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十四話 誤算

遅くなってすみません

森に着くとすぐにゴブリンを見つけることができた。緑色の肌をした身長130cm程の醜悪な人型の魔物が十数匹程まとまっていた。

流石に十数匹纏めて相手するのはめんどくさかったので遠くからファイアボールを放ち、着弾を確認すると真っ直ぐ突っ込んで十匹程切り捨てるとそのまま蝙蝠化して離脱した。

ゴブリンは何が起きたのか理解出来ていないようだったが、一瞬で仲間の大半がやられたのを見て逃げていった。

ゴブリンはバカで臆病なため最初に自分より遥かに強い者に勝負を挑み、仲間の大半を殺されると途端に逃げ出していく。

本来なら放置していても良いのだが、今回はあいつらの巣を調べる必要があるため急いで倒したゴブリンの討伐証明部位である右耳を切り落として回収し、逃げたゴブリン達の後を追った。

しばらくするとボロボロの柵のようなものが見えてきた。その内側にはカビが生えていそうな木と腐っていそうな藁で作ったボロボロの建物で構成された集落があった。

蝙蝠化してさらにゴブリンの後を尾けると、ボロボロの建物の中で一際大きい建物の中に入っていった。

ドアの前に立っている見張りらしきゴブリンの目をかいくぐってドアを開けて中に入るのはキツそうなので先に巣を調査することにした。

辺りを飛び回っているとさっきの建物ほど大きくはないが大きめのサイズで前に見張りが立ってる建物を見つけた。こっちは窓から入れそうだったので中に入ってみるとそこには怯えた様子の少女がいた。赤髪の気の強そうな少女だ。おそらくこの集落に住んでいた少女が、母胎として捕まえられているのだろう。

どうやらまだ手は出されていないようだが時間の問題だろう。急いで逃がさなければならない。

どうやって逃がそうか……ひとまず見張りを処分しよう。

外に出て屋根の上へ飛び、人へ戻るとそのまま飛び降りてゴブリンの片割れを頭から真っ二つにし、そのまま返す刀でもう片方のゴブリンも真っ二つにした。

ゴブリンは声を上げる間もなく死んだ。

僕は扉を開け、驚いている少女に言った。


「今すぐ逃げるよ。さあ立って。他のゴブリンが来る前に」


すると少女が言った


「あ、あんたは誰だよ。私を助けてくれるのか?」


「僕は冒険者のカケル。君は今からモトヤマまで送るよ」


「……分かった。どうせここにいてもゴブリンどもに孕まされるだけだ。あんたを信用するよ」


「ありがとう。それじゃあ立って。もしかしたらゴブリン達が来るかもしれない」


僕がそう言うと少女は黙って立ち上がりそのまま扉から外に出た。

しばらく走っていると柵が見えてきた。

少女を柵から外に出し自分も乗り越えようとすると突如頭の中に警笛が頭に鳴り響いた。『危険察知』スキルの効果である。

咄嗟に後ろを向いて結界を張った。

そこに人の胴体程もある太い棍棒が叩きつけられた。

それを叩きつけたのは身長三、四m程のゴブリンだった。


「ゴブリンキング!?なんでこんなとこに!?」


普通ゴブリンの上から二つ目の進化であるゴブリンキングがこの程度の集落にいるはずがない。本来ならもっと大きな、せめて町程度の大きさの群れでなければいないはずの魔物だ。

しかもゴブリンキングがいるということは……

横からキング程ではないが大きなゴブリンがやってきた。


「やっぱりジェネラルもいるか!」


「おいあんた!私はどうすればいいんだ!?」


「こいつらを振り切るのは無理だ!僕が押さえとくから今のうちに街に戻って助けを呼んできてくれ!真っ直ぐ走れば街に着けるはずだから!」


「分かった!頑張って持ち堪えてくれよ!」


そう言うと少女は走っていった。

そしてゴブリンキングが


「グギャ!グギギガア!」


と叫ぶとゴブリンジェネラルが横を走り抜けようとしたので日蝕を抜きつつ思いっきり振ってぶつけると棍棒は切れたが体の方は切れなかった。硬度がおかしいのだ。


「チ!硬すぎる!」


すると


『おい小僧!やっと夜化の効果が分かったぞ!効果は「自分の周囲を一時的に夜にする」だ!ただし消費魔力が大きい!すぐに決着をつけなければ死ぬのはお前だぞ!』


「分かった!ありがとう!」


僕は即座に『夜化』を発動する。

すると周りが暗くなり空には星が瞬き満月が浮かんでいた。

体に力が漲ってきてステータスが元に戻る感覚があった。そして同時に魔力が一気に抜けていく感覚があった。そして日蝕に溶岩属性の魔力を纏わせる。魔力消費がかなり大きいため今の夜化を発動した状態だと三分ほどしか持たないだろう。しかしその分威力も高い。

