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81:五人体制、新しい日常・後編



■ネルト 【ニートの魔女】 10歳



 リーナとサフィーが入って、なんかすっごい華やかになった。


 見た目にもね。二人とも綺麗で、ビシッとしてる。見た感じでもう豪華。

 私の場違い感が半端ない。



 戦闘に関してもすっごい複雑になった。

 今までは私は一歩下がって、ピーゾンからの指示があるたびに動くって感じだったけど、さすがに五人ともなると最初から戦術をつめておかないといけないらしい。


 特に私とサフィーの役割が多い。

 ただでさえ『タイマン型・近中距離専門・無属性魔法使い』っていう冒険者パーティーとしたら使いづらい(ジョブ)なわけだし、これ以上お荷物にならない為にも、みんなに食らいついていかないと。



「オーーッホッホッホ! 万能【忍者】のワタクシにお任せあれ! スタイリッシュにこなしてみせますわ!」



 その扇子をどこから出しているのか分からないけど、自信満々に言えるのは羨ましい。

 実際サフィーは近接も遠距離も出来るし、前衛・後衛・斥候なんでもござれだ。

 私のようなポンコツ魔法使いとは訳が違う。


 ピーゾンに「忍べよ」って注意されてるけど。



 でもサフィーと比べる事自体が間違いだっていうのも分かってる。

 私に出来ない事はサフィーが出来るし、サフィーに出来ない事は私が出来たりするから。

 それがパーティーってもんだってピーゾンも言ってた。


 ピーゾン曰く、私の【ニートの魔女】……特に<空間魔法>は今後大いに化ける可能性があるらしい。


 だから危険だって言うけど、私としてはそんな力を得たらちゃんとパーティーに貢献できるのになーと思ってしまう。



 もちろん現時点でも<空間魔法>の危険性については出てきている。特に<ルールシュレッド>ね。

 これ、大木でも岩でも、何でも斬っちゃうんだよ。しかも一瞬で抵抗なくスパンと。


 斬るって言っても剣みたいに斬れるわけじゃなくて『線』が通るみたいな感じなんだけど。

 すごく細いレイピアで突き刺すような感じかな。



 それを私は後衛から<グリッド>で照準を当ててから斬るわけだけど、もし前衛の誰かに当てたらと思うと気が気ではない。


 特にピーゾンとかサフィーとか動きが速いから、それに注意しつつ、魔物の動きも見つつ、一発で戦闘不能か動けなくする為に、斬る場所を見極める、と。


 ……すっごく難しいんだよ? これ。魔力消費も大きいから連発とかしづらいし。



 だから練習が必要。

 個人的には素早く<グリッド>を当て、斬るまでをなるべく速くしたい。

 同時にパーティーの決め事として、私が<ルールシュレッド>を使う時は合図するようにした。



「ん! うつ!」



 そう言うと、みんなは私の前には来ない。道が開く。

 ポロリンだけは私の横に来る。

 <ルールシュレッド>は<念力>とかに比べて時間が掛かるから、その間私が無防備になる為だ。


 ポロリンにはいつも守ってもらって感謝。

 あと毎日美味しいお料理と、夜のマッサージにも感謝。



 そんな特訓の帰り道、南門からギルドへと向かう大通り沿いで、よく買い食いをする。

 みんなは夕食に備えて少しだけだけど、私はがっつり。

 お小遣い貯めてぬいぐるみ買いたいんだけど……孤児院への寄進も考えると先は長そうだ。それでも食べるけどね。



「んまっ! ここの屋台は昨日のお店と味が違いますのね!」


「屋台ごとに特色があるという事でしょうか。こちらも大変美味しいです」


「そりゃ味付けとか変えないと商売にならないでしょ。大通りの屋台なんて激戦区だろうしね」



 リーナとサフィーはすっかり屋台の買い食いに慣れたらしい。

 美味しいからね。仕方ないね。

 特にサフィーは屋台巡りをしたいと頻繁に言っている。

 おお、同志よ。その時は私も是非。


 こんな感じで私たちは仲良く過ごしている。

 もちろんまだパーティーを組んだばかりで特訓する事は多いけど、それもまた面白い。


 やっぱ学校に行かず、ピーゾンとポロリンに仲間に入れてもらって正解だった。

 最近は特にそう感じる事が多い。



「ネルトさん、あちらの屋台も行きたいですわ!」


「ん!」



 ピーゾンたちの笑い声を背に、サフィーに手を引かれ、大通りを小走りした。




■サフィー・フォン・ストライド 【スタイリッシュ忍者】 11歳



 ワタクシは幼少期よりストライド公爵家の一員として【幻影の闇に潜む者(ファントムシャドウ)】に入るべく研鑽を積んで参りました。


 その中で傑出した才能を持っているとも言われましたし、ゆくゆくは暗部を背負って立つ存在になるのではと持て囃されたりもしました。

 訓練にも益々身が入ったものです。



 しかしわずか七歳にして「上には上がいる」と、その現実を突きつけられました。


 才色兼備、文武両道、希代の天才、第七王女ダンデリーナ殿下。


 友となり、いずれ守護出来るようにと近くに置かれましたが、ダンデリーナ様はあらゆる面でワタクシを凌駕していました。


