表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/171

135:ガメオウ山の手前は植物園と化していました



 私たちは七人で固まりながら、恐る恐る、広場へと足を踏み入れた。

 あたかも「不自然な広場を視認出来たから警戒してますよ」という感じで。


 本当なら広場に入る前から私の<枯病毒>の<毒雨>か、サフィーの<風刃乱舞>、はたまたおっさんの糸で遠距離から攻撃したかったが、手の内を隠す意味でもとりあえずやめた。



 まだとれる手段があったからね。



「<グリッド><室内空調>」



 広場周囲のトレントはマンイーターという餌に食いつかない限り、擬態したままだろう。

 だからこちらもマンイーターから攻める。トレントは襲って来るのを待つ。


 マンイーターは近づけば蔦や酸飛ばしで攻撃してくるらしい。さらに近づけば混乱効果の花粉なんかも飛ばすと。


 だから近づきたくないわけだが、ネルトの<グリッド>は範囲が約50m。しかも不可視。

 動かない敵に対してある程度遠くから攻撃する分には<室内空調>でいける。


 <グリッド>自体が2m四方の箱型だから一体ずつしか攻撃出来ないが、確実な手段だ。

 ちなみに温度は下げる一方にしている。植物だから寒さに弱いだろうと、魔物だけど。



 それは功を奏したのか、マンイーターは赤い花を萎ませるように、胴体部分の茎もへにょんとなった。

 HPダメージはないだろう。でも死んだか瀕死なのは確実。

 ネルトはそれを見て隣のマンイーターへと標的を変える。



 一体目がやられた事により他のマンイーター、もしくは周囲のトレントが動き出すかと思ったらどうやら動く気配はない。


 都合が良いので<室内空調>は継続させるが、少し不可解でもある。



 これを誰かが操っているとすると、マンイーターが倒されたのに何も動かさないのはおかしい。

 可能性としては、この場を見ていないか、見ていても指示出来ないか、倒されたと確認出来ていないか。


 見ていないとすればありがたい事だけど楽観視は出来ない。

 見ていながら指示出来ないと考えた方が良さそうだね。


 魔物に近づかないと指示出来ない、もしくは指示の書き換えが出来ない、もしくは単純な指示しか出来ない――こんなとこかな。


 これは後で相談しましょう。

 さて、そんな事を考えているうちに、ネルトの仕事は終わりそうだ。



「よし、ナイスニート。隠れて<マジックヒールバブル>受けといて。ソプラノもよろしく」


「ん」「了解です」


「固まったまま近づいて、私とリーナで死体斬りするよ。トドメを刺す感じで」


「はい」


「そのままトレント戦に移行するからポロリンとサフィーは警戒よろしく」


「「はい」」



 さて、これからが本番かな。どれほど隠れているものやら。




■イグル 【鳥獣匠】 17歳



「は? え? 何が起きたの、プラティ!?」


「わ、分かりません! マンイーターはダメージを負ってません! でも……死んだ、の?」



 ジリジリとあの七人がマンイーターに近づき始めたと思ったら、次々にマンイーターが倒れていった。


 何かしらの攻撃だろうけど……まさか近づくだけで倒せるの!?

 そんなスキルや魔法はない。ありえるのは固有職(ユニークジョブ)の固有スキルとかだけど……帝国の研究資料でもそんなの見た事ないよ。



 いや、何かしらの攻撃手段があるとしてもダメージがないってのがおかしい。

 仮に結界とか毒系の見えない範囲攻撃をくらったとしてもダメージは入るでしょ。


 ……分からん。私にはさっぱりだから、これはマニュエズさんに丸投げしよう。


 ともかく私たちも近づいちゃいけないって事だけ注意だ。

 マンイーターが倒れた距離を見るに、そこまで広範囲ってわけじゃなさそうだけど……用心はしておこうかな。



「プラティ、他の魔物はすぐに動かせないの?」


「マンイーターに接近か、攻撃を仕掛けたタイミングで襲うように設定してるので……今から操作変更するには触れないとダメですね……」


「だよねー。こいつだけ動かしても意味ないし」



 私はすぐ近くに控えさせているエルダートレントを見上げる。

 こいつはプラティの手駒の中でもかなり強い。Bランクだ。


 一気にヤツらを殲滅する為にプラティが用意した魔物は相当多い。


 Cランクのマンイーター十体から始まって、周囲にはDランクのトレントが二五体、その陰に隠れるようにEランクの蔦の魔物スネークヴァインが二〇体、さらに地下にはCランクの根っこの魔物ワームルートが五体も居る。


 おまけで用意したのがエルダートレントだ。

 こいつを隠したまま終えられればそれで良し。


 出すはめになっても、スタンピード並みの植物系魔物の物量を受けつつエルダートレントと戦うなんて、七人だけじゃ無理だ。



 もしあいつらがAランク相当なら倒せるかもしれないけど……『禁域』を放っておいてAランクを派遣するかね?


