超新星爆発 ~博士のセンチメンタリズム~
「ちょっと表に出てみようか武夫くん」
ぼくと博士は外に出た。
外に出ると、博士は空を見あげたが、雨が少しばかり降っていて空は曇っていた。星は見えない。
「わしは思うのじゃ、このまま科学が発展していったら人は宇宙にも住むことになるかもしれない。だがそれでいいのだろうか、と」
「どうしてですか?」
「以前読んだ『超新星爆発』の記事を見て――超新星爆発というのが何なのかは後で説明してやろう、知りたければ自分で調べてみてもいい――星とは、人の生き方によく似ていると思ったのじゃ。昔の人はだれしも自分の星を持っているなどと言ったが、さもあらんとわしは思う」
「そうですか」
「人は空を見あげなくなった。スマホの画面を見て、周囲は人工物に囲まれて暮らしている。この上、定めの星まで宇宙ステーションや開発された月面になったら、どうだろう? ちょっと悲しくはないか? まあ、年寄りのセンチメンタリズムじゃ……少なくともわしはそう感じたのじゃよ、武夫くん」
ぼくは空を見た。確かに博士の言う通り、星は見えない。
「『超新星爆発』って何です? どうして人の生き方に似てるんですか、博士?」
「『超新星爆発』は宇宙的事件じゃ。一つの大きな星が壮絶な最期を迎え、新しい星々がそこから生まれる。まるで偉人の生き死にみたいじゃろ?」
「ロマンがありますね」
「うむ。わしもちょっと本を読んだだけだが、思わずそのロマンに浸っていた。超新星は50年に一度ほどの周期で現れるそうじゃが、何千万という星々がある宇宙で、50年に一度というのはやはり大きな事件なのじゃろうナ」