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36:ファンシー好き女子ですが衝撃的装備に出会いました



 やってきました中央区の裏通り。お目当てのファンシー防具店。

 私はガイドブックで見つけた時からここに期待していたのだよ。


 もうね、外観からしてヤバイ。

 窓から見えるカーテンはクリーム色と白、扉も同じようなクリーム色、入口の(ひさし)は水色と白のストライプ。


 あるんじゃん! 会いたかったぜパステルカラー!

 この世界に存在しないかと思ってたよ!



 看板には『ファンシーショップ・マリリン』と書いてある。

 防具要素は微塵もない。これ、情報がなかったら分からないでしょう。

 よし、と意を決してカランカランと扉を開けた。



「うわぁ~~~!」

「す、すごいですね……」



 そこはメルヘンの国だった。


 置いてあるのはローブや服類なのだがどれもフワフワやフリフリ、モコモコ。

 色は白やパステルカラーばかり。私の前世のマイルームを思い出す。

 はしゃぐ私の声に気付いたのか、カウンターの奥から店主と思われる人がヌッと現れた。



「あ~ら、いらっしゃい」


「!?」



 色黒で筋肉質なおっさん。

 笑うと白い歯がまぶしいが、それ以上に真っ白アフロがまぶしい。

 髪飾りだろうか丸まった羊の角が生えている。

 口元は真っ赤な口紅、着ているのはフリフリのチュニック。


 ……ずいぶんとインパクトのあるオネエだ。この人がマリリンだろうか。


「!?」とビックリしたポロリンはその衝撃に動けないらしい。

 しかし私はそれどころではない。この感動を抑えられない。



「オネエさん! この店すごいね! ナイスファンシー!」


「あら~、そうでしょう~? うふふ、お嬢ちゃんは見る目あるわね~」



 オネエさんは頬に手を当てて嬉し気に笑う。

 だがすぐに表情を曇らせた。



「でもそう言ってくれる娘がいないのよね~。女の子にオシャレは必須なのに全然お客さんが来ないのよ~」


「みんなファンシーの良さを分かってないよね」


「(防具にオシャレを求めてないんだと思うんですけど……)」


「そうなのよ~。五年間やっててお嬢ちゃんが初だわ~、そう言ってくれるの。たま~に入って来る娘もあたしが声かけるとなぜか逃げちゃうし……」


「(五年も閑古鳥状態だったのか……)」


「(おじさんが怖いんだと思いますよ……)」



 まさかこの世界の『素材の色味を大事に』文化に疑問を持つ同志がいたとは……。

 確かにファンシーなデザインとか色とか今まで全く見てないし、ましてや装備品なんて以ての外。

 王都でさえそんなにも需要がないとは思わなかったよ。



「まともなお客さんが来てくれて嬉しいわ~。サービスしちゃうわよ。お嬢ちゃんと坊やは軽装なのかしら~」


「!?」


「!? わ、分かるんですか、ボクが男だって!」


「ん~? 当然じゃない、あたしのセンサーが言ってるわ~。あたしと同じ匂いがするって」



 さすがにオネエは格が違った。まさか一見でポロリンが男だと見抜くとは……。


 隣のポロリンが「おじさんと同じ……」となぜか項垂れているけど無視しよう。

 おじさんとか言うんじゃありません。



 それから私がローブや服系しか装備できない事を話し、どんなものがあるか見せてもらう。ワクワクが止まらない。

 ポロリンはここで買うつもりがないらしく、私を見守るだけだ。

 すまんが時間をかけて選ばせてもらうよ。


 見るからに軽装ばかりが並ぶ店内。

 私の【毒殺屋】は重い防具は装備出来ないようだけど、ここなら何を選んでも良さそうだ。


 まずはハンガーに掛かった薄いピンクのローブを広げてみる。キャワユイ。



「うふふ、それは『耐火』のローブよ~」


「えっ魔装具なんですか!?」


「ここのは全部魔装具よ~。あたしが付与したものだからね~」


「オネエさん【付与士】なの!?」



 魔装具は武器や防具に【付与】したものだ。所謂エンチャント武具。

 それは【付与士】にしか出来ず、付けられる【付与】はスキルであったりステータスアップであったりと色々あるらしい。


 当然、普通の装備よりも値段は高くなる。

 同じ素材で造ったとしても、少なからず性能が上がり、技術料が入るのだから当たり前。

 結局は【付与士】の腕次第で性能が変わるそうだが、仮にオネエさんの腕が悪かったとしても、書かれてる値段が……。



「いや、それにしたら安すぎますよ! 付与された防具なんてもっと高いはずです!」


「全然売れないからしょうがないのよ~。ちなみにあたしは【上級魔装技師】よ~」



 思わず私もポロリンも唖然としてしまった。

 【付与士】より全然格上の上級派生職だ。

 そんな人が作ったものなら、そこらで売ってる魔装具よりメチャクチャ高価になるのが普通。

 なのに、そういった魔装具より安い!


