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13:新人冒険者に無茶なエンカウントは勘弁して下さい



「うっそでしょ……なんでワイバーンなんか出るのよ……」


「グギャアア!!!」


「うわおっ!」



 どうやらすでにロックオンされているらしい。

 ワイバーンは上空から一気に急降下、私目がけて襲い掛かって来た。

 かなり大げさに避ける。


 足のかぎ爪が鋭い! あんなので攻撃されたら私即死でしょ!

 尖った口を開けてるのも見えた! 牙いっぱい! 噛まれたら死ぬ!

 ざけんな! こっちは【無職】以下の防御力なんですけど!?


 逃げる! 逃げるしかないでしょ!

 ワイバーンなんて何ランクの討伐対象だか知らないけどEランクじゃない事は確実!

 今朝依頼ボードを見た限りだとDランクでもないはずだ!

 敵わないなら逃げるのが当然!



 ……しかし、逃げ切れるのか?



 こちらを伺いながら頭上から離れようとしないワイバーンを見つめ、そう思う。

 森に逃げ込めば撒ける? 森を出てオーフェンに入るまでの平原は?

 その頃には諦めているのか? そんなの言い切れるわけがない。


 じゃあ諦めるまで森に居続けるか?

 いつまで? 夜? 朝? ……魔物が跋扈している森で?

 ゴブリンの襲撃に構えながらワイバーンも警戒して夜を越せと?



 ――出来るかっつーの!



「やっぱ、やるしかないのか……」



 とりあえず毒らせる事が出来るか見てみよう。

 で、逃げ前提で行く。毒らせれば長期戦どんとこい。

 いくらやっても毒らなければ一か八かの逃避行(ゴブリンの森バージョン)だね。


 覚悟を決めてワイバーンを見つめる。

 たらりと汗が頬を伝う。



 再び滑空からの爪撃をしかけてくるワイバーン。

 体躯は大きいけど動きは直線的。避けられないわけがない!

『クリハン』でデカイ竜モドキなんていくらでも倒してる! ノーダメでね!


 私は身体を半身にしながら右手をピストルのように構え放つ。



「<毒弾>!」



 最初は右手のひらから撃ってたけど、こっちのほうが命中しそうな気がして変えた。

『クリハン』にも拳銃なんてなかったけど。

 私の<毒弾>がワイバーンの足にヒットする。

 上空に上がられる前にすかさず確認。



「<毒感知>!」



 ……ダメか。

 やっぱ毒の成功率が魔物によって違う気がする。

 ゴブリンよりも角ウサギのほうが効きやすかったし。


 じゃあなんで私は少しかかっただけで毒ったのか、って話しだけど、多分『抵抗』のステータスが関係してるんじゃないかと。

『抵抗』って魔法防御とか状態異常抵耐性のことだと思うんだよね。


 で、私は『抵抗:8』。あの時は『抵抗:4』だったしゴブリン以上に効きやすい状態だったんじゃないかと推測。

 まぁゴブリンの抵抗値なんて知らないし今も私の方が低い可能性あるけど。


 ワイバーンはそもそも毒にかかる魔物なのか分からない。

 仮にかかるとしてもステータスは高いだろうし、抵抗値も高いと思う。

 だからMPが尽きるまでとりあえず繰り返す。

 それでもダメなら逃げの一手だね!



「グギャアアア!!!」



 何度目かの空襲。それに合わせて<毒弾>を放つ。

 威嚇するように広げた口めがけて、それは命中した。

 そしてルーティーンのように<毒感知>を行う。



「……おっ! やった!」



 ワイバーンの『毒』反応を確認し、思わずガッツポーズを決める。戦闘中なのに。


 やっぱ<毒弾>を当てる場所によって成功率が違うんだろうか。

 口に直接毒を入れられたらそりゃ効きやすいイメージはあるけど。


 一応、顔……というか目とかも狙ったんだけど、毒らなかった。で、今回の口は成功。

 まぁたまたま口への一発目で成功したのかもしれない。ラッキーだと思おう。



 あとはこの毒状態がどれくらいの時間続くかだね。

 ゴブリンや角ウサギは一回毒ればご臨終だったけど、ワイバーンのHPは相当あるはず。

 一回の毒状態がどれくらいの時間継続するのか検証するにはいい機会だ。


 頻繁に<毒感知>して毒状態が解除されるタイミングを見よう。

 その後は再度毒らせる。

 二回目の毒が効きにくくなっているかの確認もしたい。



「よっし! どんどん襲って来なさい! 別にあんたが逃げてもいいけどね!」


「グギャアア!!!」


「『ラグーンの舞姫』と恐れられた私に当てられると思うなよ!」



 テンションのまま言っちゃったけど、これ自分で言うとかなり恥ずかしいな。





 それから避け続ける事、体感で二〇分ほど。

 まだワイバーンの毒は継続中。元気そうだ。

 私は回避を最小限にしてるけど若干疲れて来た。

 河川敷で足元が小石だらけってのがつらい。


 そんな中、ワイバーンから目を離さない私の耳に叫び声が聞こえた。



「うわああっ! ワ、ワイバーンだああ!!」

「に、逃げろおおお!!!」

「ひぃぃぃぃいいい!!!」



 ちらりとその声の方を見ると、森の中に若い冒険者パーティーっぽい少年たちが居た。

 若いって言っても今の私よりは年上だろう。ま、若年冒険者には違いない。



 ……っておい! 逃げるな!


