化け亀
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「王。スラヴ国にてジェノサイドタートルの目撃情報が多数御座います。
如何致しましょうか?」
「そうか……お主はスラヴの国出身であったな……。それは嘸かし不安だろう」
「…………。」
「何も恥ずべき事ではない……。
お主の故郷を想う気持ちは大いに汲み取れる」
「では……⁉︎」
「但し条件がある。大厄四獣の討伐だ。
恐らく勇者も姿を現わすであろう。
そこでだ──」
「畏まりました……」
王は何やら囁くと彼は王の間を跡にした。
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──アルタイ山脈 ベルーハ山麓。
巨大なマンモスの群れが一瞬にして消えたその後。
彼ら一団はベルーハ山の麓に野営を張り、調査に向け身支度をしていた。
頻りに身体を動かし四肢の感覚を確かめる者も居れば、只じっとして集中力を研ぎ澄ます者も居る。
皆思い思いの形で自らを奮い立たせ、次に来る戦いに備えていた。
緊張感が張り詰めるピリピリとした緊迫する空気が漂う中──
それは唐突に現れた。
「なんだ?」
一人の男が上空を見上げれば、うねうねと空間が蠢いている異様な光景が眼前に広がる。
まるで巨大過ぎる何かが空間から這い出て来る様な気配と共に、途轍もない胸騒ぎが彼らの心を抉る。
そしてその不安は本能的なものに付随して起こり得るもの。
からにしてその胸騒ぎはこれから自らに降り注ぐ厄災を見事に的中させるに至った。
先ず訪れたものは闇。
視界が黒に染まり、たじろぐ彼らに喝を入れるべく口を開いたのはやはりペルーン王。
「鎮まれ!!」
その低く髄に響く声はしっかりと彼らの元へ届き、冷静さを取り戻す。
「【雷神】」
その魔法が発現すれば忽ち辺りを眩い光が照らした。
否──照らしてしまった。
直後に映る光景は戦慄を超えて絶望。
そしてそれは多くの者の心をへし折った。
上空を見上げた彼らが目にしてしまったそれは、三百メートルを超えた化け亀の外形。
付け加えるなら今し方訪れた闇は──
それが落とした影であった。




