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臨戦



──金閣城周辺。



荘厳に構える黄金の根城。


豊富に取れた金塊をふんだんに遇らって、豪勢に建てたそれは、今や妖の瘴気にやられ、燻んだ黄土色にも見せた。


「隊列を崩すな!

 城の内部には何があって侵入を許してはならない!」


犬ノ火粉は叫ぶ。


百鬼夜行。


彼らの周辺には大量の妖の軍勢が押し寄せていた。


鬼を中心とし、土蜘蛛、牛鬼、がしゃどくろ。


どれも異形な形態をしており、古来より人々を襲ったとされる妖。


それが足並み揃えて大量の押し寄せてくるのだ。


異常の他ない現象。


その迫り来る脅威に立ち向かうのは桃ノ果実一派。


青の基調とした袴を身に纏い、清く精悍に迎え討つ。


そんな中一際蹂躙を尽くす妖が三体。


酒気を帯びた様に赤く色づく相貌に、童子の様な小柄な体格は、それに相反する様に強烈な殺気を飛ばす。

名を酒呑童子。


河の厄災とも恐れられ、頭部は皿の様に円形に硬化している剛力の妖魔──河童。


大きく伸びた鼻に赤ら顔。カラスの様な大きな翼を持ち、風を操る山の祟り──大天狗。


どれも古来より恐れられた怪物。


それが一同に姿を現した。


大天狗がその手に持った羽団扇は一振りすれば、忽ち突風を巻きをこし、多くの武士が宙を舞う。


一挙一動の自由を奪われるその乱流の中で──


「待たせたっすね」


その風に乗って無数の刀と共に降って来たのは猿ノ矢真だった。


「お前の相手はおいらっす」


両の手を刀を構える様にぎちりと握ると、地面に突き刺さっていた無数の刀は──



大天狗に向け浮遊した。



ーーーーーーーー



──犬ノ火粉



城門の中央を陣取り、向かい来る妖を薙ぎ倒す。


泉の如く現れる妖に、一太刀振るえば灰と化した。


武装を纏う戦闘は、己の膂力を遺憾無く発揮する。

それは以前とは比べ物にならない程に体力の温存を可能としていた。


このまま消耗戦となろうとも、幾戦でも交えるだろう。


そう思っていた矢先──


ゆらりゆらりと幽鬼の如く赤き童子がねり歩く。


一歩一歩その根城の近付く毎に迫る武士を赤子の様にひねり潰す。


それは比喩ではなく尋常ならざる殺気と共に、それの横を通る物の全てを肉塊へ変えた。


「酒呑童子か……」


小さき体に大きな瓢箪を背負い、一際揺さぶる重圧に思わず嘆息が漏れる。


次々と散りゆく同胞を前に──


「来い!俺が相手しよう」


確かな殺気を飛ばした。


ーーーーーーー



──雉ノ詩舞。



「うわ、気持ちわりぃ」


迫り来る妖。

それに一太刀浴びせる度に吹き出す体液に、如実に顔を顰める男。


「しかもくっせ!」


思わず吐露する彼は、その消極的な発言と裏腹に多くの妖を倒していた。


「しっかし矢鱈と多いねぇ。

 どっからこんなに妖が湧くのやら……」


肩に刀の棟を置き、辺りを見渡す彼は言う。


その眼前には未だ無数の妖の姿があった。


「あぁあ、なんかもっと手取り早い方法ないかなぁ〜……って何あれ……?」


それはぎちぎちはち切れんばかりに隆々とした筋肉を振り翳し、辺りの妖諸共吹き飛ばしながら一直線に迫り来る暗緑の塊。


頭部に皿を乗せ、亀の様な甲羅を背負う。


5本生え揃った指の間には水掻きの様な皮膜が覆い、アヒルの様な嘴に黄色く光る眼光。


そして──


「生臭ぇぇえええ!!」


強烈な異臭が鼻を刺した。


思わず鼻を摘み愚痴をこぼす。


そしてその黄色く光る眼差しは雉ノ詩舞の姿を捉えると──



跳んだ。



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