殺気
両者思い思いの構えを取り、向かい合う。
一方は脱力した腕をだらーんと下げ、やや前傾。
一方は構えを殆ど取る事なく只々直立してる。
「いつでもいいぞ」
「よーしいくぜぇ!」
悠々と構えるウリュウに向け殺気を放つと、ヒョードルは駆けた。
「魔法の使用も構わん」
「了解だぜ兄貴」
そう言うとバチバチと電撃を纏い加速する。
そしてバチンッと閃くと体重を乗せた打撃を放った。
十分な速度で迫る拳を掌で受け止めたウリュウ。
すかさず親指と中指の駆使して弾かれた勢いをヒョードルの額に打つけた。
所謂デコピンである。
大きく吹き飛ばされたヒョードルはすぐ様体勢を立て直し、再びウリュウに向け迫る。
様々な角度から幾多の打撃が放たれるがその何れもが簡単に受け止められてしまった。
「はぁはぁ、何で…当たらねぇんだ……?」
息を切らして話すヒョードルにウリュウが言い放つ。
「簡単だ。お前は殺気を放ち過ぎてる」
「──⁉︎」
「初めて対面した時もそうだ。
明る様に向けられる殺気にその軌道が読める。
俺はそれに合わせて受け手を出しているだけだ。
先ずはそのだだ漏れの殺気をなんとかしろ」
「良いのかよ、そんな卑怯な真似?」
「お前ら部族はその自尊心故に殺気を放ち正々堂々と正面から戦って居る様だが、俺に言わせればぬるい。
実際の戦場は生きるか死ぬかだ。
勝った者のみが正義」
ウリュウの発言に首を傾げるヒョードルであったが、彼の無慈悲なまでの勝利には納得せざるお得なかった。
「だが、殺気とは時に武器となる。
それは弱者を畏怖させる為でも、正々堂々戦う為でもない……」
そう言うとウリュウはタンッと地を蹴った。
寸毫。
ヒョードルの左側から強烈な殺気を放ち大きく右腕を振り被ったウリュウの姿が目に映る。
『殺される…』その死相すら現れぬが確かな恐怖に心臓を握られると反射的に左半身を守る動作を取った。
──その時。
右側面から鐘木に打ち付けられた様な衝撃と共に吹き飛んだ。
そしてウリュウは言う。
「陽動ってやつだ。覚えておけ」
ヒョードルは途切れ掛けた意識の中、「ぜ、全然いたくなねぇぞこら……」と強がって果てた。
※鐘木とは大きな銅の鐘を叩く丸太の様な木を
イメージして頂ければおーけーです。




