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十二話 登録完了

どうやら先に筆記試験をするようで、フェルさんが向かったのは裏にあるという訓練場ではなく会議室のような場所だった。というか、そもそも知識があることがGランクスタートの条件で、戦闘技術があることがFランクスタートの条件であることを考えれば、先に筆記試験をするのはある意味当然と言えた。


「ここで少々お待ちください。筆記試験の用紙を取りに行って来ます」


フェルさんはそういうと、ドアから出ていった。僕はフェルさんが戻ってくるまで暇なのでリッチに色々聞いてみることにした。


(なーリッチ。僕のステータスに???ってところがあるんだけどなんでか知らない?)


『おそらくステータスが足りてないんだろう。そのスキルを扱うのに足るステータスをしていなければそのスキルは封印されて表示されない』


(そうか、頑張らないとな。じゃあこの吸血鬼の体に転生させてもらった時何故かユニークスキルが増えていたんだよ。なんでだと思う?)


彼には既に僕の事情はあらかた話してある。これから常に一緒に いるため、隠しておくのは不可能と判断したためだ。


『ふむ……おそらくお前達の世界が上位世界だったんじゃないか?それでもともと持ってた才能が転生の際魔神に調整されてお前に合ったんだろう。それでユニークスキルとして開花したってとこだな』


(なるほど…吸血鬼族の進化条件ってわかるか?)


『いや、分からん。というか吸血鬼族に限らず進化条件はその個体によって違う。だから傾向的なものは分かるがそのものズバリはわからん』


(それで構わないから教えてくれ)


『まあ待て。ちょうどあのフェルとか言うお嬢さんも戻ってきたしそれが終わってから教えてやる』


「お待たせしました。おや?勉強しておかなくていいんですか?こう言っては何ですが、この試験はなかなか難しいですよ?」


「大丈夫です。結構自信あるので」


「そうですか。では説明します。制限時間は次の鐘が鳴るまで、カンニングペーパー等のズルが判明した際には不合格とします。では始めて下さい」


因みにこの世界では一時間毎に一つ鐘がなり、一日は24時間ではなく30時間。そして一ヶ月30日で一年が360日。春が1、2、3で夏が4、5、6、秋が7、8、9で冬が10、11、12といった感じだ。今は前に鐘がなって多分20分くらいだからおよそ40分あることになる。

それだけ時間があって試験の紙は半ぴらのプリントくらいのサイズなのだ。余裕である。

僕は城で役立たずとして訓練に参加できなかった分の時間をずっと城の図書室で知識を蓄えることに使っていた。そのためこの程度なら分かるのである。最後の手段として考えていたリッチへの質問を使うことなく全てを埋める事が出来た。


「終わりました。」


「もうですか?まだ時間はあるので見直しをする事をオススメしますよ?」


「大丈夫です。もう十分見直しました。」


「………そうですか。まあそう言うならいいです。では採点するので少々お待ちください。」


フェルさんは用紙を回収すると部屋から出ていった。なのでさっきの続きをリッチに聞くことにした。


(で?吸血鬼族の進化条件の傾向って?)


『うむ。それはじゃな、【血に関することであることが多い】というものだ。例えば血液操作の獲得。例えば血液の全損。例えば圧倒的強者の血を吸血する。こういったふうな条件であることが多い。まああくまで傾向というだけで全く関係ない場合もある。しかし一度進化すれば進化条件は変更される。だから真祖以上の吸血鬼が極端に少ないんだ。進化出来るということはつまりたまたま進化条件を満たしており、なおかつレベルがカンストしているということになるからな。そんなやつはそうはいない』


(そうかーめんどくさいな、進化条件探すの。)


『まあ今は考えなくていいだろ。どうせあと5レベル上げる必要があるんじゃからゆっくり考えれば良いと思うぞ』


(確かにそうだな。なあリッチ。少しだけ頼みたいことがあるんだが)


『ん?なんだ?』


(悪いんだけどさ、日蝕の能力詳しく調べといてくれないか?名前だけなら分かったんだが、詳しくは分からなかった。ヤバい能力じゃないとは限らないから発動させる訳にも行かないんだ)


『それは構わんが…おそらくそれで分からなかったのは魔力操作が下手だったからじゃないか?それで完全に魔眼を発動できなかった。解決するには魔力操作スキルを習得することをオススメする』


(そうなのか…じゃあ習得法を教えてくれないか?)


