表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/171

139:ガメオウ山後半に入って色々と掴めてきました



 レイクスライムとか初めて見たけど、あんなデカいの居るんだね。

 サフィーの<轟雷>が効いたから良かったけど、途中からポロポロ小さいスライムに分裂し始めてさ、対処に苦労したわ。

 魔剣持つ前の毒しか撃てない状態だったら私は為すすべ無しだったわ。



 って言うか、私たちの弱点は広範囲攻撃の手段が少ないってのと、範囲攻撃に弱いって事なんだよ。

 魔法攻撃にしても【魔法アタッカー】がニートなもんでサフィー頼りになっちゃうし、逆に魔法を撃たれると防御手段がネルトの<念力>しかない。ソプラノの<泡姫の舞>も一応あるけど。


 盾役(タンク)のポロリンが盾じゃなくてトンファーだし、抵抗値も低いからね。

 魔法の苦手な盾役(タンク)なんです。



 だからレイクスライムが高波みたいに覆いかぶさって来そうになって焦った。

 <轟雷>で怯まなかったら後衛陣は<ショートジャンプ>で逃げるくらいしかなかったね。

 でもまぁMPと引き換えに無事討伐。一安心です。



「これはつまり植物とゴーレムとスライムを操れるって事だよね?」


「それは確定でしょう。複数の系統を使役出来る固有職(ユニークジョブ)でしょうか」


「前代未聞ですわね。複数人が別系統の魔物を使役していると考えた方がまだ自然ですわ」


「使役する能力を持った固有職(ユニークジョブ)を集めた組織……という事ですか?」



 うん、私もそう思う。

 アロークのおっさんに聞いた過去のテイマー系固有職(ユニークジョブ)の情報でも単一種族だったし、仮に【ポケ〇ンマスター】的な最強テイマー職だとしても、少し妙だ。


 植物とスライムは何らかの手段でテイム出来たとしても、ゴーレムは意思のない非生命体みたいな扱い。

 それを同じようにテイム出来るとは思えない。


 だったら別人が使役していて、植物とかには『命令』して、ゴーレムは『操作』していると考えた方が分かりやすい。


 仮に元凶が一人だとすると、植物もスライムも『操作』してるって事になるけど……そうすると系統を分けて襲わせる意味が分からない。


 全部同じ系統にした方が操作しやすいだろう。

 逆に多種多様な系統を操作して襲わせても、こっちの対処が難しくなる。

 だから一発目が植物で、二発目がゴーレムとスライム、とはっきり分けてるのは不自然なんだよね。一人だった場合。



「俺もそう思うな。組織立って動いているのは間違いねえ。予想では帝国の連中が一番怪しいが……国内の貴族の線もあるけどこれだけ人材を揃えるのは困難だろう」


「帝国ですか……」


「まだ分からねえよ? でもそうした組織である以上、植物・ゴーレム・スライム以外の魔物を操れるヤツが出て来てもおかしくはねえって事だ」


「ここまで戦った魔物で多いのは……亜人系か狼系でしょうか」


「んー、【オーガ使い】とか【ボス狼】とか?」


「【ボス狼】ってもうそれただの狼じゃん」



 ゆるい作戦会議みたいになってしまった考察を重ねつつ、私たちは山道を進む。

 木々に覆われた細い道を登り、相変わらず襲って来る魔物を倒しながら歩けば、やがてガメオウ山の下半分を占める森林地帯は突如として一変する。


 まるでそこに境界線があるかのように木々は姿を消し、辺り一面には茶色い粘土質の岩ばかりとなった。

 別に森林限界があるわけではない。そこまで高い山じゃないし。

 どういう理屈か分からないが、ご丁寧にもここから先が後半戦なのだと示しているようだった。



 時刻はおそらく15時頃。

 このままでは頂上付近まで行くだけで日が暮れるだろう。

 さらに調査となると、頑張っても今日だけで終わるとは思えない。

 敵の襲撃も考えればもっと無理だ。


「どうしたもんかね」と改めて相談してみる。



 とりあえずキャンプを張って野営というのは除外。

 魔物の増加が人為的なものであり私たちに悪意を持っているのが分かった以上、野営なんてすれば「どうぞ襲って下さい」と言っているようなものだ。


 安全なのは暗くなってきた段階で適当な場所にブックマークし、<ロングジャンプ>で一時帰還。翌日またそこから探索を開始する。


 この問題点は、まず七人で<ロングジャンプ>出来るか不明という事。

