紙飛行機を飛ばす ~準備①~
「武坊が俺を頼るなんて思ってなかったから嬉しいよ
金にいはそう言いながら手を動かす。使えなくなった箸に塗料でそれぞれ色を塗っているのだ。
ぼくは、というと、喋りながら紙飛行機を折っている。
「それ市販のだろ」
「うん。二宮康明(1926~2023)って人が設計した紙飛行機で、割とどこでも売ってるよ。ぼくは紙飛行機を折るから、金にいはそっちの作業を進めて」
「なあ」
「なに?」
「こーゆーの割と楽しいもんだなあ。小学校の頃も理科の実験の準備するときだけは楽しかった記憶があったけど、大人なってからやってみても割と楽しめるもんだな。この色付きの棒に旗をつけるんだろ? 本格的だな。テレビ番組みたいだ」
「そ。旗にはそれぞれ数字を書くよ。役に立つかもしれないからね」
「塗料は乾くまで時間がかかるぜ」
「じゃ、ひもの方をやって」
金にいはメジャーでビニールひもを一mずつ測ると、その地点にマジックで線を引いていく。
それから、線が何本か溜まったところで、ビニールひもを切り離し、線の上から工作用紙でメートル数を書いた紙をホチキス止めしていった。
「要は、その紙飛行機がどれだけ飛ぶかを測りたい、と。お前は言うんだな」
「そうだね」
「一回測ったら終わりか?」
「ううん。翼の先端にすこし角度をつける部分があるだろ? その角度を調節して何度か試してみるんだ。どう、これ、素晴らしい計画だと思わない?」
「そうさな。思うよ。明日が雨じゃなかったらな。けど、どうしてシャーマン博士に頼まないんだ」
「博士は金にいほど手先が器用じゃないから、こういう作業は向いてないと思ったんだ。それに……博士に頼ってばかりじゃぼくは成長しない」