『簡単だ。スキルを習得するまでとにかく魔力を動かしまくればいい。魔力を感じることは出来るだろ?魔法は使ってたわけだし』


(ああ魔法使った時に体の中でうごいてるあの温かいやつ?なんかお腹の下の……………丹田だっけ?あのあたりに溜まってる。)


『そうそう、それそれ。それをとにかく動かしまくれ。そしたらそのうちスキルが手に入る』


(分かった、やってみるよ。)


そしてそのまま集中して動かそうとしてみると、最初は水を掴もうとしてるみたいでうまく行かなかったけど、魔法を使うときのイメージでやればすぐに少しは動かせるようになった。そしてそれに気を良くし、更に集中して頑張っていると


希少レアスキル魔力操作を獲得しました】


希少レアスキル魔力感知を獲得しました】


どうやら2つの新スキルを手に入れたらしい。そのスキルの効果を確かめようとした時。


ガチャ


「お待たせして申し訳ありませんでした。採点が終わったので合格発表をさせていただきます。」


「あ、はいお願いします。」


「カケルさんは20問中正解20問、不正解0問で満点、文句なしの合格です」


「よっしゃー!!!」


「本来15問ほど正解すれば合格なのですが、まさかの満点とは…一人前なら常識とはいえ、新人でこれは何十年ぶりかの快挙ですよ。誇ってよろしいかと」


「ありがとうございます!ところで実技試験の方は誰が試験官なんですか?まさかそれもフェルさんとか……?」


「そんなわけないじゃないですか。もし私が相手ならほとんどの人が合格してしまいますよ。そちらはそちらで別の方がいます。」


「はは…ですよねー」


「では移動します。ついてきてください。」


そう言うとフェルさんは廊下を歩き出した。そのフェルさんを見失わないように気をつけながら、こっそり新スキルの確認をした。


魔力操作

魔力を操れる。魔法を使うときに発動が早く、威力が高くなる。体の何処かの部位に魔力を流すとその部位が強化される。レベルが上がるとより自由自在に操れるようになる。


魔力感知

魔力を感知できる。魔眼に魔力視というものがあるが、この能力は魔力視とは違い大まかな魔力の高まりや動きしか感知できない代わりに視界に入っていない場所でも感知することができる。レベルが上がるとよりはっきりと感知できるようになる。


両方そこそこ使えるスキルだった。因みに魔力操作がアクティブスキルで魔力感知がパッシブスキルだった。と、ちょうどよく着いたみたいで、大体東京ドームの半分くらいのサイズの訓練所(とか言っても東京ドームの実物見たことないけど)の真ん中に、ものすごくムキムキでゴツいスキンヘッドのおっさんが立っていた。


「さあ着きましたよ。あの真ん中にいるゴツいのが試験官です。ぶちのめしてくれても構いません。というかむしろぶちのめしてください」


「は、はぁ…」


あの人なにかしたのかな?


「よう!お前が新入りか!俺はギル…ゲフンゲフン、Aランク冒険者のマックスだ!基本的に暇なときはこうして試験官をしている。お前の名前は確かカケルだったな。早速試験を始めるぞ。そこにある模擬専用の武器から好きなのをとってこい」


「は、はい」


僕は言われた通りに訓練所の隅にあった刃の潰してある武器の中から刀を探した。というかこれ金属製だからハンマーとかなにも危険度変わらないよな…などと考えているうちに、どう見ても他と比べて使用回数が少ないと思われる刀を見つけた。なにせ他のは傷などでぼろぼろな中、一本だけピカピカなのだ。とても目立つ。とりあえずその刀を持ってマックスさんのところに戻った。


「おうカケル。お前本当にそれ使えるのか?なかなか扱い難しいぞ。それ」


マックスさんがそう言ってきたので僕は


「大丈夫ですよ。僕の武器も………この通り刀ですし」


と言いながら左の手のひらから右手で日蝕を抜いた。


「なっ!?そ、そうかそれなら安心だが……それ今どこから出した?っておい!何やってんだ!」


証明はできたので左手の掌から体内に日蝕を戻しているとマックスさんが慌てた様子で止めてきた。まあそりゃそうだろう。なんせ傍から見たら自分の掌にブスブスと深く刀を刺し込んでいるようにしか見えない訳だし。というわけで僕は血滅を戻し終えると手のひらを見せながら言った、


「大丈夫ですよ。今の刀は僕の体の一部のようなもので僕を傷つけることは出来ないし、僕の体内に自由に出し入れ可能なんですよ。」


「そ、そうなのか。便利なんだな…でも次からは何も説明なしにそういう事をするのはやめておいたほうがいい。心臓に悪い。」


「分かりました。すいません」


どうやら思っていたより驚かせてしまったらしい。


「では仕切り直して。両者構えて…始め!」


フェルさんの宣言とともに僕は真っ直ぐ飛び出した。


「思い切りの良さは認めるが……甘い」


突っ込んでいった僕をマックスさんはあっさりと避けてその背中に向かって勢いよく模擬専用の大剣を叩きつけようとした。


ガキン!


「ほう…今のを防げるのか。魔法も使えるというのは本当らしいな。」


大剣は僕の背中の少し上で何かに防がれていた。そう、僕は背中の上に結界を張ったのだ。

リッチが僕と戦ったときにしていた光の障壁と似ているが、あの時リッチが張っていたのはスキルによるもので、これは魔法によるものという違いがある。

この結界はまだそこまでの強度は無いが、一瞬防ぐくらいならできる。

そしてその一瞬の間で僕は蝙蝠化を使い上昇し、人に戻って一気に上から叩きつけた。リッチを倒したときに使った戦法だ。ただしマックスさんは寸前で気付き大剣でガードしてきた。なので少しズルいが錬成で大剣を真っ二つにした。

そして無防備になったマックスさんの頭に模擬戦用の刀を叩きつけた。バコンと鈍い音がなった


「そこまで!勝者カケル!」


「よし!勝った!」


「やるなあお前。あの最後の錬成はちょっと狡かったけどな」


バレてた!?