 一般的に範囲魔法の上限が六人と言われているので、ネルトの感覚で大丈夫そうだと言われてもちょっと怖い。


 見張られているかも分からない現状で試す事も出来ないし。

 まぁおっさんを置いて帰ればいいんだけど。人身御供で。



 そしてその″見張られているかも″というのも問題点。相手の監視方法が分からない。

 仮に見られる事なく<ロングジャンプ>したとしても、夜に襲って来た時に「あれ? どこいった?」ってなるし、翌朝に戻って来た時に囲まれてるって事も十分ありえる。


 さらに言えば、私たちが逃げたと相手が知った時、魔物の群れはどう動くか。

 私たちを探す為に山中をうろつくだけならいい。しかしそれがファストン村にまで及んだらマズイ。


 と、そんなわけで<ロングジャンプ>を使うにしても色々と懸念があるわけだね。



 あとは野営もせず、暗くなっても探索を続けるという案も。

 探索しづらくなるのは確実だが、ネルトとソプラノが<生活魔法>の<照明>を使える。

 これは持続性もあるし、<照明>を使ったまま別の魔法も使える。一般的な照光手段だ。


 ただこちらの位置を相手に教えているようなものだし……って言うとサフィーの<スタイリッシュ忍術>も使えなくなっちゃうんだけど。

 まぁ相手の監視方法が分からないから、日中普通に歩いている今も同じようなもんかな、とも思う。



 と、そんな話し合いをして、結局は<ロングジャンプ>は最後の切り札にしておこうという事になった。


 つまりは暗くなろうが出来るだけ調査探索は実行しようと。

 本当にマズくなったら全員集合した上で<ロングジャンプ>。

 その時おっさんだけ弾かれたらごめんなさいと。



「おい、まじで洒落にならんぞ」


「管理局には『ヤツは最後まで勇敢に戦った、惜しいヤツを亡くした』とでも言っておくよ」


「ざけんな。俺は意地でも死なねえからな」



 ともかく出来る限り進もうと、私たちは岩石荒野地帯を進む。

 ここら辺はフラットな土壌の上に大小様々な岩が散乱しているような感じなのだが、少し進めば崖のようになっていたり、かと思えば渓谷のように両側を崖に挟まれた隘路になっていたりと、地形がかなり変わるらしい。


 ルートは聞いているので一応道っぽい所を進むのだが、死角が多く、場所によっては戦いにくい。

 しかし森に比べて断然視界は広い。特に空が見える分、<ホークアイ>が使いやすい。

 おっさんの糸による索敵はネルトが空から見づらい所に絞って使うべきだろう。



「<ホークアイ>……うわ」



 と、そうして使わせた結果、ネルトが引くくらい魔物が多く見えると。

 普段はガメオウ山の山頂付近に居たはずとされるトロールやサイクロプスといったBランクの巨人系。オーガの群れも居るが、多分上位種が含まれている。

 さらには狼の群れや、虎の群れや、蛇の群れや、敵方の手駒と思われるゴーレムやスライムなども。


 頻繁に<ホークアイ>を使わざるを得ない状況だが、使うたびにそうした魔物が目に入る。

 半径300mほどの範囲だと言うのに、ずいぶんと狭苦しく暮らしてるなー。邪魔だなー。



 私たちとしては間引きついでに戦うしかないわけで、さすがに連続戦闘にも慣れてきた感もある。『禁域』に潜っておいて本当に良かった。


 一番慣れていないのがソプラノだったが、あまり考えずに、気負わずに、とにかく<MPドレイン>だけしてくれと言ってある。

 それ以外はこちらの指示でバフを投げてもらう感じ。



 トロールやサイクロプスは数が少ないからまだ良い。狼や蛇はいくら多くてももはや雑魚だ。

 問題はオーガの群れと虎の群れ。


『禁域』で『瘴気水晶』を守っていたのがオーガキングを中心とした群れと聞いた。

 ストレイオさんたちが苦戦する相手だったと。

 さすがにAランクのオーガキングは居ないが、Bランクのハイオーガが数体とCランクのオーガが集団を形成していると、それはもう軍隊みたいなもんだ。かなり強い。



 そして虎の群れというのはBランクのサンダーライガーという放電している金色の虎と、その手下っぽいDランクのサーベルキャット。


 黒狼王とブラックウルフの群れの数倍キツイ。

 サンダーライガーの攻撃を受けても、こちらが近接攻撃をしても雷ダメージを食らうらしく、ノーダメで倒すにはサフィーの<スタイリッシュ忍術>か魔剣の<射出>かネルトの<ルールシュレッド><念力>しか方法がない。


