カフェ・ミセラミック
その日のおやつ時、サミーはカフェ・ミセラミックを訪れた。
「ロニさん、こんにちは。この度は、ご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありませんでした。」
サミーはロニが手すきのタイミングを見計らって声をかけた。
「サミー!心配してたんだよ!変な気は使わなくたっていいのさ!そんなことより、本当に大丈夫なのかい?」
ロニは、サミーを見るなり抱きしめ、心配そうに顔を覗き込んだ。サミーはロニの抱擁に驚きつつも嬉しそうに首を縦にふった。
「ノイドさんに助けていただいて、お陰様で無事でした。(夜出歩くのは怖いですけど。)」
「本当に、やったやつは許せないね!!ノイドがサミーが襲われているのに気づいて本当に良かったよ。ノイドもそのあとのことを随分心配しててねぇ。それに、それを聞いたフロートとダミアンまで慌ててサミーの家に行こうとするんだから必死で止めていたのさ。仕事をしていないとサミーが気にするからね。」
けれども、明日の定休日にロニがサミーの家を訪れるつもりだったとロニは告げた。
「ロニさん…。」
サミーの心はじわじわと暖かくなった。
「その…ノイドさんには、助けていただいただけでなく、色々と助言やサポートをいただいて…なんとお礼を言ったら良いのか。…改めて、お礼をしたいのですが、ノイドさんが今度おやすみの日はお分かりですか?」
「サミーからだったらなんだってあの子は喜ぶだろうけど。」
とニヤリとし、少し考えたあと、
「ノイドの予定は今わかんないねぇ。でも、また聞いとくよ!それに、サミー。1週間の休みと言わず、辛かったらしばらく休んだっていいんだよ?」
ロニは、優しくサミーを気遣った。
「ロニさん、ありがとうございます。ですが、私もこちらにこさせていただいている方が、ありがたいですので、また来週からよろしくお願いいたします。」
サミーは、頭を下げながらロニに伝えた。本心である。働かないとお金が入らないし、一人でいるより、働いている方が色々なことを考えなくてすむからと考えたのだ。(帰り道だけが不安だけど、早く歩いたら15分ほどだし、きっと大丈夫…。)そこまで考えると、再びロニに抱きつかれた。
「サミー、わかった。だけど、本当に無理しないでおくれ。サミーのことは娘のように大事に思ってるんだからね。」
ロニの愛情を感じ、サミーは笑顔になってお礼を述べた。するとロニはこう続けたのだ。
「帰りが遅くなる日は、うちから番犬を送るよ。いいね?」
悪いので断ろうと瞬時に思ったが、ロニの気迫に押され、サミーは思わずコクリと頷いた。それを見たロニはにこりと笑い、サミーの頭を撫でたのだった。
「帰りが遅くなったらいけないから今日はもうおかえり?ああ、でも!何か食べられるものを包んでくるから待ってるんだよ。」
そう言い残し、ロニはスタスタ厨房へ歩いて行った。