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激突
真っ暗になった視界。
とくんとくんと、脈打つ鼓動を感じた。
不思議と恐怖心は消え失せ、身体は芯から暖まり、心臓から溢れ出るエネルギーは俺の感覚を尖らせる。
少しずつ覚醒する意識。
頭の中は嘗てない程に冴え切っていた。
ずしんずしんと大地を揺らし、一歩一歩接近する異形。
今の状態で逃げ切る事は、到底不可能。
ならば、やる事は一つ──
握り締めた右腕は淡い光を帯びた。
「まだだ、相手はヒグマの比じゃねぇんだ。
足りない……もっと力を……」
ありったけの魔素を全身に──
「【武装】!」
持てる全てを使って、極限まで身体能力を高める。
そして全身がふた回り程膨張すると、右腕の輝きが更に増して行く。
異変を察知した異形の魔物は、大地を踏み抜いて肉薄した。
合わせる様に、俺も地を蹴り、大きく右腕を振り被る。
──交差する拳。
「ドゴォォォォォン」
耳を擘く様な轟音と共に、砂埃が辺りを覆った──。




