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49:オークを蹂躙するのと女の尊厳を守るのは同義です

■■■=三人称です。今後時々出てきます。



「ブルルルルオオオオッッッ!!!」



 咆哮一番、ボスオークが突っ込んで特大剣を振るってきた。


 ――ブオン!!!


 私は魔剣を担いだまま半身で避ける。

 そのままボスオークの右へと回り込むとコンパクトに魔剣を振る。

 腹に滑らせるように薙いだ魔剣は、相手の鎧を斬り、その下の腹をも傷つける。その感覚があった。



(よし! ダメージ入る! この魔剣弱いって話だったけど全然いけるじゃん!)



 感触はトラック用のゴムタイヤか、巨木を思わせるもの。

 普通のオークに比べ確かに防御力は高いのだろうが、クリティカルを当て続ける感覚でいけば十分ダメージは与えられる。


 ポロリンの白銀トンファーでダメージが入るかと言われれば微妙だろう。

 でもこの【魔鉈ミュルグレス】ならいける。そう確信した。



 己が傷ついたことに激高したボスオークはさらに殺気を漲らせ私を追う。

 ヘイトは完全に私だ。それは願ったり叶ったり。


 風を切り裂く特大剣が幾度も振るわれる。

 地面へと振り下ろせば土がえぐれ礫が舞う。

 私に当たれば一発でミンチだろう。しかし――



(そんな大振りで当たるわけないで…………しょッ!)



 未だに私の戦闘は基本軸が『クリーチャーハンター』なんだよね。

 やり込んだ経験がこの世界での糧になっているのは間違いない。

 どんな魔物との戦闘でもどうしても『クリハン』基準になってしまう。


 リアルに死ぬ危険性があるのにそんな事を考えるのは間違いかもしれないけど、それで助けられているのも確かなんだよ。


『クリハン』の敵なんて触手だらけで、見た目で怯えさせて、嫌でもこっちにダメージを与えるような攻撃方法しかしないわけで。

 そんな中で私は浪漫仕様の回避大剣だったわけで。

 自分で言うのも何だけど被弾率はかなり低かった。



 今、私の命をとりに来ているボスオークの特大剣は、私の目から見ると『直線的すぎるし遅すぎる単発攻撃』としか見えない。


 当然回避、右に回り込みカウンター、また回避。

 ボスオークをぐるぐると周りながら攻撃を加える。



「<毒弾>!」



 時々顔面めがけて<毒弾>を入れる。<麻痺毒>ではなく<衰弱毒>。

 さすがにこの至近距離で麻痺を使う気にはなれない。

 相手がレジストして私が麻痺ったら終わりだ。

 だから<衰弱毒>でいい。腰のポージョンホルダーに解毒ポーションもある。


 新しく覚えた<腐食毒>も至近距離では自爆が怖い。

 おそらくボスオークの特大剣を錆びさせるか破壊するかできると思うけど、この場で撃つ気にはなれない。


 足へのカウンター斬撃も加え、動きが覚束なくなってきた。

 二秒くらい隙があるようなら、回り込むと同時にポケットからスタミナ回復剤を取り出し、速攻で飲み込む。

 疲労による集中力散漫だけはケアしないといけない。



「<毒感知>…………よしっ!」



 何度目かの<毒弾>で<衰弱毒>になったのを確認。これで討伐が早まる。

 あとは油断せずに一撃一撃入れるのみ!




