電車の中で。
「ふーん。 幼馴染ねぇ……」
学校の教室。いつもの様にナミに話した。
「仲良し幼馴染みだってさ。 大学も同じ所受けるみたい」
「へー……」
ポッキーをパキパキ食べながら、ナミが私の顔を見た。
「単なる幼馴染みじゃないんじゃない? ていうか、 それが猛烈アタッカーかもね。 友達情報だと、 その子も同じ所受けるって言う話だよ?」
「え……? 何それ。 やだ」
「まぁハッキリ分からないけど? とにかくお宅の彼氏も罪な人よね。 幼馴染みを大切にするんだもの。 普通仲良く電車乗らないでしょ」
ナミの言葉にあの光景が蘇る。
「不安にさせないって言ってくれたよ」
「何とでも言えるよね……」
「う……」
やだやだ。そんなのやだ。
良く分からないけど、仲良くしないで欲しい。
放課後、またもや重たい気持ちを引き摺り駅へと向かう。
電車に乗り、椅子に座った。
「樹! 待ってよっ」
「電車行っちゃうぞ!」
明らかに聞き覚えのある名前と声が耳に響いた。
え? 今何と?
電車のドアが閉まる寸前。
手を繋いだ二人が滑り込む様に乗って来た。
私の目の前に……。
ガタンっと揺れ、走り出す電車。
「水元君……?」
「あ……」
パッと繋いだ手を離した。
これはどういう事でしょう?
「いおり……」
呼ばれても返事はできない。
手を繋ぎ電車に乗って来たのは、水元君とこないだの子……?
私はさっと席を立ち、揺れる電車の中、別の車両へと移動しようと歩き出した。
「樹? どしたの?」
後ろで女の子の声がする。
水元君は黙ったまま……。 追いかけないんだ。
ふーん……。
もういいや。
今は何も聞きたくない。言い訳言うのかな?
私は違う車両の椅子に座り、何を言うのか考えた。
いや、何も言わないかも知れない……。
何か疲れた?
窓の外を駅に着くまでじっと眺めた。