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不穏


視界の全てが黒になった。


それは突如として訪れた災厄。


しかしながら幸いにも彼らは生存していた。


だが此処が何処かは定かではない。


辺りを見渡せば不気味に脈動する暗赤色の肉壁に囲われていた。


「起きたか、ヒョードル」


ヒョードルは意識が覚醒すると一人の男に声を掛けられた。


「父ちゃん……ここはなんなんだ?」


「俺も定かではないが恐らくは──


 奴の腹の中だろう……」


衝撃の一言に言葉を失うヒョードル。

更にダージュはこう続けた。


「あの黒い塊は奴の胃袋と繋がり、触れた全てのものを呑み込んだのだろう。

 我々のみならず、辺りに散乱する木々がその証拠だ」


ダージュの憶測は正しかった。


あの巨大な黒い塊は辺り一帯を飲み込みベルーハ山の麓にはぽっかりと巨大なクレーターが作られていた。


そして不気味に渦巻くそれは未だ消滅する事なく、そこに残っていた。


「王と他の三柱の姿が見えない。

 合流仕様にもまずは此処をどうやって脱出するかを考えねばならない。

 先程あの壁に向け魔法を放ったがビクともしなかった。

 出力を上げても少しばかり抉れる程で直ぐに再生されてしまう」


三百の武人とダージュの無事は確認出来た。


後の者は王に三柱。心配は無用だろう。


しかしながら早めに合流はしておきたい。


だか生半可な攻撃を一切通さないこの壁は我々の進行を拒む。


「ダージュ様。

 やはり奥にも人の気配はありません」


「こっちも見つかりませんしたー」


現れたのは門番の二人だった。


一方は恰幅の良い体格に毛深い体毛と垂れた目の優しい顔付きが印象的だ。

名をドムヴォーイと言う。


一方は中性的な顔立ちで、何処か面倒くさそうに話す、少し憎たらしい顔付きの男。

彼の名はキギモラと言う。


「取り敢えず先に進んで見よう」


ダージュはそう言うと皆に号令を掛けた。


隊列を組むと総隊を率いて歩を進める。


薄気味悪い道を行く彼らの後方では──



無数の何かが蠢いた。



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