吸血鬼
──ダージュ。
相対すは吸血鬼。
生き血を啜り永遠の刻を生きるとされる。
鋭く尖った犬歯に青白い不気味な肌を晒しマントの様に羽織った黒い装束は謎めいた憂いを感じる。
「おい、お前の相手は俺だ」
放たれた殺気は吸血鬼に確かな警戒を促した。
ギロリと向いた赤い目が不敵に光ると鋭利な牙を剥き迫った。
黒の弾丸と化したそれに合わせる様に眩い閃光が交差する。
両者地に着くとポトリと何かが落ちる音がした。
見れば吸血鬼の右腕からは噴水の様な鮮血が上がる。
そして先の音源は宙を舞った片腕が落下したものだった。
しかし吸血鬼の相貌は些細な機微をも感じさせない。
更に不気味に隆起する右肩からは、つい先ほど飛ばした筈の右腕がミチミチと生え揃う。
「再生持ちか……」
戦闘能力では上を行ったダージュであったが長期戦となれば敗北は濃厚。
とは言え一か八か掛けをするにもリスクがデカ過ぎる。
「ぐあぁぁ」
また一人深く傷を負う者が目に映る。
決断を迫られるダージュは深く呼吸を整えると吸血鬼を見据えた。
「はぁぁぁ!!」
己の魔素を練り上げると一層の電撃が身体を覆った。
「【武装・帯雷】」
文字通り帯電する総身は強烈な静電気を生む。
それは恐ろしい程の引力を生み、相対するもの引き寄せる。
からにして吸血鬼の総身は簡単に引き寄せられ、振り被った殴打は正確にその顔面を射抜いた。
──バジィィン。
放たれた拳はインパクトの瞬間、轟音と共に閃いた。
引き起こされた放電は日常生活のそれと比べられるものでは無く、雷を纏ったそれは宛ら落雷と同じくした現象だった。
焦げた顔面は隆起を繰り返すが、ダージュの手は止まる事は無い。
ここで消し炭にしてしまわなければ、またしても再生を許してしまう。
勝機を掴むべくダージュは光速の連撃を見舞う。
「【電刃】」
体重を乗せた殴打に加え、鋭く纏わせた雷の手刀は四肢を焼き裂いていく。
胴のみになったそれにトドメを刺すべく、心の臓に迫った時──
その形を蝙蝠に変えた。




