第5話 ユイハの頼みごと
「ありがとうござっしたー」
アルバイトっぽい人が礼を言った。
購入したのは、4000リタの安い剣と1万リタする魔法の杖だった。
剣はほとんど即決だったが、杖には困った。
何せ、自分の属性が分からないのだ。
個人が持っている魔力の属性を確認しないと杖選びには悩む。
杖の属性も自分の属性と同じじゃなければならないのだ。
その他のステータス配慮で自分に合う杖を選び出さなければならないー
そして、選んだのは無属性の杖。杖にしては安い1万リタの杖になったのだ。
この、無属性の杖は完全初心者用でどんな属性にもリンクできるという素晴らしい性能を持っていた。
しかし、攻撃力が通常の半分しか出ないというデメリットもあった。
まぁまだレベル1の俺には充分だった。
「早速、討伐に行っちゃいますか?」
と、わくわくした表情を見せてくるユイハ。
「そうだな。もうそろそろ行くか!」
店の前に置き去りにした、セカンドを連れて再び草原へと足を運んだ。
「...って、ここ最初に俺が飛ばされた所じゃん」
「え?飛ばされた?」
「いやいや、何でもないよ」
誤解を招かないために、ユイハには別の世界から来たことを黙っておこう。
歩くこと何分か。
歩いたところに小さな森があった。
ユイハの話によると、ここに討伐して欲しいモンスターがいるらしい。
そして、そのモンスターは俺達が森に入るなり、すぐに顔を見せた。
大型の狼っぽいやつだった。
ゲームだと、初級ダンジョンのボス辺りか。
俺は構えた。
大丈夫。討伐は初めてだが武器屋で剣を振り回すくらいの練習もした。
気を落ち着かせる。
敵の意識が俺に向けられる。
来た。
俺は、構えてた剣をしっかり握り敵モンスターの頭部へと直撃しようとしたがそんなのはたやすいと、避けられてしまう。
ユイハが心配そうな目で見てくる。
一方セカンドは、熟睡。
応援してくれたって良いじゃないか
剣を振り回すも、敵には命中しない。
敵も俺に襲いかかってくる
噛まれた。
腕を噛まれてしまった。血がどくどくと出てくるのを体から感じる。
まずい。戦闘慣れしていない、ましてや戦闘をしたことがない俺にとってはかなりの重症だ。
その時だった。
「ヒール!」
ユイハが叫んだ。
叫んだ瞬間、俺の傷が癒えて行くのが分かった。
体力もないかなり回復した。
よし、再びやる気を取り戻しモンスターに挑む。
しかし、強くなったわけではない。
また体力が無くなるのか。
また死ぬのか。
いや死にたくない。
そんな思いがあった。
そしてどんどん体に強いものが流れ込んでくるのがわかった。
「ファイヤー・ボール‼︎」
無意識に叫んだその言葉に杖が反応を示した。
その途端、杖から炎の球が敵モンスターに直撃。
見事に焼かれ、黒カスになっていた。
「やった..?」
「カイトくん!すごいよ!いきなり、黒魔法を使えるなんて本当にカイトくんはすごいね!」
「あ..あぁ。ユイハも回復魔法ありがとうな。てか、ユイハも魔法は使えたのか」
「うん。たいていの白魔法なら使えるよ!さて、討伐もできたことだし街に戻ろうか。」
「あぁ、そうだな。ちょっと疲れたし」
と、セカンドとユイハと俺で街に戻った。
俺の初討伐仕事は無事に成功したのだった。
「その翌日はもっと大変な事になるかもしれないです。」
宿で休んでいると、セカンドが話し始めた。
段々翻訳メガネをかけなくてもコイツの言いたいことはわかってきたのだ。
「大変な事?」
「はい。森から誰か私達のことを見てました。もしかしたら、ユイハさんを狙ってたり...?」