そして足に魔力を集中的に流して身体強化を施す。

そして強く踏み込みジェネラルに襲いかかる。思いっ切り刀を振り下ろすとジェネラルが腕で防御した。その腕に傷が付くがそれだけだ。

リッチの時は核が丸見えだったからある意味簡単だった。だがこいつは違う。硬い外皮と強い力を持ったBランクモンスターである。因みにキングはジェネラルの1.5倍の能力値を持つAランクモンスターだ。

間違っても僕に勝てる相手ではない。例え夜化と溶岩属性を使っていたとしても時間を稼ぐので精一杯だ。もしこのどちらかでも使っていなければ時間すら稼げないだろう。ジェネラルの攻撃を日蝕で防ぎジェネラルの周りを身体強化で飛び回り時々魔法を放ち日蝕で切り付ける。

ジェネラルも傷が増えてくるが僕の魔力と体力も残り少ない。どうやら救援は間に合わなさそうだ。なので最後の悪足掻きとして残った魔力を全て注ぎ込み巨大になったマグマボールをキングに向かって放つ。

しかし、ジェネラルが自ら盾となり威力が半分程しか伝わらなかった。そしてそれでもジェネラルは少し血が出ている程度。キングに至っては軽い火傷程度しかしていない。

大して僕は魔力は枯渇体力も辛うじて意識を保てる程度。もちろん夜化も解除されステータスは1割になっている。


(ここまでか……リッチ!)


『なんだ小僧!謝罪とかなら聞かないからな!』


(お前本体が日蝕なんだろ!ここに突き刺しとけば意識保てるか!?)


『無理だ!この刀自体がお前が生きていないと存在を保てない!というかなんで最後あんな無駄な攻撃をしたんだ!その魔力でダンジョンに転移すれば良かっただろうが!』


(あー……悪い、思いつかなかった)


『……こんのバカがぁ!』


因みにこのやり取りの間何故かキングやジェネラルは攻撃してこなかった。


(なんであいつら攻撃してこないんだ?チャンスだろうに)


『俺が無理やりお前の思考速度を加速させてる。本来なら負担がでかいからするべきじゃないんだがな。今のうちに打開策を考えるぞ』


(……いや、その必要は無さそうだ)


背後からとてつもなく強い気配がすごいスピードで向かってきているのがわかる。

思考加速状態の今でも動いているのが分かるほどのスピードだ。多分だが救援の冒険者だろう。


「生きてるか!?」


おそらくリッチが思考加速を解除したのだろう。ジェネラルやキングが動き出すと同時に後ろから若い男性の声が聞こえてくる。


「飛斬!」


男性が剣術スキルの基礎技の一つである斬撃を飛ばす技を発動させる。


僕に向かって拳を振り下ろそうとしていたジェネラルの体が斜めに切断される。

ズズーン

と音を立ててジェネラルの体が倒れる。

続いて男性はブツブツと何かを言いつつキングに向かって襲いかかる。


「ファイアウェーブ!」


キングの顔面に向けて男性は魔法を放った。そう、ブツブツ言っていたのは魔法の詠唱をしていたのだ!

本来なら詠唱中は魔法式を頭の中で組上げ、発動するために極度の集中を要する。その間にあんな高速で動き回るなんて信じられなかった。

キングは顔面に向けて襲い来る炎の波を鬱陶しそうに払った。あの波はキングに多少のダメージしか与えていない。しかし、それで問題なかった。なぜなら男性の目的はただの目くらましだったのだから。

男性はファイアウェーブを放った直後になんと空を蹴ってさらに高く上昇し、そこで技の準備をしていたのだ。


「重厚斬!」


剣の重量と丈夫さを上昇させ、一撃の威力を高める技を発動し、キングに振り下ろす。


「グギャアァァァ!」


キングは断末魔の悲鳴を上げながら真っ二つになった。


そして男性はそのまま剣を鞘に仕舞うとこちらに走ってきた。


「大丈夫か!」


それを見て僕は、安堵したからか自分の意識が遠のいていくのが分かった。

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