 少女が一人で戦ってるんだぞ! 助けようとは思わないのか!

 しかもこの武器見てみなさい! 鉈だよ!

 少女が鉈一本持ってワイバーンと戦ってるんだよ!

 何とかしなきゃって思わないのか! この薄情者どもがああ!!



 そんな事を思いつつもワイバーンから目を離すわけにも騒ぐわけにもいかない。

 騒いで逃げる若者たちにワイバーンのヘイトが向くかと思ったけど、どういうわけだか私に夢中らしい。


 別に彼らを襲うならそれでも良かったんだけども。

 少女を見捨てて逃げるような奴ら、襲われても仕方ないんじゃないかな。

 そして彼らが襲われたところで、私に迎撃手段はないわけだし。

 私<毒弾>しか撃てないし。


 ……いかん、精神がスレてきた。


 集中! 集中しよう! ヤツが上空に行ったタイミングで深呼吸! <毒感知>も忘れずに!





 ――ドシャアアアア!!!



「ハアッ、ハアッ、ハアッ……」



 ……なんか倒せた。


 あれからずっと滑空からの攻撃しかしてこなかった。

 爪とか嘴とか体当たりっぽいのとかのみ。

 当然避け続けた。


 もうちょっとこう、尾撃とかブレスとか風魔法的なのとか……何かないのかね?


 そんなんじゃ魔物業界やっていけないよ? ワイバーンくぅん。



 そんで毒も解除されなかった。

 多分一時間くらい戦ってたと思う。

 一時間もずっと最初の毒が効き続けたのか……どういう仕様なのよ……。


 で、仮に私の時と同じように十秒で10の固定ダメージだったとすると、HP約3600になるんだけど……。


 強すぎない? ワイバーンくぅん。



 そうは言っても一時間も集中し続け、単発攻撃のみとは言え回避し続けると疲労も溜まる。

 息を荒げながら、汗をぬぐい、倒れたワイバーンに近づく。



 パラパラッパッパッパー

 おお、そりゃそうだろうね。レベルも上がるだろうさ。



―――――

名前:ピーゾン

職業:毒殺屋Lv15(+11)

装備:武器・鉈(攻撃+0)

   防具・布の服(防御+5)

      皮のブーツ(敏捷+3)

      布の外套(防御+5)


HP:102(+65)

MP:109(+67)

攻撃:52(+32)

防御:7(+3)(+10=17)

魔力:60(+40)

抵抗:27(+19)

敏捷:119(+69)(+3=122)

器用:57(+30)

運 :24(+16)


スキル:毒精製Lv2(衰弱毒・麻痺毒)(+1)、毒弾Lv2(+1)、毒霧Lv1(New)、毒感知Lv3(+1)

―――――



「フアッ!?」



 ワ、ワイバーンさん!?


 おおお! ワイバーンさん! やるじゃない! 一気に上がったよ!

 何よ<麻痺毒>って! 何よ<毒霧>って!

 いやぁ新しいスキルは嬉しいね! …………まぁ毒ばっかだけど。



 ステータスの伸びもヤバイね。防御とかは無視するとして。

『敏捷:119』って動きが……ホッ! ……あ、まずいわこれ。全然感覚違う。

 またアジャスト作業を再開せねば。



「ふぅ……よっこいしょっと」



 疲れたのでとりあえず腰を下ろしたい。

 手頃な岩とかなかったので、ワイバーンの身体に座った。


 で、水袋を取り出して飲みながら、ステータスチェックとスキル考察を行う。一休みです。



 ……しかし、どうしようかね。これ。


 自分の尻に敷かれたワイバーンを見て、そう思った。

 デカすぎるし重すぎるし、討伐部位とか知らないんだけど……。




ワイバーンはBランクの亜竜(劣化竜種)です。

急降下から翼を巧みに使い、ホーミングするように攻撃を仕掛けてきます。

嘴や爪はするどく、さらに巨体がかなりの速度で迫ってくる為、重戦士が防御しても吹き飛ばされます。

攻撃しようにも基本的に空を飛んでいる為、近接は無理。

そんなわけで貴方が冒険者だったらすぐに逃げましょう。

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