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チョールト



──スヴァログ。



「なんなんだこの壁。

 幾ら叩いても再生しやがる……」


この男もまた暗赤色の不気味な壁に阻まれていた。


「チッ、取り敢えず他の道を探すか……」


大きく舌を鳴らしたスヴァログは踵を返す。


振り向いたそこに映ったものは──



地面から不気味に這い出た悪魔の姿だった。



それは比喩では無く、スラヴの伝承に古くから伝わる伝説上の生物。


人型を象るそれは禍々しい角、コウモリの様な皮膜を張った翼、鋭く鞭の様に(しな)う尾。


その体躯はドス黒く呑み込まれそうな皮膚が覆い、溢れ出る冷たい殺意は肌を刺す。


正しく悪魔の(なり)をとったそれの名はチョールト。


スラヴの人々であえば誰もが知る畏怖すべき存在であった。


だが、


「ふん、貴様如きの殺気では気後れ出来んな」


スヴァログとて三柱を担う一人。


そして彼はこの殺意に匹敵──

否、それ以上の恐怖を知って居る。


そして悪魔はその総身が露わになるや否や無機質に口を開ける。


極寒のエネルギーが充満されると一直線にスヴァログに向け放たれた。


絶対零度のビームは凄まじい勢いでスヴァログに迫るとそれが通った後には氷漬けの世界が出来上がる。


そしてそれが彼の眼前まで迫ると巨大な氷柱を作った。


間も無く。


極寒に包まれていた空間はグツグツと沸き立つ。



──次の瞬間。



大量の水蒸気と共に巨大な氷柱は消え去った。



そして現れたのは真っ赤に燃え盛る炎を纏った男だった。


「【炎舞】」そう紡がれた魔言を皮切りにスヴァログは地を蹴った。


脚に纏った炎は爆発的なエネルギーを生みまるでシャトルを思わせるそれは、途轍もない速度で悪魔へ肉薄する。


それは相手の認知を超え瞬く間に対に角をとった。


更にそれを支えに──


「ふんっ!」


渾身の膝蹴りを見舞うと、その顔面を陥没させるに至る。


おまけに握り締めた捻れた鋭角はその豪炎に負け炭化したそれは脆くも崩れ去った。



しかしながら驚く事に、それでも絶命させるには叶わない。



ぴくりと痙攣を思わせると、突如として鋭利な尾がスヴァログの顔面を襲った。


死角から放たれたそれを間一髪で避けるがその頬には一筋の赤線を作った。


「おいおい顔潰れてんだぜ……?」


一旦距離を置きごちるスヴァログに更なる試練が待ち受ける。


そして次にその目に映ったのは当初と相も変わらず佇む悪魔の姿だった。


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