「もしかして不合格、ですか?」


「いやいや。どんな手段を取ったにせよ勝ったんだから合格だよ。というか勝ったやつを不合格とかしないだろ、普通。他の奴らは勝たなくても俺に認めさせたら合格なんだぞ?あ、ちなみに俺は本気出してなかっただけだからな?そこんとこ理解しとけよ」


「そうなんですか?じゃあわざわざズルしてまで勝たなくても良かったかな……」


それで評価下がっても嫌だしね。


「まあ必死に勝ちに言ったってことでプラスにしといてやるよ。ほら早く行ってカード貰ってこい」


「はーい」


「こちらです。ついてきてください。」


僕はフェルさんの後をついていき、最初に訓練場に来たときとは別の道を通ってギルドの受付に戻った。


「では登録をしてきますので少々お待ちください。」


そう言うとフェルさんは受付の奥へと消えていった。

待っている間非常に暇なので周りを見て観察していると、なぜだか魔法使いの人が少ないような気がした。


(なあなんで魔法使いの人が少ないんだ?)


『別に少ない訳では無いぞ。使い物になるまで時間がかかるからよほどベテランでも無ければ魔法をメインに使うものがいないだけだ』


(へーそうなのか)


結構意外な話だ。なにせ魔法は使い物になれば強いからだ。まあでも魔法をメインに使えるくらいになるまで時間をかけたら、その間に使っていた武器等の方が強くなるのは当然かもしれない。

その後数分でフェルさんが戻ってきた。


「お待たせしました。こちらがランクFの冒険者カードです。紛失・破損した場合銅貨1枚で再発行できますが、短期間に何度も再発行する場合必要金額が上がりますのでご注意を。なにか質問はありますか?」


フェルさんから黃色のカードを受け取る。何というか顔写真のない免許証みたいな感じだ。大きさとかも丁度それくらいだし。書いてあるのは名前、種族、年齢、得意な武器、冒険者ランク、そして無記入ではあるが、所属パーティー、最後に依頼を受けたのはいつか、最後にどこで依頼を受けたか、その依頼はどんな依頼だったか、そして名前の上に異名欄があり、裏は何も書いていなかった。


「この冒険者カードの色の意味とどんな機能があるのかを教えてもらってもいいですか?」


「分かりました。この色は冒険者ランクを表す色でHが灰色、Gが白色、Fが黃色、Eが青色、Dが赤色、Cが銅色、Bが銀色、Aが金色、Sが黒色となっています。これにちなんで金ランクや銀ランクと呼ばれることもあります。冒険者カードの機能は街の門にある魔道具にかざすと身分証明書代わりに使える、ギルドの魔道具にかざすと倒したモンスター一覧が見れる、などがあります。」


「EXランクって色はないんですか?」


「EXランクは個人の自由です。そもそもあれは世界を救った功績に見合う報酬が思いつかなかったので特例的に作られたランクですので」


「なるほど。分かりました。依頼を受けるにはどうすればいいですか?」


「あちらの依頼板から依頼の書いてある紙をとってきてこちらに提出してください。あの紙に貼ってある板と依頼板は初代勇者様の発明した『デンジシャク』という互いに引きつけ合ったり弾きあったりする魔道具でできているためかんたんに外せます。ただし、あの紙は恒常依頼の場合また貼って再利用するので破いたりしないでください。もし紙を破ったら罰金として銅貨3枚請求いたします。」


初代勇者何やってんだ。便利だからいいけどさ。


「分かりました。じゃあ行ってきます。」


そして僕は入って来たときはたくさん冒険者がいたが今は空いている板の前に行き、依頼を選んだ。


ゴブリンの討伐と巣の調査(Fランク)

東の森に大量にゴブリンが湧いている。恐らく巣があると思われるため、ゴブリン十匹の討伐と巣の調査を頼む。

報酬 銅貨10枚

依頼達成条件 ゴブリン10匹の討伐証明部位と巣の情報の提出。


これがいいかな。ちょうどゴブリンなら簡単だろうし、巣の場所も上空からなら分かるだろうし。蝙蝠に変身しておけば巣の中を調査してもゴブリンには見つかり辛いだろう。僕はそう判断し 依頼を剥がしてフェルさんのところに持って行った。


「すいません。この依頼を受けたいんですけど、手続きしてもらってもいいですか?」


「かしこまりました。依頼書とカードを渡してください。」


「どうぞ」


「確かに。では少しお待ちください。」


そう言うとフェルさんは受付のカウンターの横にある機械に冒険者カードをセットして何やら作業を始めた。


「終わりました。それではお気をつけて。」


1、2分で手続きは終わり、フェルさんから冒険者カードを受け取ると僕は軽く会釈して冒険者ギルドの外に出た。

もうすっかり夜は明け明るくなってしまっていた。

僕はそのままジョブにつくために教会をめざした。

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