■■■



 一方、ポロリンとネルトは倒れた女性の前に陣取り、残ったオークたちと相対していた。


 ピーゾンがボスオークと戦う前、最後に放った<毒弾>により麻痺しなかったオークは残り四体。

 オークたちは走るピーゾンを見やり、襲い掛かろうとした。



「<挑発>! <挑発>! <挑発>! <挑発>!」



 それは無謀なスキル連打。

 ボスオークと戦うピーゾンを邪魔させるわけにはいかない、その一心でポロリンは残ったオーク全てに<挑発>をかけた。


 これまでの戦い、ポロリンは最大二体のオークとしか同時に戦っていない。

 だと言うのに四体とも自分へと向かせたのだ。

 四体のオークに同時に襲い掛かられては、二本のトンファーで防ぐことなど不可能。


 それでもポロリンは<挑発>した。ピーゾンを守る為に。

 盾役(タンク)としてではなく、男として女の子を守る為に。



 四体のオークが迫る。

 ポロリンの後ろにはネルト。さらに後ろには気絶したままの女性の姿。


「やあああああっ!!!」っと可愛らしい<ウォークライ>を発動させ、トンファーを構えた。



「<念力>」



 ネルトはスキルで先頭を走って来るオークを躓かせる。

 不可視の手でオークの足首を掴んだのだ。

 オークの巨体を放ることは出来ないが、足並みを乱す事は出来る。



「ありがとうネルトさん!」


「ん。一体は近づかせない。でもあとのは……」


「うん、なんとかします!」



 ネルトは<念力>で延々邪魔し続けても一体を抑えるのが限界。

 それはスキル性能的にもMP的にもだ。

 ポロリンはそれに感謝をしたが、それでも三体のオークが相手。苦戦は必至である。


 ――少し前までならば。



「<魅惑の視線>!」



 キュピーン……と、そんな音は出ないが、ポロリンの瞳は自分に迫る一体のオークの目を捉えた。



「ッ!? ……ブア? ブルオオオ!!」



 突如としてそのオークは味方であるはずのオークに攻撃を始めた。

 その事に驚いたのは攻撃されたオークだ。

 訳が分からずなんとかしようと、攻撃してきたオークに攻撃を始める。同士討ちだ。


 <魅惑の視線>は相手に混乱の状態異常を与えるデバフスキル。

 もちろん相手次第ではレジストされるし、ポロリンのステータスなども成功率に関わって来るだろう。


 しかしオークは<挑発>によりポロリンに集中している状態。

 尚且つ、ポロリン自体がオークに好かれる容姿をしている。(本人は全否定だが)


 <魅惑の視線>は本人が思っている以上に掛かりやすい状態であったのだ。



 そうとは知らないポロリンは、この土壇場で<魅惑の視線>の効果が出た事に喜ぶ。可愛らしく。



「やった! 今のうちに一体倒しますよ!」


「ん。早めにお願い」



 本人はこの一か八かの賭けのつもりであった。それが叶って運が良かったと。

 しかし<魅惑の視線>は極めて効きやすい状況であったのだ。それを本人が知ることはない。




■ピーゾン 【毒殺屋】 10歳



 ボスオークを毒らせる事に成功。

 あとは避け続け、じわじわとなぶり殺しにしてくれるつもりだったんだけど……。



 ――ズバアアアッッッッ!!!



「ブオゴラアハアアアア……!!!」



 ――ドシィィィン…………



 うぇっ!? ……なんか上下真っ二つになった。

 これまでと同じように回避してから回り込んで腹を斬りつけただけなんだけど……。



「……あ! 『状態異常特攻』ってやつか!」



 私は手に持つ魔剣を見る。

 そう言えば魔剣屋のハゲ親父が言ってた。

『敵が状態異常にかかってると攻撃力が跳ね上がる』って。


 ボスオークが毒ったからこんな威力が出たのか……えっ、こんな上がるの? 刃が届いてないトコまで斬れてるんだけど。


 今までの雑魚敵だと毒ろうが毒らなかろうが一発で死ぬから感覚が分からなかったのか。

 ありえないんですけど。怖いわー、魔剣怖いわー。



 ……まぁ倒せたからいっか。


 さっさとポロリンの援護に……あれ? なんでオークvsオークになってんの?

 ネルトとか完全に観戦者じゃん。なにあれ。あ、<魅惑の視線>?