 ワタクシが凡人だと卑下するつもりはありません。

 しかしダンデリーナ様からすれば、周りの人間は皆等しく『凡人』なのではないか。

 そう思わされるほどの才だったのです。



 しかし、今にして思えばそれも可愛い嫉妬であると、思い返せば恥ずかしくなります。

 まさかダンデリーナ様をも軽く超える天才がこの世に居るとは。


 我らがパーティーリーダー、ピーゾンさん。一歳年下の元村娘だそうです。



 郊外演習で護衛に付かれた時の衝撃といったらありません。

 見た目は珍妙。しかしアドバイスは的確で、物怖じしない。

 極めつけはロックリザードの単独討伐。


 もはやそこに嫉妬などなく、ただ呆れ、ただ感心するばかり。

 ダンデリーナ様がピーゾンさんに師事を乞い、冒険者になろうと思ったのも納得です。


 もちろんワタクシも追従させて頂きましたが、どちらかと言えば、加入してからの方が驚かされる事が多かったですわね……。


 ワタクシが見せられた才は、ごくごく一部であったと何度も改める事となりました。



「どうだ? 冒険者生活は」


「あらお父様ごきげんよう、毎日刺激的すぎて大変ですわね。新人ですから付いていくのがやっとですわ」



 ワタクシは毎日、文を鳥で飛ばしています。お父様の下へと。

 同じ王都ではありますが、ワタクシがダンデリーナ様のお近くを離れるわけにはいきませんから。


 冒険者となりパーティーに入れて頂いたのは個人的に(ジョブ)を理解し技量を上げたい気持ちもありますが、第一はダンデリーナ様の警護なのです。


 そして定期報告とばかりに部屋の窓からお父様が侵入してきました。

 まぁ来るとは思っていたので驚きはしませんでしたが。

 気配を消し、声は極めて小さく。こうして報告を内密に行うのは暗部としての常識です。



 お父様がわざわざ来たのはダンデリーナ様の警護についてではありません。

 ワタクシが報告している、パーティーメンバーについて……もっと言えばピーゾンさんについてですわね。


 ダンデリーナ様のお近くに常にいるパーティーメンバーに関して、国王陛下や暗部が案じないわけがありません。

 当然、管理局からの情報も得ますし、ワタクシから日々の報告も必要という事です。


 そしてやはり注目されるのは『今年の要注意固有職(ユニークジョブ)第一位』に選ばれたらしいピーゾンさんです。


 名前からして【毒殺屋】ですからね。物騒極まりない。警戒も止む無しです。



「サフィーが虚偽報告するとは思わんが頭領が煩くてな。ワイバーン、オークキング、ロックリザードの単独討伐。昇格試験ではネロを倒したとか」


「ワタクシも聞いた話ですが、ご本人にもポロリンさんやネルトさんにも確認しましたからその通りのはずですわ。加えて言えばネロさん相手には『毒』を使わず剣技のみで戦ったとか」


「<剣術>系スキルを持っていないのにか」


「ピーゾンさんの剣捌きと回避能力はスキルどうこうではないですわよ。才能と経験と努力の賜物でしょう」


「これで十歳とは末恐ろしいな」



 理解できないでしょうね。毎日近くで見ているワタクシでさえ信じられない思いなのですから。


 まるで存在自体が全ての人と一線を画すような、極めて異様な女の子。

 それを言葉で伝える事は非常に難しいのです。


 まぁ少なからず伝わっているからこうしてお父様が来て、お爺様に興味を持たれているのでしょうが。

 そのうち実家に連れてこいとか言われそうですわね。



「報告に関しては今まで通りで良い。ダンデリーナ殿下の情報は陛下からもせっつかれているから細かく欲しいがな」


「相変わらずの溺愛っぷりですわね。子離れする良い機会でしょうに」


「そこはもう諦めろ。それとピーゾンの事もな。これは国もそうだが頭領が情報を欲しがっている」


「暗部に誘うのはおそらく無駄ですわよ?」


「ふっ、未来は誰にも分からんさ」



 お父様はそれだけ言うと窓から闇夜の中へと消えていきました。

 さすがはお父様ですわね。暗部の中でも気配を殺す術は随一でしょう。

 ワタクシが目指す先でもあります。



 そんな事があった翌朝の事。



「んー、昨日サフィーの部屋に来てた人だれ?」


「んなっ!?」



 ネ、ネルトさん気付いてましたの!?

 【幻影の闇に潜む者(ファントムシャドウ)】次期頭領の気配遮断技術ですわよ!?

 何かを感じて<グリッド>で覗いたんですの!?


 ……やはりこのパーティーは異常な才能を持つ者ばかり。


 ……凡人には辛いですわぁ。



 ……お父様、お爺様、ピーゾンさんばかりに目が行っては、後で足元すくわれますわよ?




このパーティーはみんな才能あるのに、みんながコンプレックスを抱えています。

四人はピーゾンありきの所もあるのですが、当のピーゾンにしても「デバフしか能がないしなー」という感じ。

だからこそ補える関係性になるのかもしれません。

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