デレヴォーン・ゼロ―ンからの刺客 ~ライオンマン現る~
「ここが組織を抜けたシャーマン博士のラボか」
ラボの入り口を抜けて入って来たのは体だけが人間で、首から上がライオン頭の、ライオン男だ。
ぼくは数週間前の戦闘を思い出す。バブルガールはまだよかった。人間だったから……その点、こいつは何だ? まるっきり人外じゃないか。
「私の名はライオンマン。貴様らには早速だが、死んでもらう」
と、ライオンマンはぼくたちに向け、唐突に言い放った。
「ま、待ってよ!」
「む」
「こうしよう。ぼくたちは紙飛行機を作ってるんだ。紙飛行機の翼の先端にはちょっと曲げる部分があるんだ。こう、上向きに、くいッと角度をつけるんだ。でもひょっとしたら、この曲げる部分の角度はない方が飛ぶかもしれないだろ? それがどっちか確かめようとしてる。そこでどちらがよく飛ぶかを賭けだ。ぼく達が賭けに勝ったら」
ぼくが言うと、ライオンマンは条件を飲んだのか、即答した。
「よし。それで一時的にだが助けてやる。ただ賭けに負けたら、おまえ、どうするんだ?」
戸惑っていると。
金にいがそこでぼくの手を引いて言った。
「武坊、正直に言ってどっちの方が飛ぶと思うんだ?」
「曲げた方が飛ぶと思う……でもわからないよ」
「わからないってのは、どういうことだ」
「前に翼の先端を深く曲げて飛ばしたことがあったんだ。その時は、かなりよく飛んだように思う」
「じゃ決まりじゃないか」
「でもその一投ですぐ屋根の上に乗っかっちゃって、二回目を試せなかった。だから今回は距離をちゃんと測ってみようと思ったんだよ」
「前に投げたのはそれ一回きりか……まぐれ当たりの可能性もあるしな。それに投げ方や風向きがよかったのかもしれない。『翼の先を折った方が飛ぶ』っていう確証みたいなもんはあったのか?」
「鳥の羽だって角度がついてるだろ……と、思う。いや、鳥の羽なんて、ぼくしばらく見たことないから、確かなこと言えないんだけど……理由なんてないよ。ただ曲げてみたらその時はよく飛んだんだ。試したのはそれきり」
「もっと試せよ」
「なんか翼を曲げたら、飛ばないような気がしてさ」
「じゃ飛ばないのか」
「分かんないよ! ただ、その一投は飛んだんだ!」
「つまり、自信はなしか……」
「覚悟は決めたか?」
と、ライオンマンが迫る。
覚悟なんて、ぼくは決まってなかった。金にいが焦った顔でライオンマンを睨む。
けどその時、ラボの自動ドアが開き、博士が中から現れた。
「その勝負、わしが引き受けるぞい」