 しかし素早く動く虎に<ルールシュレッド>で的確な攻撃は難しく、結局はダメージ覚悟で近接攻撃した方が早いと。

 私とリーナが無茶して突っ込んで速攻で倒す感じにした。

 回復役(ヒーラー)のソプラノが居なかったら絶対やらない戦い方だね。



「もしかしたら【操獣士】も居るかもしんねーな」



 戦闘後におっさんがそう言う。

 オーガはともかく、サンダーライガーはガメオウ山に元々居るはずのない魔物らしい。

 黒狼王が居すぎたから『狼系の魔物を使役する固有職(ユニークジョブ)』かと思っていたが、ここへ来て不自然なサンダーライガーの出現。これは怪しいと。


 【操獣士】というのは過去に居た固有職(ユニークジョブ)だそうで、その名の通り、狼に限らず獣系の魔物全般を操れる固有職(ユニークジョブ)らしい。

 聞くだけで相当強力な(ジョブ)だ。操れる魔物の幅が広すぎる。



「蛇とか鳥は『獣系』に含まれるの?」


「いや、分かりやすく言えば『四足肉食獣』って感じのはずだ。犬・猫・熊はいけるけど鹿・羊・馬はダメみたいな。蛙とか蛇もダメだったと思う」



 なるほど。そう考えると今まで見て来た犬・猫系……狼・虎系は全部そいつの手駒かもって事か。まぁ元からガメオウ山とか森に居たやつらも居そうだけど。


 つまり敵方には【植物使い】【ゴーレム使い】【スライム使い】そして【操獣士】が居る可能性が高いと。

 うーむ、多彩なテイマー軍団だね。

 これだけ居ればそりゃスタンピードめいた事も出来るわけだ。確定じゃないけど。



 敵方の狙いはおそらく手駒の魔物を増やしてスタンピードを起こす事だろう。

 それがオーフェン狙いなのか、国ごと狙っているのかは知らないが。


 私たちがこれまで倒しただけでも二~三百は潰してるはず。

 そして敵の固有職(ユニークジョブ)の能力が『どこかに生息している魔物を操る』なのか『新たに魔物を生み出す』なのか知らないが――ゴーレムとかは後者っぽいけど――そう簡単に数を増やせるとは思えない。

 敵が増やす以上に私たちが削るペースの方が早いだろう。


 となれば、これ以上戦力を削られまいと痺れを切らして本格的な攻勢に出てくるのは間違いない。

 おそらく場所を選んで、こちらを囲むように布陣し、逃がさないようにして襲って来るのではないか。



 問題はそれが『物量』で攻めてくるのか、『質』で攻めてくるのか。

 正直『物量』――それこそスタンピード並みに千体とか――で襲われたら、これはもう確実に<ロングジャンプ>で逃げるしかない。勝ち目がない。


 しかし私たちがここまでBランクでも速攻で殲滅してきた事を知っていれば、主目的のスタンピードの為にも数は温存したいのでは?


 となれば『質』――Aランクの魔物とか――で襲って来るか。

 そうなると判断が難しくなる。



 こちらとしては元凶も排除したいし、そんな強い魔物が居れば処理しておきたい。

 かと言ってAランクが何体も居れば、さすがに厳しい戦いになるだろう。

 欲を言えば各個撃破出来るように順々に襲って来てくれると助かるんだけど……。


 どうなるのかね? 相談して心構えだけしておきますか。




さて、そろそろ一大決戦の予感。

マニュエズ側からすればマジで殺しとかないと厳しいですし、ダンデリーナもGETしたい。

とは言え暗部らしく人前に出ずに罠にはめたいと。

そんな感じだから負け続けてるんですけどね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓こんな小説も書いてます。
カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~
ハーレム・チート・奴隷物が大丈夫な方はぜひ!
戦う鍛冶師と100の宝剣~小麦を打ったらエクスカリバーが出来ました~
魔剣や聖剣を集めて戦うストレスフリーのファンタジーです!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