起床
重い瞳を開けると、見慣れない天井が目に入る。
どうやら、幸いにも生きて居るみたいだ。
巨大な怪物にぶっ飛ばされてからほとんど記憶がない。
ふと気配を感じ視線を横に向けた。
「あら〜起きたのね〜」
女性が居た。
おっとりとした口調は人の心を和ませ、母の様な包容力を感じた。
金茶色のセミロングの髪は、毛先の方からくるくるとカールを巻き、ふわふわとした印象の中に妖艶な大人の魅力を引き出していた。
「初めまして、私はガイア・ランドロフ」
女性はそう言うと体を寄せ顔を覗かせた。
「あ、あの……当たってますけど」
左腕に当たる包み込まれる様な柔らかな感触を確かめるとそう答える。
敬語は苦手だが、彼女が相手だと不思議と口調に現れた。
「あら、ごめんなさいね。大き過ぎてコントロール出来ないの。
ほんと不便だわ〜」
爆乳だった。
「肩こりそうっすね」
明る様に当てに来てる様に感じたが。ここは適当に流す。
「こうすけです」
気だるい身体を起こし答える。
「あらあら、無理しなくていいのよ。
三日間も寝込んで居たのだから」
どうやら三日間も寝込んで居たらしい。
通りで身体が重い訳だ。
「私は王都直属の医師をしているの。
魔法では限界のある血液の輸血や病気などの特効薬を研究しているのよ。
あなたの身体もすこ〜しだけ診せてもらったわ」
含みを持たせた口調は妙な色気があった。
「こうすけくんの筋繊維は白筋の割合が多いのね〜。
悪い事じゃないのよ。白筋はね、速筋とも言って、瞬発的な運動を実現させるの。
でも私は赤筋の割合が多い人の方が好きかな〜。
赤筋の別名は遅筋て言ってね、長時間の持続的な運動に適してるの。
私、すぐイっちゃう人はタイプじゃないのよね〜」
なにやら筋繊維について語り出すと、ひとり悩む様な仕草を見せた。
「知ってる」
すぐイっちゃうだかは意味不明だが、筋トレが趣味の俺にとっては当然の様な知識だった。
どうやら俺が寝込んでいる間に色々と身体を弄られたらしい。
「あら、賢いのね〜
あ、そう言えばそろそろじゃないかしら」
彼女はなにやら不敵に微笑むと、瓶の形状をした物に筒の様な口を取り付けた容器を取り出した。
いわゆる尿瓶である。
「すぐに済ませますからね〜」
そう言うと俺の腰に手を当ててズボンを下ろそうとする。
目が本気だ。
瞳の奥がどこか据わっていて恐怖すら感じる。
「ま、待て!
トイレくらい自分で行ける!!」
焦りながら早口で叫び、少し降ろされたズボンを元の位置に戻す。
ふぅ、危うく下半身を露出させる所だった。
油断も隙も無い。
そう思ったのも束の間、次に言った彼女の言葉に俺は驚愕した。
「そんなに気にする事ないのに〜
毎日やってあげてたのよ〜」
手遅れだった。
赤面した顔を隠す様に寝床から飛び起きると、そそくさと出口に向かう。
どうも、この女性と居ると調子が狂う。
俺は逃げる様にして部屋を出た。
「うふふ、ちょっとからかい過ぎちゃったかな?」
からかう様に微笑する彼女は、多感な男子の背中を見送った。




