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閑話7:とある変質者のおっさんの憂鬱



■アローク 【???】 32歳



 あーめんどい。なんで俺、転職しちゃったんだろ。

 (ジョブ)管理局とか超ブラックじゃねーかよ。


 いやまぁ前職の方がブラックだったから何も言えないし、固有職(ユニークジョブ)監視員だから忙しいってのもあるんだが。



 ホント、固有職(ユニークジョブ)になってから良い事ないわー。

 田舎でのんびり暮らしたい。

 退職したら俺、絶対田舎暮らしするんだ。



 しかし同じ固有職(ユニークジョブ)監視員でも差があってさ、監視する対象がどんなヤツかで忙しさも変わってくるわけだ。


 固有職(ユニークジョブ)の中にも戦闘職、非戦闘職があるし、有能な(ジョブ)もあれば意味不明すぎて無能って(ジョブ)もある。


 もし見るからに危険な固有職(ユニークジョブ)に就いちまったら大変だ。

 十歳の子供がいきなり危険な力を持つ。

 それはもう意図してもしなくても事故が起きるのは確定しているようなものでね。


 【剣士】になった少年が魔物相手に戦ってみたくなる現象と同じだな。

 世界に一人の固有職(ユニークジョブ)に就いたからには、訳分かんないスキルでもとりあえず使ってみたいってさ。

 過去にはそれで人を殺したり、街を破壊したりなんてこともあったわけで。


 だから固有職(ユニークジョブ)監視員ってのが必要なんだけどな。

 俺らが止めたり、導いたり、守ったり、場合によっては捕らえたりしないといけないわけだ。

 やってる事は暗部と変わらない。

 監視して危険と判断されれば制圧する。



 んで、俺の担当になったのが今年ナンバーワンの『要注意危険(ジョブ)』に満場一致で選ばれたピーゾンという小娘。


 【毒殺屋】ってなんだよ【毒殺屋】って。屋号かよ。

 これを野放しにするわけがない。

 誰だって分かる。こりゃヤバイなって。


 こんなもん即逮捕だろうと思って監視を始めてみたが、どうもそいつは俺や管理局の思惑とはちょっと違ったヤツだったらしい。


 【毒殺屋】って物騒な名前だったのが幸いしたのか、自分でも『これは怖い』と思ってくれているようなのだ。


 無暗にスキルを使わないし、吹聴もしない。

 自分一人で自分自身の力を検証しながら、確実にモノにしていっている。



 いやまぁその考え方とか、戦い方とか全部ひっくるめて十歳児には見えねえんだけど。

 ともかく優秀すぎるヤツに、危険極まりない(ジョブ)が就いちまったもんだよ。そう思った。



 だからこそ管理局に出す報告書に頭を悩まされるんだが。

 俺が見ている分にはピーゾン自体に危険性は皆無。

 しかし(ジョブ)もスキルも戦績も物騒すぎる。


 特に回避スキルなしでワイバーンからの攻撃を回避し続けたとかさ、見てる俺でさえ異常だって分かるのに管理局のヤツらが報告書だけで納得するわけがねえ。

 だから報告も密になるし、監視強化する必要があるし、俺の仕事も増えると。勘弁して下さい。



 さらにオーフェンで燻ってたポロリンとか言う固有職(ユニークジョブ)の少年(?)まで仲間にしやがった。

 これにより俺の報告書の量が増える。勘弁して下さい、まじで。

 まぁポロリンに関しちゃ特に危険性もないから純粋に報告だけでいいんだが。


 一部の研究者が「男なのに【セクシーギャル】!? 確保はよ!」とうるさいらしいが、実害もないのに捕らえるわけにはいかねえ。いくら前代未聞の事とは言え、な。

 俺としては同情するしかないんだが……俺が【セクシーギャル】だったら死んでるぞ、多分。


 まぁポロリンの場合、見た目が見た目だからなぁ……セクシーとは言えないが男らしくはない。

 顔だけ見れば『王国一の美姫』と騒がれているダンデリーナ王女殿下と同じくらい美形かもしれねえ。

 ひょっとすると殿下より美少女かも……いや、ポロリンは少年なんだが。



 ともかくポロリンもピーゾンの指導のかいあって冒険者としては順調すぎるほどに順調な滑り出しを見せた。

 早くもオーフェンを出て王都に行くと言う。

 ありがたい話だ。管理局は王都にあるから報告が楽になる。


 つっても俺がヤツらと共に馬車に乗るわけにもいかねえし、馬車の速度に合わせて尾行するしかないんだが。

 もうツラが割れてるんだから一緒に行ったっていいと思うんだが、監視員は極力一緒に行動してはいけないらしい。くそが。



 そんなこんなで九日間ほどヒュンヒュンと追いかける。

 もう少しで王都か、宿場町もここで最後か、そんな油断があったのだろう。

 朝になったら大部屋からピーゾンとポロリンの姿が消えていた。


 いやいや、確かに油断はしていたが俺の監視網を抜けるとかマジかよ。

 監視員になって相当鈍っちまったらしいな。こんなの現役時代じゃありえねえ。


 あー、これ知られたら怒られるわーと頭を掻きながら、広域に監視の目を張ると、どうやら下手人らしき山賊がまだ付近に残っていたらしい。


 賊に拉致されたのには違いないと思う。ここまで来たのに二人で抜け出す意味がないし。

 この宿場町があの山賊の″狩場″だとすれば、そのアジトは近くだろう。

 そして残っている山賊は斥候・伝令役か何かだ。多分。



 そうして俺は山賊の尾行を始めた。

 山賊にしちゃあ随分と警戒心が強い。

 そこいらの粗暴な山賊と違って軍隊みたいに洗練された動きを見せる。


 トップが軍人崩れなのかもしれねえ。そうなると厄介だな。

 名のある山賊団は討伐しようとしても迎撃するくらいの力を持つ場合がある。



 やがて山賊はアジトへと戻る。そこには七人の山賊が居た。

 うーん、話を聞くにこれで全員かな? ここで全部捕らえちゃっていいか。


 いくら相手が強い山賊団だろうが、人数が多かろうが、俺のスキルの前では無意味だ。

 俺は手から『糸』を出し、ヤツらに巻き付ければそれでお終い。


 まぁ、俺はこの固有職(ユニークジョブ)で食ってるもんでね。

 相手が悪かったと諦めてくれ。

 こんな(ジョブ)だからピーゾンの監視員になったわけでもあるんだが。

 【毒殺屋】相手には相応に強い監視員が必要だったって事だよ……ちくしょう。



 そんな事を思っていたら洞穴の影からそのピーゾンが顔を出した。

 なんだよ自力で脱出できたのか? 相変わらずとんでもねえな、お前は。


 そして開口一番こう言うのだ。



「おっさん!」


「おっさんじゃねーよ!」



 三二歳はおっさんではない。お兄さんだ。

 ここを間違えてはいけない、いいね?




やっとおっさんの能力が明らかになってきましたねー。

ジョブの名前が分かるのはかなーり後になります。

言っておきますけど普通です。毒殺屋(笑)とかセクシーギャル(笑)風じゃありません。ちゃんとしてます。

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