 今の王都は手駒が少ないはずなんだけど。

 って言うかAランクならあたし達が知ってないとおかしいんだけど。



 まぁ万が一あたし達の知らない強者であったとして――随分と変な恰好の強者だが――そのままガメオウ山まで来てくれるなら、いくらでも対処できる。


 エルダートレントまで倒してそこで探索中止と引き返すなら、こっちの仕掛けを早めるだけだ。

 スタンピードを起こし、まずは連中が拠点にしてる村、そしてオーフェン、さらに北上して王都へと。

 いままでちまちま準備してきた事を一気に吐き出せば良い。


 あたしはそっちのが好きなんだけどなー、マニュエズさん慎重だから。


 ま、今回の報告も含めて相談しましょ。

 とりあえず今はヤツらの戦いぶりを見せてもらいましょーかね。




■ピーゾン 【毒殺屋】 10歳



 ――ワサワサッ



 マンイーターに近づいた段階で広間の周りのトレントが動き始める。

 やっぱ始めからそういう罠だったって事だね。んじゃ作戦通りいきますか。


 私とリーナはまずマンイーターを殲滅。

 ほとんど死んでいるだろうけど、万が一生きていたら困るから斬り捨てておく。

 そうしている間にもサフィーは攻撃開始。



「(バババッ!)――<風刃乱舞>ッ! ですわッ!」



 <スタイリッシュ忍術>は何気に広範囲攻撃というものがない。この<風刃乱舞>くらいだ。

 たからとりあえず密集しているトレント目掛けてぶっ放つ。

 トレントがDランクである事を考えれば、食らえばほぼ死ぬという威力。


 ポロリンとネルトはソプラノを挟むようにして警戒。

 ネルトの<ルールシュレッド>も温存だ。

 ソプラノは最低限のバフだけ投げて、あとは<MPドレイン>で自身の回復に努める。



 速攻でマンイーターを処理し終わった私とリーナは、サフィーが攻撃した方向以外のトレントに向かって突貫。


 私が一撃で倒すのは問題ない。リーナの方が攻撃力あるけど包丁でトレントを斬るのが辛い。そこはアーツと併用して無理矢理にでも押し通す。

 本当は<氷の刃>を使いたいけどこれも温存だね。MP食うし。



 トレントに突っ込んでみたら、その後ろから伏兵の如く、蔦が飛び出して来る。

 これは森の奥でもたまに見かける魔物だ。スネークヴァイン。

 蛇みたいにウネウネ襲って来るけどかなり弱い。

 草刈りの要領でいける。村娘なめんな。



 そうこうしているとサフィーから、マンイーターの傍に固まるソプラノたちに向かって声が上がる。



「下から来ますわ! 警戒を! おそらくワームが五体!」


「っ! 了解!」



 うわお、私も<気配察知>怠ったわ。さすがサフィー、本職ですな。

 即座にネルトは<グリッド>を発動、敵の場所をポロリンに教える。

 ソプラノを下がらせ、ポロリンが盾役(タンク)、ネルトをサブ盾役(タンク)とする。



 ――ボコボコボコボコボコッ!!!



 次々に足元から現れたワーム……いや、これも植物だ。根っこっぽいワーム。

 五体同時はさすがに防げないと踏んだのか、ポロリンも一気に攻める。



「ネルトさん、フォローよろしく! <ピンクタイフーン>!」



 回転しながらの連続打撃。ポロリンのアーツの中では一番攻撃範囲の広いものだ。

 魔剣の威力とアーツの補正も相まって、三体のワームを同時に巻き込む事に成功した。


 しかし二体は範囲外。ポロリンの脇から襲い掛かるが――



「<念力>」


「<MPドレイン>! <マジックヒールバブル>!」


「俺もちょっとは貢献しねえとな」



 一体はネルトの不可視の手により叩かれ、もう一体はおっさんが短剣で応戦した。

 ソプラノはみんなを信じていたのか、相変わらずMPの回復に努めている。同時にネルトの回復も。


 しかしどうやらこのワーム、なかなかタフらしい。

 スネークヴァインの比じゃないね。高ランクなのかもしれん。



「サフィー、ネルトの援護よろしく! リーナもワーム優先にして!」


「「了解!」」



 二人を本陣に戻しつつ、私は残りのトレントを処理しようと――そこでピコらせたウサミミに反応が出る。

 奥からなんかデカい″気配″が来る、と。



 ――ガサガサ――バキバキ



 木々の間を無理矢理通ってくるような音、私は警戒を強める。

 気付いたサフィーが私の名前を呼んだが、とりあえずワームを優先させた。


 そして見えて来たのは――黒く硬質な樹皮を備えた、10m級の巨木。

 幹の中央には節を遊ばせて作ったような歪な顔が見えた。



「エルダートレント!?」



 後ろのリーナの声を聞きつつ、私は魔剣を握る手に力を籠めた。




前哨戦。まずは軽くお手並み拝見ってなもんです。お互いに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓こんな小説も書いてます。
カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~
ハーレム・チート・奴隷物が大丈夫な方はぜひ!
戦う鍛冶師と100の宝剣~小麦を打ったらエクスカリバーが出来ました~
魔剣や聖剣を集めて戦うストレスフリーのファンタジーです!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