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03

「本日はよろしくお願いします」

「ああ」


 真新しい白地の名刺を手渡し、若手記者は本日の密着対象である一行に向けて簡単な挨拶をする。


 冒険者互助組合、いわゆるギルドを介して彼らに『最近活躍めざましい新米パーティーにぜひ同行をさせてほしい』と取材交渉をお願いしたのが昨日のこと。


 最初は渋る様子を見せていたが、こちらが何度も頭を下げて頼み込むと『先に受けていた依頼と平行してもいいのなら』と言質を得ることに成功した。

 そのため、今朝になってから彼らの出立前に合流したというわけだ。


「ついてくるのは構わないが、街を出てからは常に俺達の側から離れないように頼む。それから有事の際には、自分の身を守るのを最優先にしてほしい。もし怪我でもさせようものなら、あんたの雇い主と仲介してくれたギルドに申し訳が立たない」


 台詞を聞く限りではぶっきらぼうに聞こえるが、その実こちらを気遣う男の優しさが垣間見える。

 本来ならこっちが無理を言ってお願いをした立場なのだから向こうが安全面を考慮する必要はない。

 なのに彼は取材を受けた責任があるからとして、首を頑として縦には振らなかった。


 なんと実直な男なのだろう――それが若手記者が草むしり冒険者ことマストラ・オルレウスに抱いた感想だった。

 ただ、昨日初めて彼と対面した時にはいたく困惑したものだ。


 しかしそれも無理らしからぬことである。

 なにせ、草むしり冒険者という言葉のイメージがもたらす人物像とはひどくかけ離れた風貌を有していたのだから。


 まずなんといってもとにかくデカい。

 百八十メートルを優に超えるその体は筋肉が引き締まっており、浅黒く日に焼けた肌と鋭い目つきのせいもあって歴戦の手練を想起させる。


 腰ベルトに差した軍手と草刈り用(と思われる)の鎌がなければ、誰も彼を噂の草むしり冒険者だと分からないだろう。

 むしろ抜き身のまま背負ったバスタードソードの方が浮いて見えるほどだ。


 せっかく立派な武器を所持しているのにどうして草むしりにばかり精を出していたのか理由は定かでないが、これまでその屈強な体格が宝の持ち腐れであったのは間違いない。


 だからモンスター討伐の依頼にもようやっと手を出すようになった今、恵まれた肉体のやっと本来の使いどころを見つけたと言えるだろう。

 やはり一緒にパーティーを組んだ仲間達の影響もあるのだろうか。


 視線を横にずらす。

 マストラのパーティーは彼を含めた四人の冒険者で構成されていた。

 しかも驚くことに彼以外の冒険者は(みな)見目麗しい女性で、全員が全員ギルド内で爪弾きにされていたようにはとても思えない。

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 こちらの完結済みスカッとざまぁな作品『パーティーメンバーを寝取られたおっさん冒険者は自分に惚れている年下美少女と新たにやり直す〜NTR男が今更かつての仲間を返したいと泣きついてきてももう遅い〜』←このリンクから飛べますので是非応援よろしくお願いいたします。
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