 オネエさんは「本業はあくまでデザイナーなんだけどね~」と言っているが、そのデザインのせいで売れないのだろう。

 時代の先端を一歩も二歩も進んでしまってるから。


 つまりもうここで買うのが正解という事だ。


 一式全部そろえるくらいで考えたほうが良い。

 私だけじゃなくポロリンも買うべきだろう。

 そう改めて店内を物色していると、一角のモコモコゾーンに目が留まった。



「な、なにこれ!」



 それは衝撃の出会いだった。

 思わず手に取り広げ、その意匠に目を奪われる。



 まるで着ぐるみのような、白くモコモコのウサミミフード付きのケープ。

 そして同じような白いモコモコの手足も別売りで並んでいる。それこそ着ぐるみの手足だ。


 触り心地はモコモコと言うよりモフモフか。

 兎にしては毛が長いがこれはこれで悪くない。むしろ良い。

「おおおお」と声が出てしまう。なんというメルヘン且つファンシー。


 そんな私の元へオネエさんはニコニコ顔(厳つい恐面スマイル)で近づく。



「それはケープが<気配察知>、グローブが<状態異常耐性>、ブーツが<跳躍強化>よ~」


「買います」


「ちょっ! ピーゾンさん! いや確かにすごい付与ですけど!」



 なんだねポロリン。こんな可愛いの見逃せないでしょ。

 即買い待ったなし。仮に【付与】が付いてなくても即買いだよ。


 しかも<状態異常耐性>とか私が一番欲しかったヤツだよ。自爆防止の為にね。

 おまけに<気配察知>と<跳躍強化>ってウサギイメージなんだろうけど、どっちも有り難い。

 そんでもって可愛い。文句なし。


 試着させてもらう。

 ケープは肘くらいまでの長さだ。

 ウサミミフードをかぶり、オネエさんの言う通りにウサミミに集中すると、中折れだった耳がピコピコと伸びたりする。おお、可愛い。


 グローブとブーツも試着。あ、ウサギの手なのに全然掴める。何これ。

 試しにカウンターにあった羽ペンを取り、ペン回ししてみた。全然出来る。どういう事?

 ブーツもモコモコだけど滑ったりしない。靴底が肉球みたいになってるせいか。


 姿見で全身ウサギ装備の自分を見てみる。うむ、可愛い。



「買います」


「ちょっ! えっと、あれですよ、そんなに白いと汚れとか魔物の血とか……」


「もちろん防汚加工よ~。なんなら丸洗いも可能だわ~」


「買います」



 良かった。真っ白だから私も気になってたけど、やはり【上級魔装技師】に抜かりなし。

 防汚加工も可能とはさすがファンタジーだよ。

 まぁその分高価になるらしいしファストン村じゃ見ないわけだ。



「ウサウサセットは三つで金貨二十枚よ~」


「高っ……いや安い! 安すぎますよっ!」


「買います」



 金貨二〇枚は二百万円相当。

 ポロリンも驚いてたけど【上級魔装技師】の付与防具で、尚且つこの性能、この値段は破格だと思う。

 値段に詳しいポロリンが安いって言うくらいだからね。


 付与効果だけじゃなくて普通に防御力上昇の数値的にもヤバイ。

 今までの布の外套とか何だったのか。ゴミじゃないか。

 ただの布きれでしょあれ。地味~な色した。



 ともかく兎セットは購入です。買わないわけがないからね。

 さて、それで終わり……とするのはもったいない。



「じゃあ次はポロリンの防具を」


「えっ、ボクもここで買うんですか!?」



 さあポロリンよ。君もファンシーになるのだ。




やっとピーゾンが白ウサギ化しました。これからが本番です。

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