プロローグ①
はじまりはじまり
森の中にある美しい小さな城下町。
二つの塔を持つ城は薄い水色で、日の光を受けてキラキラと、輝いている。
さほど人口の多くないこのアケルの国は堅実で陽気な住人が多い。
街には屋台が立ち並び威勢のいい声が響き、子供達が細い路地を駆け巡る。
道は街路樹や日陰用の木のある場所以外は石畳やタイルに覆い隠されている。
屋台の天幕は彩り豊かで美しく街を飾る。
住人の自慢は広場。
美しいタイルで大地に描かれた芸術。人が憩えるようにと中央には池が配置されている。
淵にはベンチと落ちる者がいないようにと柵で飾られている。
木陰のベンチではゲームに興じる老人たちがいて和やかだ。
広場に面した場所に立つ建物は二階建てまでという高さ制限があるおかげか、柔らかな調和がある。
屋台、少し視線をあげれば花で飾られた窓。
はなやかな街だ。
華やかで和やか。そして人口は多くなくとも活気に溢れている。
それなのに。
眼前に広がる風景はいつもとあまりにも異なったものだった。
崩壊した街の広場。
ボロボロになった屋台の前で肩を落とす店主らしい中年男性。
窓辺に飾られた花が無残に落ちていたり、壁に大きなヒビを描いていたりする。
地面を這いずる傷だらけの男達。
怯えて泣き喚く子供達。
広場中をきっちり覆っていた暖色のタイルが部分崩壊し、大地がむき出しになっている。
その惨状に声も出ないアケル王国警備兵達。
どうしてこうなった?!
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