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妖斬り、参る!  作者: 濃見 霧彦
第一話 迷い込んだは見知らぬお江戸?妖退治にいざ参る!
5/13

5

 兵衛達が遠巻きにしばらく寺の様子を伺っていると、寺の方からぱんっと乾いた音が何度か上がる。


 「ハットリが見つかったか!?」


 「みたいだねえ。兵衛さん!」


 「踏み込むぞ!」


 急ぎで言いおいて駆け出す兵衛。


 「逃げ出されたら厄介だ。僕は門から逃げ出すゴブリンを抑えるから兵衛さんはハットリと合流して勁力のリスクを伝えて!」


 「承知した!気を付けてな!」


 「そっちこそ!それと合流したら一旦戻って相手の数を教えて欲しいんだけど!」


 「善処する!」


必要な会話はしたとばかりに、矢の速さで山門への階段を駆け上がり寺へと突入する兵衛。それにしばらく遅れて山門へと辿り着いた幻一郎は門の中央に陣取りふぅっと息を吐く。


 「結局僕の魔法に関しては何も聞けなかったけど、まあやってみましょう。自称魔法使いは伊達じゃないってね」


 そう嘯いてぱちんと指を鳴らすと1メートルほど土がせり上がり、山門を塞ぐ壁となる。この朔月 幻一郎と言う男、魔法使いを自称するだけの事はあり、3人の中では一番ファンタジーに慣れ親しんでいる。もし異世界に行けて魔法が使えたらと言うイメージトレーニングはバッチリである。


 本人曰く、「自分達の世界には魔力という概念と言うかリソースが存在しないから魔法が使えないだけで、魔力かそれに相当するリソースが存在する世界ならば、問題なく魔法が使える程度の理論はある」だそうだ。


 「ゴブリンってジャンプ力高いイメージないしね、60センチ程度の身長なら1メートルの土壁は越えられないでしょう」


 自分がどれ程魔法を使えるか、ゴブリン数が実際どれ程なのか、先刻の氷の魔法を何発打てるのか。不確定な要素が多い状況で幻一郎が取った手段は、まずは文字通りに門でゴブリンを抑える為の壁を作る事だった。


 「逃げられなければあとは少しずつでも削っていけるでしょう。どれくらい保つか分かんないから、兵衛さんとハットリの活躍に期待して粘りましょうか!」


 ぱんぱんっと軽く両手で頬を張り気合いを入れ、チラホラと逃げ出してくるゴブリンに狙いを定めて氷を放つ。


 一方、山門を駆け抜けて内部へと突入した兵衛。ハットリの侵入を既に気取られているのだから今更隠れ潜んで動く意味もないと堂々と声を上げてハットリを探し回る。


 「ハットリ!いたら返事をしろ!加勢に来たぞ!!」


 鍔に指をかけ、いつでも鯉口を切れる状態で足早に庭を進めば、声に気付いたゴブリン数匹が屋内から現れて兵衛に殺到する。


 はっと気合いを吐いて抜き打ちで先頭の1匹の胴を薙ぎ、さらに踏み込んで手首を返し2匹目を袈裟懸けに薙ぐ。そのまま柄頭に左手を添えて、下段の構えから立て続けに後に続く3匹のゴブリンの肩口を打ち据えて振り向き、正眼に構えたまま残心。


 倒れた5匹が黒い靄となって消えるのを確認すると、土足で屋内へと立ち入ることに少々の躊躇いを覚えつつも、今は非常時と自分に言い聞かせて廊下へと上がり屋内へと立ち入る。


 どこから湧き出るのか、わらわらと殺到するゴブリンに囲まれぬようにと時には壁を背にし、時には曲がり角を利用し、60センチほどと背が低い相手にやりにくさを覚えながらも深く腰を落として立ち回る兵衛。手応えに違和感を覚えながらも、奥へ奥へと進んでいく。


 この渡り廊下を越えた先に本堂というところでさらに5匹のゴブリン。その内の1匹は他に比べ頭1つ大きく、どこから手に入れたのか小太刀を手にしている。

 とはいえ所詮はゴブリン、特に構えをとる訳でもなく小太刀を振りかぶって他のゴブリンと共にまっすぐに駆け寄ってくるだけなのだが。


 一気にカタをつけようと刀を脇に構え、一足で切り抜けようと強く足を踏む兵衛だったが、老朽化した床がその勢いに耐え切れず床板を踏み抜いてしまう。


 一瞬の虚をつきゴブリンが振り下ろす小太刀を、崩れた体勢でどうにか受け止めるも、続く他のゴブリンに囲まれてはどうしようもない。

 

向かってくるゴブリンの攻撃に備えどうにか身を構えた瞬間、複数のクナイが詰め寄るゴブリンの顔に突き刺さる。小太刀を持ったゴブリンの脳天にも深々とクナイが突き刺さり、その場にいた5匹が黒い靄となって消え失せる。


 「兵衛殿、浮かれすぎでござるよ。実戦はノンフィクション、時代劇のチャンバラのようにはいかんでござる」


 スッと天井から姿を現したハットリに窮地を救われ、どうにか沈んだ床から足を引き抜く。


 「分かってはいたつもりだったんだがな。いざ初めて刀を振るうとなって浮き足だっていたらしい」


 右手にあった刀を一度鞘へと納め、苦笑いでこれに応える。


 「ところでハットリ、敵の陣容は?」


この奥の本堂に一際大きいのが1匹、先程の小太刀を持ったのと同じ大きさのがもう1匹、その他に最初に見た普通のゴブリンが方々に合わせて35でござる」


 「ここに来るまでに普通のゴブリンを15匹片付けてきた。ハットリは?」


 「こちらは逃げ回りながら6匹ほど始末しているでござる」


 「今のも合わせて26か。幻一郎が相手の数を知りたいと言っていてな。一度そちらへ合流しよう」


 「心得たでござる」


 ゴブリンのリーダー格と思われる相手がいる本堂までもう一息という所までたどり着いたが、幻一郎と一旦合流する事を選び、渡り廊下から地面へと降り山門へと戻っていく。

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