少年
「パァーーーン」
軽快な音と共に飛び出して来たナニカは、十数メートル程吹き飛んだ。
「ウリュウ、ちょっとやり過ぎでは?
こんなに幼い子を引っぱたくなんて……」
飛び出て来た者はなんと、まだ幼い少年だった。
黄金色の坊主頭で肌は雪の様に白く、吸い込まれそうな青い目をしていた。
そして何処と無くアランやエレナと似た顔付きに思えた。
「いや、思ったより速くてな」
彼としては鬱陶しい蝿を叩く様に、手の甲による鞭打を放っただけだ。
だが迫り来る少年の速度が思いの外速く、カウンターの要領で決まってしまったが為、結果として吹き飛ばされただけの事だった。
あの速度にカウンターを合わせる技量は計り知れないものがあるが、彼にとっては不本意であった事には間違いない。
「それにしても、あの子今同胞の仇って……」
「あぁ確かに聴こえた」
突如として出来た疑問を解消すべく、少年に向け問いかける。
「坊主、今同胞の仇と言ったか?
それはどう言う意味だ」
地に伏せた少年は満身創痍の身体を起こす。
その瞳には恐怖が垣間見れた。
「う、うるさい!町のみんなを返せ!
お前達が連れ去ったのだろう!
俺はまだ本気をだしてないんだぞ!
今なら許してやる!」
その声色は震え、誰が見ても怯えていると分かるものだった。
「それは間違いだ。俺達はこの町を襲ってなどいない」
「嘘を…嘘をつくな……じゃあなんでこんな極寒の
地でそんな薄着してんだよ!
どうせ魔物が化けているのだろう!
それに頭だってハゲているじゃないか!」
「あ゛ぁん?」
「だっておじいちゃんも言ってたんだ。
『これまで幾千と強きモノと戦って来たが、ハゲには勝てん。
あれはこの世で一番恐ろしいもんだ』って……」
ウリュウが凄んでやると、少年は焦った様に早口で語った。
「おい、クソガキィ。お前に二つ良い事を教えてやろう。
一つ目は寒さに勝つコツだ。
こいつは至極簡単だ。
スバリ言うと気合いだ。それしか無い。
更に二つ目だ。これは大事な事だからな、絶対に聞き逃すなよ──」
ウリュウは含みを持たせた口調で話し、たっぷりと間を取ると、
「ハゲってのは強い奴の証拠だ」
そう言い放った。