 ポロリン、オークを魅了しちゃったのか……まぁポロリンだから仕方ないね。





 それから私たちは女の人を寝かして、抗麻痺薬を口に突っ込んでおいた。

 気絶してたけど<毒感知>で麻痺ってるぽかったしね。

 そしてオークの家々を見て回り、他に囚われている人が居ないか確認。


 どうやら苗床にされた女性はいないようだけど、骨とかはあった。

 人かどうかは分からない。持ち帰れないオークの死体と一緒に焼いたほうがいいだろうか。



 麻痺ったまま生きているオークも居るので順次殺していく。屠殺だ。

 そうして集落中に広がるオークの死体……多いなぁ。

 いくら魔法の鞄が高性能でも全部を持ち帰るのは不可能。

 剥ぎ取りつつチョイスしなければ。


 まずオークの討伐証明部位である鼻は確定。

 胸を開き、魔石があればそれも優先。あと下あごから伸びた牙ね。ここら辺は売れる。


 問題はここからで、皮と肉が売れるんだよね。

 ただ全部は持って帰れないし、皮にしても四〇体全部剥ぎ取るのかと。正直しんどい。



 ボスオークはそもそもハイオークなのかオークキングなのかも分からない。

 討伐証明部位も分からない。なので丸ごと持ち帰り確定。


 さすがにそのままだとウサギさんのお口をビョーンってしても入らないので、四肢をぶつ切りにしてなんとか入れる。


 ブラックウルフとかも入ってるからスペースが……麻袋も何枚かあるけど、やっぱオークは解体したところで全部は無理だなー。



「じゃあ残りは全部焼却ですかね」


「お肉もったいない」


「どうせ焼くなら少し食べちゃおっか。まだ女の人起きてこないし」


「ん!」


「あ、せっかくだからボスオーク食べてみる? このまま売っちゃったらもう食べられないかもしれない。腕一本くらいならいいでしょ」


「ん!!」


「アハハ……まぁネルトさん、まだ冒険者デビュー四日目なのに予定外の大激戦でしたからね」



 そうして私たちはキャンプファイヤーを始めた。

 やっぱネルトの<生活魔法>は便利だわ。野営で助かる。火も水も使い放題。


 調味料とかも野営セットでみんな持ってるからね。焼き肉は問題ない。

 まぁネルトは私とポロリンよりそういうの沢山持ってるんだけど。露店で結構買ってたりする。

 そういう意味でも助かりますわ。

 肉がジュージュー言うてますわー。



―――――

名前:ピーゾン

職業:毒殺屋Lv25(+6)

装備:武器・魔鉈ミュルグレス(攻撃+50・状態異常特攻)

防具・ウサウサケープ(防御+15・気配察知)

   ウサウサグローブ(防御+10・状態異常耐性(抵抗+20))

   ウサウサブーツ(防御+10・俊敏+10・跳躍強化)

   布の服(防御+9)


HP:156(+32)

MP:174(+39)

攻撃:106(+33)(+50=156)

防御:11(+3)(+44=55)

魔力:122(+38)

抵抗:41(+9)(+20=61)

敏捷:186(+40)(+10=226)

器用:82(+15)

運 :34(+7)


スキル:毒精製Lv3、毒弾Lv3、毒霧Lv2、毒雨Lv1、毒感知Lv4

毒精製=衰弱毒・麻痺毒・腐食毒

―――――

名前:ポロリン

職業:セクシーギャルLv20(+13)

武器・白銀のトンファー(攻撃+25、防御+27)

防具・萌芽の武術着(攻撃+5、防御+20、敏捷+5・ウォークライ)

   萌芽のシニョンカバー(抵抗+2)

   皮のブーツ(敏捷+4)


HP:154(+84)

MP:35(+17)

攻撃:154(+95)(+30=184)

防御:158(+92)(+47=205)

魔力:12(+8)

抵抗:14(+7)(+2=16)

敏捷:33(+18)(+9=42)

器用:59(+33)

運 :86(+46)


スキル:挑発Lv3(+1)、呼び込みLv3(+1)、セクシートンファー術Lv3(+1)、魅惑の視線Lv1、ピンクマッサージLv1(New)

セクシートンファー術=トンファーキック、ハートアタック(New)

―――――

名前:ネルト

職業:ニートの魔女Lv17(+16)

武器・ネコネコロッド(魔力+15、消費MP軽減)

防具・ネコネコローブ(防御+10、抵抗+10、MP回復増進)

   布の服(防御+0)


HP:57(+52)

MP:130(+120)

攻撃:11(+9)

防御:45(+41)(+10=55)

魔力:126(+118)(+15=141)

抵抗:114(+107)(+10=124)

敏捷:48(+44)

器用:75(+70)

運 :114(+105)


スキル:生活魔法Lv2(+1)、空間魔法Lv2(+1)、念力Lv3(+1)、室内空調Lv1(New)

生活魔法=着火・給水・乾燥・洗浄・照明(New)

空間魔法=グリッド・ホークアイ(New)

―――――




なんかいかがわしいスキルがあったような気がしますが気のせいです。

年齢制限に引っ掛かるようなものは書きません(断固たる意志)

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[良い点] ピンクマッサージ。いや駄目でしょ() [気になる点] なぜ評価は一度のみなのか。★×5連打してぇ…… [一言] どう頑張ってもいかがわしいお店なんだよなぁ……。あと回避重視の方に一撃タイプ…
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