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149:Dランクパーティーですがドラゴンと戦います



 千剣竜――サウザンドドラゴンとの距離は約30m。

 ヤツの巨体を考えればすでにもう接近戦と言える。



「<グリッド><ルールシュレッド>……<ルールシュレッド>……<ルールシュレッド>……むぅ」



 先制はネルトから。

 脳を狙って<ルールシュレッド>を三連発させた。

 これで倒れてくれるなら一番簡単だったが……どうやら変化なし。


 ドラゴンの脳がデカすぎる上に<ルールシュレッド>の斬撃範囲が狭すぎるからダメージになっていないのか、それともドラゴン特有の再生能力でも持っているのか、いずれにせよ目に見える変化が起きなければ三発で打ち止めだ。


 魔石を探して狙う余裕があるとは思えないし、ネルトには別の仕事もある。

 あとは<ロングジャンプ>分のMPを残しつつ<念力>を使ってもらう。



「<毒弾><毒弾><毒弾>!」


「(バババッ!)――<轟雷>ッ!」


「<マジックバブル><マジックバブル><アタックバブル>」



 ネルトの攻撃と同時に私とサフィーも仕掛ける。ソプラノのバフも乗った。

 サフィーはリーナが近づく前に範囲攻撃の<轟雷>。おそらく雷はまともに効くはず。

 千剣竜の弱点属性は知らないが、サフィーには一通り試してもらう。



 私の<毒弾>は最初が<腐食毒>。どう見ても剣みたいな鱗は防御力が高いだろう。

 それを腐食させられれば、と思ったが案の定ダメだった。

 やっぱりロックリザードとかと同じで、歪な鱗であっても″生体″と判断されてしまうらしい。


 二発目と三発目は<枯病毒>。まずは外殻の剣鱗に当てる。

 しかしこれも変化なし。まぁ予想はしていたけどね。

 あの剣鱗に水分なんてあるとは思えないし。


 という事で三発目以降は口や目に向けて放つ。

 しかしこちらも嫌がる素振りは見せても、大した変化を起こしていない。


 身体に水分があるのは当然だろうが、それでも効かないという事か?

 言われてみればドラゴンが病気になるイメージはない。

 <枯病毒>は状態異常ではなく病気の扱いのはずだから、もしかするとドラゴンには相性が悪いのかもしれない。



 となれば着実に<衰弱毒>か。毒らせてから魔剣の<状態異常特攻>で攻撃。

 いやそれなら麻痺や石化にした方が……と言うかそもそもドラゴンって状態異常になるのか?

 それを確かめるなら数が必要だし、そうなるとやっぱり<衰弱毒>がいい。消費MPの関係で。


 よし、しばらく顔の前に張り付かせてもらおう。んで口に毒を放り込む。



「はあっ! ……っ! 何とか斬れます!」



 後ろ足の方に回っていたリーナが叫ぶ。

 リーナは接近戦だけど、前と後ろは危険だから側面から足を狙うよう指示を出していた。


 千剣竜の剣鱗はどう見ても硬い。防御特化のドラゴンのように見える。

 だから近接が入るのか不安だったが、どうやらリーナの攻撃でも何とか入るらしい。

 ソプラノのバフありきかもしれないが、少なくとも<氷の刃>や<包丁術>のアーツは使っていない。

 素の攻撃で剣鱗に通るとなればこれは朗報だ。



 ――ガッ!!!



 ……ちなみに顔面を叩いた私の攻撃は削る事くらいしか出来ない模様。


 いや、ソプラノから<アタックバブル>貰ってないけどさ。

 これはステータスと魔剣の性能の差だね。



 一方で千剣竜はと言うと、やはり動きは鈍重ではあるものの、少しの動作で強烈な攻撃を仕掛けてくる。

 何せ身体中を覆う鱗が本当に″剣″のように尖っているのだ。

 少し腕で払う、少し身体を寄せる、少し顔を持ち上げる。そういった動作が全て強烈な剣戟となる。


 おまけに大質量だから、その『少し』というのがこちらにとっては『余計に回避しないと食らうほど大きい』攻撃だ。

 この体格で突進でもされようものなら、背を向けて逃げた方が速くて安全な気がする。



 先にも言ったが見た目通り防御力も高い。

 おそらくリーナの攻撃よりもサフィーの<忍術>の方が効くとは思うが、あまり効きすぎてヘイトがサフィーに向けられると困るので、私が目の前でうろちょろしつつ、剣戟と<毒弾>で嫌がらせをしている。


