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31:山賊の住処でお宝をゲットしました



 それはおっさんが出掛けた翌日、つまり昨日の話だ。


 荷物を漁り、金目のものを拝借、食料をあらかた出し、それをネルトがモグモグ食べる。

 この娘はどれだけ食うんだろうか。無表情で食べ続ける。



 そんなことをしつつ、周囲の警戒も怠らない。

 暇だからポロリンと鍛錬をして、おっさんの帰りを待っていた。



 そこへゴゴゴゴと超局所的地震が発生。

 なんだなんだと騒ぐ私とポロリン。無表情のネルト。


 音がした洞穴の奥、つまり荷物置き場に行ってみると、そこには地下へと続く階段が出来ていた。



「か、隠し部屋!?」



 勘の良い私はすぐにピーンと来たね。

 山賊の住処に隠し部屋はつきもの。

 どこかへ続く逃げ道か、溜めこんだ財宝があるに決まっている。

 何らかの拍子で今、その入口が明らかになったのだろうと。



 ひゃっほいと飛び込む私。


 念の為ポロリンとネルトには荷物置き場に残っていてもらう。

 魔物が出た時の対処及びおっさん帰還時の連絡要員だね。


 で、意気揚々と階段を下りると、縦横二メートルくらいの狭い洞窟が続いている。

 トンネルというか巨大モグラの巣みたいな感じ。

 山賊もよく掘ったもんだとズンズン進んだ。


 おまけにゴブリンやコボルトまで出て来る始末。

 コボルトは初見だけど汚いドーベルマンみたいな頭に人の身体だったから多分そうだろう。

 ともかくやはり別の入口があるのか……抜け道の向こう側から入り込んだに違いない。


 当然麻痺からの<衰弱毒>コンボで確殺した。

 見届けずに進んだけど。後は勝手に死んでくれ。



 途中に分かれ道が何度かあった。

 やはり抜け道だけに辿り着けないようにしているらしい。

 掘った山賊の皆さんご苦労様です。

 ただどれもすぐに行き止まりだったんで引き返すだけ。


 足元のスイッチを踏むと矢が飛んでくる罠もあった。

 さすがに警戒して作ってるらしい。

 ま、避けるだけなんだけど。『クリハン』の敵ならもっとイヤらしい攻撃してきたよ。



 そんなこんなで進み続けると立派な扉につき当たる。洞窟に対して不釣り合いな扉。


 おいおい山賊さんたちよ、こんなあからさまに「重要な部屋です!」ってやられると余計に警戒させちゃうんだぜ?


 どうせこの先に罠があって、隠し部屋があって、抜け道に繋がってるんでしょ?

 分かってる、私分かってる。



 罠を警戒しつつ半身になってギギギと開ける。

 ちらりと中を覗くと……コボルトが十匹くらいと、なんかデカイコボルトがいた。


 どんだけ入り込んでんだよ! 抜け道の向こう側塞いどきなさい!



『ギャウギャウ!』


「ええい! 静まれっ! 静まれっ! <毒弾>! <毒弾>!」



 ええ、<毒霧>の麻痺は怖いんでね、一匹一匹<毒弾>で処理しましたよ。

 どれだけ居たって扉の幅でしか迫って来れないからね。

 部屋の外から順番に狙い撃つのみよ。


 全部麻痺ったら全部に<衰弱毒>。

 さすがにMPがヤバかったね。保険で高価なMPポーション買ってて良かったよ。


 コボルトはゴブリンより少し長生きするだけで死んだけど、デカイのが結構時間かかった。

 HPが普通のコボルトの五倍くらいあるんじゃないかと。

 よく知らないけど上位種だろうね。

 リーダー? キング? ロード? まぁいいか。



 死体はとりあえず放置して、ゴゴゴとまた部屋の中の壁が開いたので進んでみる。

 隠し通路の先の隠し通路とは……山賊さんたちも作るの大変だったろうに。

 だが安心して欲しい。君たちの残した宝は私が有効活用すると誓おう。


 入った先は小さな部屋になっていた。行き止まりっぽい。


 ……あれ? 抜け道じゃない?


