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第1話 プロローグ

「モテたい」



――この、人間()にとって当たり前の感情を俺は人一倍持っていた。




 何故だろうか………。この感情が人よりも大きくなってしまったのは……。




 

 ――小学校の頃にイケメンな同級生の彼等が、たくさんの女の子に囲まれて下校する光景を見たからだろうか。





 ――将又(はたまた)、中学校の頃にイケメンな同級生の彼等が、

俺が何気なく訪れたスーパーの休憩所で女の子と勉強会をしている光景を見たからだろうか。





 ――将又はたまた、高校生の頃にイケメンな同級生の彼等が、

女の子と放課後デートをしたり休日に家デートをしたり…という話を

風の噂で聞いたからだろうか。




……………………………………



……………………………………




……………………………………




――もうわかってるんだ、自分でも。……俺は彼等が羨ましかったんだろう。


 

――なぜいつも同級生のイケメンばかりが女の子と青春してしているのに、自分はいつまでも男の友達しか出来なかったんだ。

――なぜいつも同級生のイケメンのように女の子に囲まれる現象が起きないんだ。

――そんなに居るんだから1人くらい良いだろ……!!



これが俺の本心だ。そんな俺と彼等の違いは一体全体何だと言うのだ。


自分で言うが、俺だってそこそこ勉強も運動もできる。

性格だってそこまでひどくないだろう。なのに何故こうもモテない……。



「誰か教えてくれよ!!」



俺はある時、唯一の友達――もちろん男――に向かってそう叫んだ。心から。

こんなに本気で叫んだのはいつぶりだろうか。と思うくらいに。



するとこいつはこう言った。



「そりゃもちろん顔だろ顔。」



――俺はこいつの顔面を殴りたいという衝動を必死に抑えた。

――こいつ、もしかしなくても俺を馬鹿にしてんのか?



「待て待て!落ち着けって!馬鹿に何てしてない!ただ、たしかにお前は何でもそつなくこなせるくらい要領はいい。――――だが、モテるには顔が一番大事って事だよ。」



――そう言ってこいつは今現在モテている奴の特徴を話し出した。



「例えばあいつだな。」


そう言って指が指された方を見ると、やはりというかイケメンがいた。



「あいつは、顔はイケメンだろう。――――だが、性格が悪くて有名だ。多分女子の中にもそう思ってる奴は居るだろう。」



――マジかよ。



「だが、男子の中ではあいつが一番女子に人気だ。」



――なるほど。たしかに性格が悪いのにモテるのは顔。というなのだろう。



「次にあいつ。」



そう言って再びこいつの指が指された方を見る。



「あいつもイケメンだろう。――――だが勉強も運動も全然出来ない。」



――まじかよ。……顔がイケメンってだけで何でも出来そうに見えるわ。



「そしてあいつは、男子の中で女子に二番目に人気だ。」



――顔だな。



「そして最後に――」


そう言ってこいつは俺を指さした。


「は?何で俺?モテないって知ってるだろ。」


そう言うと、こいつはニヤリと笑った。


「そう。お前はモテてない。――勉強も運動も出来るのに。」



――――なるほど。そういうことか……。



――こうして今。俺は理解してしまった。



――モテるには顔が一番大事だということを………



「じゃあ、イケメンで性格も良くて運動も勉強も出来る奴が居たらモテモテだな。」


俺がそう言うと、こいつは「何言ってんだこいつ」とも言いたげな顔をした。


「馬鹿言うなよ。そんなやついるわけないだろ。……けどまあ、いたらモテるだろうな。………いったい前世でどんな徳を積んだんだか。」


――たしかにそうだな。「天は二物を与えず」だもんな。

けど、今世で徳を積めば来世の俺は幸せになれるかもしれないな。

――イケメンだといいなぁ。まあ、今の記憶は無くなってるだろうけど。


「じゃあ、俺も今から徳を積んで来世はイケメンにかける!」


「お、おう。頑張ってな。」


俺がそう言うとこいつは可哀想な者を見る目で見てきた。


「まあ、冗談だけどな!!」






――しかし、まさかこの発言が後に本当になるなんて今の俺は微塵も考えていなかった。











#######################################################

数年後





あの「フラグ発言」から数年後、俺は新社会人になっていた。

あれから俺は、高校を無事卒業。そして難関大学への進学をした。


――それから、あれよあれよという間に卒業をした。

――もちろん言うまでもないが、彼女なんて出来ていない。

――それ以前に女子とのまともな会話は0である。



そして今日が初の出勤日である。

難関大学。それも最難関の大学をストレートで卒業した俺は割と就職は簡単に決まった。そして、これから頑張って働いて親孝行出来れば良いな。なんて考えていた。


「青になったか。」


今までのことを「いろいろあったな。」と振り返りつつ、

歩行者信号が青に変化したのを確認すると、俺は高ぶった心を落ち着かせてから、

横断歩道を渡ろうとた。




――すると、俺の前を歩いている女子高生の横から、信号無視をしたトラックが迫ってきていた。

その事に気付いた周りの人は皆一様に「逃げて!」「危ない!」

と叫ぶ。

しかし、当の女子高生はトラックを認識すると、あまりの恐怖からか

その場で動けないでいた。そうしている間にも刻々とトラックは迫る。



「……俺が行くしか無いか。」



――何故だろうか。何となくだが、そんな気がしたのだ。

それから俺は直ぐさま気を引き締めると、恐怖で立ち尽くす女子高生に向かって走り出した。



「大丈夫か?!」



俺は走りながら女子高生に向けて声をかける。



「あっ…!!…えっとっ……!!…あのっ……!!」



しかし女子高生は恐怖からか思うように喋れないでいた。



「ごめん!痛いかもしれないけど我慢して!!」



「えっ…あっ…!!」



そう言って俺は女子高生を突き飛ばした。


周りからは悲鳴が聞こえてくる。


「ドンッ」


――その直後俺はトラックに引かれた。


――俺は自分の意識が薄くなるのを感じながら何とか耳に意識を集中させる。


「大丈夫か!しっかりしろ!!」


――近くに来た人が俺に向かって何か話している。

しかし最早俺の耳はその声を認識できない。

――誰かの救急車を呼ぶ声もあるだろうか。

それすらもわからない。




――ああ、死んだなこれ。




――そういえば…結局親孝行もまだ出来なかったな……。




――もし来世があるなら、ちゃんと親孝行をしよう……。




――俺はそう思いながらも、女子高生を助けることが出来たことに安堵し、そのまま命を落とした。





 




















 



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 俺がいくしかねーか、大丈夫か、痛いけどガマンしろ等と、いったい何十メートルトラック離れてたんだろ。 これだけ喋られる余裕あれば普通に避けられそうなというか恐怖で硬直する距離じゃなさそう…
[一言] すごい余裕もって死ぬやん
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