4歩先の今
どこかに捨ててしまった自分らしさ
過去ばかりを巡っていたら
僕の影は離れていって
4歩ぶん先の未来で呼びかけてくる
「こっちへおいで」
なぜか僕は素直になれて
1歩踏みだすと
冬から春へ移り変わる
青空に咲く色とりどりの花
暖かい季節を歌う小鳥たちが雪溶けを誘って
大切なものが少しずつ見えてきた
僕はまだわからない何かを求め
もう1歩踏みだした そこは
また季節を変え憧れの夏にした
強い陽射しは冷たさをなくし
大切なものを照らして見せてくれた
けれども
雪溶けの水に
掴みかけたものが未来へと流されてしまう
僕はもう1歩踏みだそうとしても
酷暑に気力を奪われ踏みだせない
少しでも身を軽くするため
過去を脱ぎ去ろうとしても
未来の影が小刻みに震えて明滅する
影はこの先の真冬で待ってるから
僕が裸になれば寒いのだろう
暑さと渇きに倒れたぼくは
大地を叩く音に目を覚ました
気がつけば雨に包まれて
僕の体中の渇きは潤っていた
気力はみなぎり
僕はさらに1歩を踏みだせた
夕日のきれいな秋に
大切なものは紅葉の色に染まり
待ってくれていた
僕は確かめるように抱きしめ
「一緒に帰ろう」と呟き
木枯らしの吹くまま
最後の1歩を踏む
辿り着いた冬は未来ではなく
自分らしさのある今だった
取り戻した4歩の遅れ
僕は影を自由自在に動かせるんだ
未来を想う光りがあるから
読んでくださりありがとうございました。