20:超絶美少女は色々と前途多難なようです
「ど、【毒殺屋】……」
「暗殺者みたいです……」
うっさいわ。
でもシェラちゃんは、だから吹聴しちゃいけないのかって実感してくれたらしい。
こういう物騒な固有職もあるから他言無用って事なんだよね。
ポロリンは自分の職以上の衝撃だったのか、同類と見たのかは分からないが、さっきよりも幾分表情が柔らかくなった。
うんうん、身を削ったかいがあるよ。HAHAHA。
「まー私はそんな感じなんだけど、ポロリンはそもそも戦闘系なの?」
「えっとステータス的にはそうだと思います」
「んじゃもう冒険者になっちゃえばいいじゃない」
戦闘系の固有職でなるべく他人に知られず学校にも行きたくないってなると、もう限られると思うんだよね。
非戦闘系の仕事を探したところで国的にはレベルを上げさせて未知のスキルとか知りたいんだろうし、結局はレベルの為に戦うはめになると思う。
非戦闘系の職だったらレベルを上げる条件が『魔物を倒して経験値を稼ぐ』とかじゃないらしいけど、戦闘職ならほぼ間違いなく魔物と戦う事になりそうだしね。
だったら最初から自分の能力探りつつ地道に冒険者してた方が良いんじゃないかと。
職管理局に説明するにも自分で把握しておいて損はないし。
「でも、冒険者になってパーティー組もうと思っても固有職って組めるんですか? 組んだらボクの職も知らせなくちゃ……」
「あー、確かにね。私もそれが気掛かりでソロやってるんだけど」
「やっぱそうですよねぇ……」
「だったら私と組めばいいんじゃないの?」
「えっ」
二人して固有職で他人に知られたくないんなら、二人で組んで秘密を共有し合えばいいじゃない。
私もソロ卒業じゃない。あ、いい案じゃない? これ。
「いいんですか!?」
「私がお願いしたいくらいだよ。私だって出来ればパーティー組みたいし」
「うわぁ! 是非お願いします!」
良かった。やっと笑顔になったね。
多分、冒険者も選択肢の一つとして考えてたんだろうな。
でもソロでやるには自信がなかったと。
当然だよね。十歳の子が自分だけしか頼れない状況で魔物と戦おうとか思えないよ、普通。
「よかったです! ポロリン!」
「ありがとう! シェラちゃんも、ピーゾンさんも!」
涙ぐむシェラちゃん。
この子八歳のはずなんだけど、なんかポロリンよりお姉さんな感じなんだよね。
「んで、結局ポロリンの職って何なの?」
「あ……そうですよね、パーティー組むのに言わないわけには……」
「まぁいくらなんでも【毒殺屋】より酷いってことないでしょ?」
「いや、えっとですね……ボクの職……」
……溜めるねぇ! 焦らすねぇ!
思わずゴクリと生唾飲むよ!
シェラちゃんも顔を近づける。
「…………【セクシーギャル】です」
「ッ! ゲホッ! ゴホッ! ゴホッ!」
むせた。
「はぁ……やっぱそうなりますよね……」
「ご、ごめんっ! いや、マジで? 職の名前が【セクシーギャル】なの?」
「はい……」
そんな職業ねーよ! と大声で叫びたい。
ゲームのアレは『職業』じゃなくて『性格』じゃなかったっけ!?
そりゃ閉じこもるわ。言えないわ「私、セクシーギャルです!」とか。罰ゲームじゃん。
ある意味【毒殺屋】以上の破壊力だね。なぜか敗北感があるよ。
しかし【セクシーギャル】かぁ……。
今は超絶美少女だけど成長したらセクシーになるんだろうなぁ。
どこがポロリンするんだか……。
で、中年になって老人になっても【セクシーギャル】ってか? 益々恥ずかしいわ!
年を負うごとに恥ずかしくなる職とかマジ罰ゲームだわ。同情します。
あ、もしかしてレベル上げれば派生する? セクシーじゃなくなる?
「いやいや、待って。戦闘職なの? それ」
「えっと多分……」
「悪いけどステータス読み上げてくれる?」
「はい、えー……」
―――――
名前:ポロリン
職業:セクシーギャルLv1
装備:武器・なし
防具・布の服(防御+0)
HP:30
MP:10
攻撃:15
防御:19
魔力:2
抵抗:3
敏捷:7
器用:12
運 :18
スキル:挑発Lv1、呼び込みLv1、セクシートンファー術Lv1
―――――
「ハハハハ! セ、セ、セクシートンファー! ハハハハッ!」
「わ、笑わないで下さいよっ!」
「ハァ、ハァ、あー、ごめんごめん。いや確かに戦闘職だわ。間違いない」
ネタ職だなぁ。久々に笑った。
まぁ真面目に見るとタンク系かな?
『抵抗』が低いのが気になるけど前衛なのは間違いない。
でも盾じゃなくてトンファーかぁ。
トンファーがこの世界にあるのも初めて知ったけど、出来るのか? タンク。
しかもただのトンファーじゃなくて<セクシートンファー術>だからね! 意味が分からないよ!
「もうっ! ……で、ピーゾンさん、反応したってことは知ってるんですか? この<セクシートンファー術>って。ボク全然分かんなくて……」
「ん? トンファーが分からないってこと?」
「はい」
あー、やっぱ一般的じゃないのか。この世界、基本的に剣とかだからね。
武器屋とかでもトンファーなんて見た事ないし。
「えっと、こんな感じの……棒? で、こう持つと。んで防いだり、突いたり、回して殴ったり……」
「……よく分かんないです。ホントにボクに使えるのかな……」
「【剣士】になると<剣術>が付いて振ったことなくても扱えるようになるらしいよ? だからポロリンもトンファー持てば使えると思う」
「そうですかね……」
と言うか【セクシーギャル・挑発・呼び込み】って、もう娼婦か何かにしか思えないんだけどね。
攻撃・防御が高くてトンファーがあるから戦闘職だって言えるようなもので。
非戦闘職だとステータスも【無職】に毛が生えたようなもんらしいし。
ふと隣のシェラちゃんを見る。
座ったまま白目むいて気絶してた。
「シェ、シェラちゃあああん!」
そう言えばポロリンが【セクシーギャル】だって言ってからずっと固まってたな!
まさか気絶してたとは!
私とポロリンで揺すって起こす。
「ハッ!」
「「シェラちゃん! 大丈夫!?」」
「おねーさん、ポロリン……そ、そうです! 大丈夫じゃないです!」
復活したシェラちゃんは立ち上がり、ポロリンの肩に手を乗せ険しい表情で顔を寄せた。
「ポロリン、本当に【セクシーギャル】になったのですか!?」
「う、うん……」
「どうしたの? シェラちゃん……」
シェラちゃんの様子がどこかおかしい。
この様子……まさか【セクシーギャル】の事を知っているとか?
実は未知の職じゃなくて昔に居て、それを知ってるとか?
大人びてて知識豊富なシェラちゃんならばありうる……!
「そんなぁ…………
だってポロリン、男の子じゃないですか!」
…………え?
ポロリンは顔も体型も仕草も美少女です。でもオネエじゃありません。
本人は至って真面目に男らしい男を目指しています。
ちなみにこの世界の人は日本人に比べて成長が早いのですが
ピーゾンが147cm、ポロリンが155cmくらいのつもりです。