 と、顔が近くにあるが故に私にも被害が出る。



「ギヤアアァァァァァアアアア!!!」


「ぎっ……!」


「ピーゾンちゃん! <キュアバブル>!」



 咆哮を近くで受けると″威圧″を受けて身体が固まるのだ。

 ソプラノが治してくれて助かった。

 あのまま千剣竜の攻撃をまともに食らってたら、私の防御力だと死ぬかもしれん。



「ソプラノサンキュー! 出来ればレジストとマジック、ラックも頂戴! 継続で!」


「分かりました! <レジストバブル><マジックバブル><ラックバブル>!」



 威圧は状態異常の一種だが近くに居る分、掛かりやすいというのもあるらしい。

 状態異常に掛かるかどうかはステータスの抵抗が関係している。と思っている。

 私の抵抗値は六人中五位で、一位ソプラノの四分の一しかない。



 ちなみに最下位のポロリンはクマクマケープに<威圧耐性>が付いている。マリリンさんさすがです。

 私のウサウサグローブにも<状態異常耐性>は付いてるんだけどね。威圧限定には負けるのか。


 配置的にもステータス的にも一番威圧に掛かりやすいので、<レジストバブル>で抵抗を上げてもらった。

 同時に毒らせる目的で魔力と運も上げてもらう。



 思えば<ラックバブル>を使ってもらうのは初めてかもしれない。

 目に見えて分かる効果がないから今まで(ないがし)ろにしていたけど、事ここに来て、ドラゴン相手に毒らせる為には運も頼りにするしかない。


 そんなわけで<毒弾>連発作業を再開だ。




■アローク 【???】 32歳



 名前も知らない目の前の男。

 こいつは俺が【幻影の闇に潜む者(ファントムシャドウ)】に居た頃、それも十数年前に殺し損ねた相手だ。


 当時の帝国は今から二代前の皇帝の時代。王国へのちょっかいも多かった。

 ティンバー大砦に攻め込まれた時もあるし、国内に帝国の密偵が入る事も多かった。


 固有職狩り(ユニークハンター)だって今年になって復活したようだが、その頃はもっと大掛かりに、そして秘密裡に行われていたように思う。

 少なくとも今年みたいに適当に拉致って感じじゃなかったな。



 俺は固有職狩り(ユニークハンター)を狩る為に動き回っていた。

 俺の″糸″は索敵にも捕獲にも最適だからって頭領にいいように使われてた感はある。



 で、その時も三人組(スリーマンセル)で動くヤツらを捕らえるべく仕掛けたわけだが、二人は捕らえたものの、もう一人には躱された。

 【忍者】の<分け身>みたいに捕らえたと思ったら消えて、本物は少し離れた場所に現れたんだ。


 そのまま逃がすと俺の能力を知られたままになってしまうので、仕方なく全力で殺す事にした。

 糸と短剣を使っての戦闘。それは確かにヤツの左目を奪ったが……そこまでだった。


 ヤツは″幻″を上手い事使う。<分け身>もそうだが、俺が殺したと思った時には、すでにその場から消えていた。



 その後は帝国の皇帝が変わった事により固有職狩り(ユニークハンター)も消えたわけだが、俺が捕らえまくったせいもあるだろう。

 しかし唯一逃がしたヤツの事が気掛かりではあった。


 まさかそいつが今も帝国の暗部に居て、未だに俺に恨みを持ってるとは思わなかったけどな。

 おまけに『幻を見せる』能力がドラゴンにまで有効だとは思わねえし。


 やっぱりあの時殺しておくべきだった――と後悔しても遅い。



 はぁ、付き纏われるのは女だけにして欲しいんだが。


 ……まぁそんな女も居ないんだが。



「はあっ!」



 暗部らしからぬ殺気を滾らせてソイツは短剣を振って来る。

 俺も短剣でそれを払いつつ、糸を操作。

 ヤツの″幻″に二度もやられるわけにはいかねえ。


 おそらくピーゾンたちは<ロングジャンプ>で逃げるだろう。ファストン村の住民たちをドラゴンから逃がす為に。


 それはもう仕方ない。

 しかしせっかく捕らえたこの五人をみすみすくれてやるわけにはいかない。

 だから俺はコイツを倒し、戦利品(この五人)をキープしておかねえとな。



 ……と思ってたんだが。



『あああああああ!!! かかって来いやオラアアアアアア!!!』



 と、ピーゾンの大絶叫が聞こえる。


 え? うそ? 戦うの? アレと?

 おいおいマジかよ、いやまぁピーゾンの能力なら戦えるのかもしれないけどさ、あれドラゴンだぜ?


 さすがに無茶って言うか、ピーゾンは大丈夫でも他の五人が死んでもおかしくねえぞ。殿下を死なすのはマズイだろ絶対。



「ふっ、どうやら弟子の育成を間違えたようだな。サウザンドドラゴンを相手に戦う事を選ぶとは」


「弟子じゃねーよ。でもまぁ色んな意味で間違えたヤツってのは確かだな」


「まぁ逃げた所で死ぬのは変わらんが、今死にたいと言うのなら望みを叶えてやるまでだ」



 逃げた所で変わらないってのは、千剣竜に追わせるって意味なのか、帰路で待ち伏せを受けるって意味なのか。

 後者だとすると勝ったとしても駆除が厄介だな。

 まぁそれこそ<ロングジャンプ>で帰るのは楽だろうが、どのみち駆逐しておく必要がある。


 いや、考えるのは後だな。

 今はコイツを倒すのに全力で行かねえと。



 ――キキンッ!!!



 短剣を使っての連続攻撃。そして距離をとっての<投擲>。非常に暗部らしいタイマンの戦い方だ。


 それだけじゃなく、やはり″幻″も巧みに使っている。

 <短剣術>の<ミラージュエッジ>とサフィーお嬢の<分け身>の融合みたいなもんだ。

 速さはそこまでじゃねえが、とにかく見づらいし受けづらい。そんな印象。



 しかし――



「くっ! さすがにやるな!」


「まーな」



 ベテランの域にある暗部だろうに、剣技自体はそこまで秀でているわけではない。

 戦闘技術は高い方だろうし確かに強いんだろうが、ただそれだけだ。



 こう言っちゃなんだが――下で大鉈振り回してる十歳児の方が数倍つえーよ。




アロークのおっさんは糸が強力なのは間違いないですが、普通に戦っても強いです。

だからリーナの護衛もしたし、固有職狩りを捕らえまくったりもしていました。頭領からの信頼も厚かったという事ですね。実力があるから。


この小説に出てきた面子の中で剣技の巧さだけを見ると、一位がピーゾンで二位がネロさん、三位がアロークのおっさんだと思います。多分四位がストレイオさん。

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