 しかもその部屋には台座に乗った水晶玉と、その前に地面に突き刺さった黒い剣があった。

 よく見るタイプのロングソードの真っ黒バージョン。



 ……これだけか。しけてやがる。


 せめて値打ち物であって欲しい。

 そう思いながら剣の柄を握り、引っこ抜いた。



「うわあっ!」



 途端に剣とそれが突き刺さってた地面から、黒い霧が吹き出し、右手に持つ黒いロングソードに纏わりつく。

 まるで意思を持つように、霧は煙となり、煙は繭のように剣を包む。

 黒い煙はロングソードと一体化し、まるで気体か液体かのように剣の形が変わっていく。


 やがて煙が晴れ、剣の姿がはっきりと分かるようになった。



 それは五〇センチほどの黒く少し湾曲した柄。


 そこから伸びる刃は片刃。これも少し反っており剣先は角ばっている。


 刃だけでも長さは一メートル少々、柄も入れれば私の身長を超えるだろう。


 真っ黒なそれは……













「…………鉈じゃん!!!」





「という聞くも涙、語るも涙の物語が……」


「だまれだまれだまれ!」



 おっさんは頭を抱えている。一日二日目を離しただけでこれか、とか呟いている。

 別に目を離さなくても変わらないですよ、私の行動は。



「あーつまりアレだな? 偶然現れた生まれたばかりのダンジョンに入って、単独で走破。ボスを倒して魔剣をゲット、と」


「そういうこと……だよね」



 いや、さすがに私も山賊の抜け道とか隠し部屋じゃないって気付いたよ?

 まぁ最後の最後まで期待していたところもあるけど。

 でもまさかこんなピンポイントでダンジョンが出来るなんて思わないじゃない?



「コアは?」


「あの水晶がやっぱコアかな? お宝かもしれないから一応持ってきた」


「よこせ、没収」



 えー、高く売れるかもしれないのに……と思いながらも渋々渡す。

 なんでも壊すならまだしも持ち帰って勝手に売るとか犯罪になるらしい。

 そうなの!? 初めから言っておいてよ!



「誰が言うもんか、高ランク冒険者ならギルドから説明されるだろうけどな。で、こいつは悪いが俺から管理局に引き渡す。この場で壊してもいいがお前の報告の証拠だ」


「うわぁ」


「お宝ってーならボスのドロップとかなかったのか?」


「あったよ、大きめの魔石、これ」


「まぁまぁだな。やっぱ生まれたばっかのダンジョンだと弱いんだな」



 ダンジョンの魔物は時間が経過すると死体が消えて時々アイテムを落とす。

 私は山賊の抜け道だと思って死体の剥ぎ取りを後回しにズンズン進んでたから気付かなかったけど、帰り道で全部死体が消えてたからビビったね。


 で、聞くところによるとあのデカイコボルトはコボルトキングだろう、って話。


 ダンジョンが出来たばかりだったから一層しかなくボスもコボルトキング程度だったらしいけど、本来ならもっと危険なんだとか。そりゃそうだろうよ。



 というか「コボルトキングも麻痺るのかよ、完封じゃねえか」とか呟いてたけど何回かレジストされたからね?

 ワイバーンほどじゃなかったけど。



「で、その魔剣の性能は?」


「えっ、内緒にしたいんだけど……」


「世間的には内緒にしてろ。だが報告は別だ」


「うぅぅ……」



―――――

名前:ピーゾン

職業:毒殺屋Lv19(+3)

装備:武器・魔鉈ミュルグレス(攻撃+50・状態異常特攻)

   防具・布の服(防御+9)

      皮のブーツ(敏捷+3)

      布の外套(防御+7)


HP:124(+17)

MP:135(+20)

攻撃:73(+16)(+50=123)

防御:8(+1)(+16=24)

魔力:84(+18)

抵抗:32(+4)

敏捷:146(+20)(+3=149)

器用:67(+7)

運 :27(+2)


スキル:毒精製Lv2(衰弱毒・麻痺毒)、毒弾Lv2、毒霧Lv1、毒感知Lv3

―――――




ミュルグレスはフランスの叙事詩『ローランの歌』に出てくる剣。「死の剣」の意味があるとか。

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― 新着の感想 ―
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[一言] おや、魔剣は鉈に変化するんですか。職に適したものに変化するなら今後は普通の鉈も武器として使えたり? 主人公以外による状態異常でも特効が有効なら、レイド戦でかなり役立ちそうですね。 毒付与…
[良い点] 魔剣のネーミングセンス。カッコいい。とても。 [気になる点] 特にナス。 [一言] 状態異常特攻と毒殺屋は自己完結しちゃってるのズルいでしょ……ホンマ………。もうこれピーゾン一人でいいんじ…
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