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レオン・パターソンとの苦い恋

「お、オリバーだ!久しぶりだな。」

「そちらは、最年少のキャンベル嬢だね、こんにちは。」

二人は、オリバーに親しげに話しかけ、サミーにも声をかけてくれた。オリバーは苛立った後嫌そうな顔をして挨拶もそこそこに出て言った。サミーは、こわばった表情をなんとか繕い、

「ヒュージ様、ペリー様御機嫌よう。会議室をお使いになられるのですね。お邪魔致しました。」

と笑顔で簡易な挨拶を返し、そそくさと退出したのだった。



 (今日はあのスコットに、あの後何も言われなかったけど、明日にはまた脅されるでしょうね。…それにしても、レオンがね。私は本当に、愚かだわ。)

 レオン・パターソンはサミーの5歳上の恋人だった。高等学校の学生だったときに、領内のアカデミー在学中のレオンが、学校に後輩指導に来ていた時に知り合ったのだ。当時、過去の揺り戻しで精神的に不安定だったサミーは、身近な頼れる先輩としてレオンによく懐き、またレオンもサミーを可愛がった。仲が良くなるに連れて、家計が火の車のサミーに美味しいものを食べさせようとレオンはよく食事に連れて行ってくれるようになった。二人は瞬く間に仲良くなり、サミーはレオンを慕うようになったのだ。

 (私は、本当に愚かだった。誰かに助けてほしいと、相談したいと思ってしまった。それに、もしも、思いを伝えるのなら、私の汚れを知ってもらわなければならないと、思ってしまった。今なら、その選択はしなくても良いものだったと言えるのに…。幼かったのよね。苦しんでいる時に優しくされて、意味のわからない誠実さを持ち出して、その結果がこれよ。)

 (過去を告白しても、レオンは変わらず優しかった。たくさん相談にものってくれた。だんだん、彼の方がなぜか私に依存するようになってしまったけれど、悲しい結果に終わってしまったけれど…優しかった彼を嫌いになることなんて出来ない。だけど、もし、いいえ、確実にレオンはスコットに私の過去を話したのだわ。なんで…。)

 サミーは婚約して、全てが輝いて見えた時を思い出す。彼の横顔や甘えたような自分の姿も。そして、別れ際の彼の焦燥した様子も。

 王都にくる前に彼とは別れ、その後も何度も泣いた後、彼との時間をようやく大切な宝物を見るような気持ちを少し持てるようになったところだっただけに、彼女自身もレオンが過去を勝手にバラしたことで、彼女は首を締められているような感覚に陥っているのだ。

 サミーの過去を知るものは、当事者である彼女、兄、そしてレオンとレオンのアドバイスにしたがって、告げることにした母のアンナと親友のウィローだけだった。レオン以外は、他の人に言う訳はないとサミーは確信している。


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