です!」


現れた大男の声が木霊すればヒョードルが動き出す。


「助かる!ドム、それとキギモラもな!」


二人は背中で受け止めるとすぐ様戦果へ急ぐ。


そして──



「【電光石火】」



文字通り最終奥義となったそれは一気に勝利へと駆ける。


しかし付与術式が完全でない以上その反動は、激しく体幹を揺する。


「らぁぁぁぁ!」


不安定な軌道をいくそれは雄叫びと共に徐々に纏まりをつけると──


確かに人狼を貫いた。



が──



「チクショーー!!」


捉えたのは左腕。


それは先に貫いた半身と合わせて両の腕を封じるまでの重傷を負わせる。


しかしながら絶命には至らない。


先の一撃で魔素枯渇を引き起こしたヒョードルの身体は言う事を効かない。


のそりのろりと接近する人狼はその大きな口を大層に広げ、捕食せんとする。


ここまでか……。


迫り来る死を受け入れたその時──



「てやんでぇぇ!!!!」



意味不明な掛け声と共に一人の少女が現れると人狼の顔面を蹴り上げた。


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