悪魔
彼との戦闘は実に面白い。
俺の初速を受け止め、連撃すらも耐えた。
そして剰え反撃に投じたのだ。
だがこの程度ではまだ余が余る。
彼の打撃では俺にはダメージを与えられない。
何故なら究極に脱力した俺の身体はその衝撃を往なす。
今の彼では芯を捉える事は困難だろう。
この程度の実力であれば『死の影』を迎え討つ事は出来まい。
その心意気には感謝する。
潜在的な実力も確かなものだ。
しかしこの程度では父に見せるまでもない。
彼の為にも……。
ダージュもまた覚悟を決め、容赦を捨てた。
一旦距離を置く。
そして再び高速でウリュウに迫ると、渾身のショートアッパーを放った。
これは先のフックと同じで腰を入れない。
更にその方の肩の動きはストレート、フックと同じフォームで放たれる。
故に肩の動きで軌道を読むのが難しい。
現にウリュウの左腕は先程と同様に半顔を覆う様に守っていた。
「終わりだ……」
そう確信したダージュは全力で拳を振り上げた。
「ガギィィィィン」
おおよそ人体が打つかる音ではない音色を奏でると打ち放った拳から強烈な痺れを感じた。
「ぐぅ゛っ!」
見るとその拳には真っ直ぐに降ろされた肘が突き刺さっていた。
恐ろしい程硬いそれに理解を得る事が出来ない。
思考が追いつかないまま顔を上げれば眼前には猛然と迫る拳があった。
「がはっっ!!」
衝撃は緩和させた。だが突如として食らったそれを完全に殺し切るには至らなかった。
吹っ飛ばされた勢いを両の脚で踏み込んで止める。
体勢を立て直し視線を上げると同時に、目の前に映るそれは──
拳を振り被った悪魔の姿だった。




