連戦
「ん……?」
尋常ではない殺気を放ち、途轍もない速度で接近する二つの気配を感じ取った。
明らかに此方に向けて来ている。
一旦ダージュから手を離し、迫り来る脅威に向かい打つべく体勢を立て直そうとした。
──瞬間。
「ガギィィィィン」
双方から放たれた一撃を、咄嗟に腕を構えて受け止めた。
ウリュウの右側からは炎を纏った肘打ち。
左側からは暗黒を纏った蹴りが見舞われた。
右腕から伝わる熱を感じると共に、ウリュウは右後方へと吹き飛んだ。
確かに受け止めたかに思えた蹴りからは、一瞬の均衡を崩すと共に強烈な衝撃が襲った。
吹き飛ばされたウリュウは両手で地面を押し返すとバク転の要領で接地する。
「闇属性か……」
ゴチるウリュウの左腕は筋肉質で艶やかなものになっていた。
それは先程までふた回り程膨張し、硬質化していた皮膚の面影が完全に消え失せたと言う事だ。
突如として現れた二人の男はダージュと同じ様に蓄えた髭が印象的だ。
炎を纏った男は赤みを帯びた黒く長い長髪を後ろに纏め、暗黒を纏った男は黒髪の坊主頭だった。
ウリュウは左腕の痺れを感じると、にぎにぎと感触を確かめる。
そして先に動きを見せたのは赤黒い髪の男だった。
「待て……!」
ウリュウの静止を聞き入れられる事は無く、容赦なく放たれた魔法。
「【炎舞】」
そう言い放った男からは、一層の炎が腕を覆った。
「やるしかねぇ……」
明らかな敵意を見せ、逃れられないこの状況に腹を括る。
そして猛スピードで肉薄する男からは炎を纏ったストレートは放たれた。
寸でで顔を逸らし回避する。
だが──
「あぢっ!」
纏った炎の熱がウリュウの頰を焦がす。
面を食らう彼の隙は当たり前の様に見逃してくれる筈も無く──
「カハッ!」
放たれたストレートが素早く折り畳まれた肘となって襲っていた。
更に下を向いてしまった視線からは恐ろしい速度で膝が迫っている。
滑らかにそして的確に人体を破壊すべく迫る連続技こそ、【炎舞】の真髄。
避けられない。
ならば──
ウリュウは額を硬質化させると共に、渾身の頭突きを見舞う。
「ガギィィン」
本日何度目か知れぬ音を奏でる。
「んぐぅ……⁉︎」
ウリュウの頭突きを受けた男は踏鞴を踏み後退する。
隙を見せた男に肉薄するウリュウは本能的な危機を察知した。
──寸毫、暗黒に包まれた拳が頰を掠める。
だが放たれた拳はウリュウの状態を退かせる為に布石。
それに気付いた時には既にウリュウの右腕は取られていた。
取られた右腕を引き手に、一本背負いの要領で担ぐと、ウリュウの総身は簡単に宙を舞う。
ただこのまま叩き付ける訳ではない。
落下して行く身体に反し、取った右腕のみを引き上げる。
これにより重力に反した腕と、身体を繋ぐ肩に猛烈な負荷が掛かり──
やがて粉砕する。
この男もやはり人体を破壊する術を心得た武人という訳だ。
だが──
「なにっ!?」
突如として硬質化した右半身はそれを許さない。
闇属性の術式破壊を超えて展開されるそれに驚愕の色を隠す事が出来ない。
更に有ろう事か取った腕を強引に振り払うと、華麗に受け身を取った。
危険過ぎる生命体だと認識し、男は一旦距離を置くと、赤黒い髪の者と合流した。




